33 / 48
1章.無能チート冒険者になる
33.無能チートと二度目の謝罪
しおりを挟む「本当に、本当に申し訳ない!」
気が付いたら、真っ白な空間にいて、知らない人に頭を下げられていた。
ここはど、ってお前ーー!! うっかり神じゃないかーー!! 知ってる! 知ってるやつだよこいつは!
「肉体を構築する際に魔力量の設定を弄るのを忘れていました。本来渡すはずだった情報リソースも別の所に流れてしまうし」
くそっ! また頭を下げたまま一方的に話し掛けてきやがったよ、こいつ!
「しかも、それの処理を貴女自身にさせてしまい、本当に申し訳ありませんでした」
ん? ちょっと待とうか、情報リソースとか、それの処理ってなんの話?
「貴女に渡すはずだった、ルスカの一般常識などの知識。それを確保していたのですが、翻訳情報のアップデート中に落としてしまい、その時慌てたからか、翻訳も中途半端になってしまいました」
その落としたのが情報リソースってことか。
そして、私の非常識も翻訳機能の欠陥も、やっぱりお前のうっかりの所為じゃないか!
顔を上げたけど、相変わらず逆光で表情が、見えない。
「いえ、あくまでも一般常識などの知識に限るもので、非常識なのは貴女の性質です」
誰が考えなしの非常識だ! 殴らせろ! くそー、なんでこの場所は肉体がないんだ!
「そこまでは言ってないのですが、その情報リソースを落とした先に、オークロードがいて、うっかり入ってしまいました。それで、あのオークロードは、頭が回るようになったんですね」
あれもお前の仕業か! 後地味に公式うっかり発言やめろ。うっかりした本人に言われるとムカつく!
「元々頭の良い個体だったようで、洞窟を掘り進めていたのが、情報リソースのおかげで、その洞窟を利用して、過去の人間の戦略を真似するなど、思考力の向上が見られました」
ました。じゃない!
「いままで試したことはないので、魔物がリソースによって変化することは驚きでした。今回は情報リソースだったから、知恵の向上で済みましたが、他のリソースだったら、オークロードが進化して、別の存在になっていたかもしれません」
知恵の向上って、肉弾戦の得意なオークじゃなくて、魔法を使う魔物とかだったら、情報リソースでも、十分ヤバかったんじゃ。
「成る程、確かにそうですね。今後は検証が必要かもしれませんね」
おいやめろ!
「安心して下さい。この管理空間で検証は行いますから」
情報リソース落とした奴が、よく大丈夫だなんて口にできたな!
「仕方ないですね、検証は一旦凍結しましょう」
できれば永久凍結、もしくは破棄してほしいよ。
そういえば、なんで私をまたこの空間に呼んだの?
「はい、実は真壁蜻蛉さん。貴女は死亡しました」
はい? え、マジ?
「魔力ポーションの過剰摂取による副作用と、壁魔法で消費しきれなかった魔力が、身体の中に溜まり過ぎて物理的に内蔵を圧迫しはじめ、意識を失ったまま眠るように」
帰らないと。
神様、私帰らないといけないんだよ。
じゃないと、セヨンさんが悲しむよ。
私を死なせたって後悔して、罪悪感で後を追ってくるかもしれないよ。
だから、その前に、帰らないと。
「安心して下さい。今回はこちらのミスで、イレギュラーなオークロードを誕生させてしまいましたから、そのお詫びとして生き返らせましょう」
今回“は”じゃなくて、今回“も”でしょ。
あれ、でも生き返らせると、セヨンさんが私のこと忘れちゃうんじゃ……。
「今回は肉体は残っていますから、少し修復すれば忘れられたりの問題なく、生き返ることができるはずです」
良かった。これでセヨンさんを悲しませないで済むね。
「ついでに、新しいチート能力などサービスしておきましょうか?」
おおっ! 今度こそ異世界無双のチャンス?!
しかし、舞い上がりかけた私の頭、正確には今肉体は無いから魂? に、電流が走った。
それは予感。
「け、結構です!」
私はその予感に従った。
とてつもなく、嫌な予感がしたのだ。
「そうですか? では代わりに武器防具や魔道具といった形で」
大丈夫だから! 今のまま、ふつーに生き返らせてくれたら、それだけで十分だよ!
「? そうですか、わかりました。では、今から肉体の修復と、魂のインストールを開始します。真壁蜻蛉さん、今回はこちらの不手際でご迷惑をおかけしました。ですが、通常命は一つだけです。次に死んだときは、輪廻の輪にもどることになりますので、お気をつけを」
うっかり神がコンソールを操作すると、最初に異世界へ送られた時と同じく、視界が光で覆われていく。
そして私は安堵した。
私の選択は間違っていなかったと。
思わず私は尋ねたのだ。
あの後ちゃんと寝てる?
「はい、2時間程眠ることができました」
視界が光に消える間際、私は見た。
うっかり神の目元にはいまだ深い隈が刻まれていたのだ。
きっとチートなんて貰ってたら、またうっかりやらかしてたよ、あいつ。
ーーーーーーーーーー
オークロード「あれぇ? 『オークロードの知識チート! ~人間共は皆殺し~』は、いつはじまるんですか?」
トンボ「理想を抱いて焼死しろ!」
オークロード「アバーーッ! サヨナラ!」
0
お気に入りに追加
254
あなたにおすすめの小説
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました
紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。
国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です
更新は1週間に1度くらいのペースになります。
何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。
自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m
わがまま姉のせいで8歳で大聖女になってしまいました
ぺきぺき
ファンタジー
ルロワ公爵家の三女として生まれたクリスローズは聖女の素質を持ち、6歳で教会で聖女の修行を始めた。幼いながらも修行に励み、周りに応援されながら頑張っていたある日突然、大聖女をしていた10歳上の姉が『妊娠したから大聖女をやめて結婚するわ』と宣言した。
大聖女資格があったのは、その時まだ8歳だったクリスローズだけで…。
ー---
全5章、最終話まで執筆済み。
第1章 6歳の聖女
第2章 8歳の大聖女
第3章 12歳の公爵令嬢
第4章 15歳の辺境聖女
第5章 17歳の愛し子
権力のあるわがまま女に振り回されながらも健気にがんばる女の子の話を書いた…はず。
おまけの後日談投稿します(6/26)。
番外編投稿します(12/30-1/1)。
作者の別作品『人たらしヒロインは無自覚で魔法学園を改革しています』の隣の国の昔のお話です。
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる