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 1章.無能チート冒険者になる

33.無能チートと二度目の謝罪

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「本当に、本当に申し訳ない!」


 気が付いたら、真っ白な空間にいて、知らない人に頭を下げられていた。
 ここはど、ってお前ーー!! うっかり神じゃないかーー!! 知ってる! 知ってるやつだよこいつは!


「肉体を構築する際に魔力量の設定を弄るのを忘れていました。本来渡すはずだった情報リソースも別の所に流れてしまうし」


 くそっ! また頭を下げたまま一方的に話し掛けてきやがったよ、こいつ!


「しかも、それの処理を貴女自身にさせてしまい、本当に申し訳ありませんでした」


 ん? ちょっと待とうか、情報リソースとか、それの処理ってなんの話?


「貴女に渡すはずだった、ルスカの一般常識などの知識。それを確保していたのですが、翻訳情報のアップデート中に落としてしまい、その時慌てたからか、翻訳も中途半端になってしまいました」


 その落としたのが情報リソースってことか。
 そして、私の非常識も翻訳機能の欠陥も、やっぱりお前のうっかりの所為じゃないか!
 顔を上げたけど、相変わらず逆光で表情が、見えない。


「いえ、あくまでも一般常識などの知識に限るもので、非常識なのは貴女の性質です」


 誰が考えなしの非常識だ! 殴らせろ! くそー、なんでこの場所は肉体がないんだ!


「そこまでは言ってないのですが、その情報リソースを落とした先に、オークロードがいて、うっかり入ってしまいました。それで、あのオークロードは、頭が回るようになったんですね」


 あれもお前の仕業か! 後地味に公式うっかり発言やめろ。うっかりした本人に言われるとムカつく!


「元々頭の良い個体だったようで、洞窟を掘り進めていたのが、情報リソースのおかげで、その洞窟を利用して、過去の人間の戦略を真似するなど、思考力の向上が見られました」


 ました。じゃない!


「いままで試したことはないので、魔物がリソースによって変化することは驚きでした。今回は情報リソースだったから、知恵の向上で済みましたが、他のリソースだったら、オークロードが進化して、別の存在になっていたかもしれません」


 知恵の向上って、肉弾戦の得意なオークじゃなくて、魔法を使う魔物とかだったら、情報リソースでも、十分ヤバかったんじゃ。


「成る程、確かにそうですね。今後は検証が必要かもしれませんね」

 
 おいやめろ!


「安心して下さい。この管理空間で検証は行いますから」


 情報リソース落とした奴が、よく大丈夫だなんて口にできたな!


「仕方ないですね、検証は一旦凍結しましょう」


 できれば永久凍結、もしくは破棄してほしいよ。
 そういえば、なんで私をまたこの空間に呼んだの?


「はい、実は真壁蜻蛉さん。貴女は死亡しました」


 はい? え、マジ?


「魔力ポーションの過剰摂取による副作用と、壁魔法で消費しきれなかった魔力が、身体の中に溜まり過ぎて物理的に内蔵を圧迫しはじめ、意識を失ったまま眠るように」


 帰らないと。
 神様、私帰らないといけないんだよ。
 じゃないと、セヨンさんが悲しむよ。
 私を死なせたって後悔して、罪悪感で後を追ってくるかもしれないよ。
 だから、その前に、帰らないと。


「安心して下さい。今回はこちらのミスで、イレギュラーなオークロードを誕生させてしまいましたから、そのお詫びとして生き返らせましょう」


 今回“は”じゃなくて、今回“も”でしょ。
 あれ、でも生き返らせると、セヨンさんが私のこと忘れちゃうんじゃ……。


「今回は肉体は残っていますから、少し修復すれば忘れられたりの問題なく、生き返ることができるはずです」


 良かった。これでセヨンさんを悲しませないで済むね。


「ついでに、新しいチート能力などサービスしておきましょうか?」


 おおっ! 今度こそ異世界無双のチャンス?!
 しかし、舞い上がりかけた私の頭、正確には今肉体は無いから魂? に、電流が走った。
 それは予感。


「け、結構です!」


 私はその予感に従った。
 とてつもなく、嫌な予感がしたのだ。


「そうですか? では代わりに武器防具や魔道具といった形で」


 大丈夫だから! 今のまま、ふつーに生き返らせてくれたら、それだけで十分だよ!


「? そうですか、わかりました。では、今から肉体の修復と、魂のインストールを開始します。真壁蜻蛉さん、今回はこちらの不手際でご迷惑をおかけしました。ですが、通常命は一つだけです。次に死んだときは、輪廻の輪にもどることになりますので、お気をつけを」


 うっかり神がコンソールを操作すると、最初に異世界へ送られた時と同じく、視界が光で覆われていく。
 そして私は安堵した。
 私の選択は間違っていなかったと。
 思わず私は尋ねたのだ。
 あの後ちゃんと寝てる?


「はい、2時間程眠ることができました」


 視界が光に消える間際、私は見た。
 うっかり神の目元にはいまだ深い隈が刻まれていたのだ。
 


 きっとチートなんて貰ってたら、またうっかりやらかしてたよ、あいつ。





ーーーーーーーーーー

オークロード「あれぇ? 『オークロードの知識チート! ~人間共は皆殺し~』は、いつはじまるんですか?」

トンボ「理想を抱いて焼死しろ!」

オークロード「アバーーッ! サヨナラ!」
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