姪の誕生日を知らない～オジとメイちゃんの〝共通〟生活～

冴えない俺の日常の終わりの始まり

　姉に娘が生まれたらしい。
　名前は環（タマキ）。

　その時は、もう既に疎遠状態だった家族関係。
　タマキと対面した両親は、祖父祖母となり、俺はまだ見ぬ姪の叔父となった。

　それから数年が経つまで、そんな家族関係の事なんて気にも留めていないまま、仕事疲れを取るためだけにアパートに帰る生活が続いていた。

　しかし、その生活も段々と慣れてくると、寝れなくなってきた。
　体が更なる疲れを求めるのだ。

「不愉快だ・・・」

　これはあれだ。

　そうアレだ。

　日毎に自分を追い込んでいかないと気が済まないドM野郎の末期症状と似た何かだとおもう。

　いや、知らんけど。

　そう仮説を積み立てたところで、俺の体の欲求不満が収まるわけではない。

　単純に眠い。

　だが、体は疲労を求めて休もうとしない。

　悪循環。

「不愉快（くそったれ）だ・・・」

　ともなれば、やることは自ずと見えてくる。

　まずは体力的に簡単そうな「ピラティス」だ。
　ヨガやストレッチ系は、やっているだけで代謝が上がる。
　それならば睡眠を促す効果があってもおかしくはないだろう。

　ふふふ、みてろよ我が体。
　今に途轍もない睡魔で目覚めぬほどシゴいてくれようぞ・・・！！


　その結果。


　寝れた。
　久しぶりにめちゃくちゃ寝れた。

　そして仕事に大遅刻した。

「ふっふふふ・・・ふはははは！！　ははははははは！！！」

　最高にハイってやつだ。


　そんな日のドッと疲れた帰りだった。


　突然の訃報が、スマホの留守電に入っていた。


『キョウメイ・・・今すぐ連絡しろ・・・椎菜が・・・』」