2 / 12
黄泉蜻蛉②
しおりを挟む
秘靭録を書き始め数か月。
友人知人に古今東西様々な秘剣とその逸話を聞いて回っていたが、どこからかその噂を聞き付けたらしく、是非自分の話も聞いてくれと私と似たような趣味の連中が向こうから接触してくるようになった。
その日もまた、『秘剣について伝え残したい』と書かれた文が私の元に届いた。
私は早速返事を返して待ち合わせの場所と日時を決めて、会いに行った。
どんな秘剣の話が聞けるのか心躍ったが、一番気になったのは、聞かせたいでも語りたいでもない、『伝え残したい』という一文だ。いったい何を残したいというのか、私はその一文に興味を惹かれていた。
待ち合わせの茶屋、その入り口に置かれた縁台に腰かけて茶を啜っている男がいた。
その男以外客はいない。
どうやらこの男が待ち合わせをしていた『秘剣』の話を聞かせてくれるという男らしい。
「お待たせしてすまない」と頭を軽く下げながら、私は男の風采を見て固まってしまっ
た。
顔は蝋を塗ったかのように蒼白で、骨ばって痩せこけており、目の下にはまるで墨入れでもしたかのように深く黒々とした隈ができていた。
眼だけが生き生きと動き、ぎょろりとこちらを見据える。
不気味な、幽鬼のような男だった。
「いえ、おかげで話をする前に、茶と団子をゆっくり楽しめました」
男はそう言って口角を歪めて笑った。できれば人違いであってほしいという私の願いは、その言葉で脆くも崩れ去った。だが、思っていたよりその言は穏やかで、話が聞けるのならば、この際見てくれはどうでもいいのだ。
そう思い直しつつもさっさと終わらせたい気持ちもあり、私は少しだけ男と距離を開けて同じ縁台に腰かけ、店員に茶を注文すると、「では、早速お聞かせ願えますか」と早々に話を切り出した。
「はい、これはある秘剣と―――」
ある藩主の一族に代々に仕えてきた秋津家に生まれた男の話。
友人知人に古今東西様々な秘剣とその逸話を聞いて回っていたが、どこからかその噂を聞き付けたらしく、是非自分の話も聞いてくれと私と似たような趣味の連中が向こうから接触してくるようになった。
その日もまた、『秘剣について伝え残したい』と書かれた文が私の元に届いた。
私は早速返事を返して待ち合わせの場所と日時を決めて、会いに行った。
どんな秘剣の話が聞けるのか心躍ったが、一番気になったのは、聞かせたいでも語りたいでもない、『伝え残したい』という一文だ。いったい何を残したいというのか、私はその一文に興味を惹かれていた。
待ち合わせの茶屋、その入り口に置かれた縁台に腰かけて茶を啜っている男がいた。
その男以外客はいない。
どうやらこの男が待ち合わせをしていた『秘剣』の話を聞かせてくれるという男らしい。
「お待たせしてすまない」と頭を軽く下げながら、私は男の風采を見て固まってしまっ
た。
顔は蝋を塗ったかのように蒼白で、骨ばって痩せこけており、目の下にはまるで墨入れでもしたかのように深く黒々とした隈ができていた。
眼だけが生き生きと動き、ぎょろりとこちらを見据える。
不気味な、幽鬼のような男だった。
「いえ、おかげで話をする前に、茶と団子をゆっくり楽しめました」
男はそう言って口角を歪めて笑った。できれば人違いであってほしいという私の願いは、その言葉で脆くも崩れ去った。だが、思っていたよりその言は穏やかで、話が聞けるのならば、この際見てくれはどうでもいいのだ。
そう思い直しつつもさっさと終わらせたい気持ちもあり、私は少しだけ男と距離を開けて同じ縁台に腰かけ、店員に茶を注文すると、「では、早速お聞かせ願えますか」と早々に話を切り出した。
「はい、これはある秘剣と―――」
ある藩主の一族に代々に仕えてきた秋津家に生まれた男の話。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲
俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。
今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。
「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」
その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。
当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!?
姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。
共に
第8回歴史時代小説参加しました!
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる