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第十八章

160,本物の化け物

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 あまりの恐ろしい光景に、リュウキは一瞬怯んでしまう。この僅かな隙を狙ったかのように、化け物たちが一斉に飛びかかってきた。
 巨大な熊が牙を剥き出しにし、その横から大猪が猪突猛進してくる。上空からは大鳥たちが群れをなして下降してきた。

 震える足をどうにか動かし、リュウキは欲に溺れる化け物たちの攻撃を確実に躱してみせる。

「リュウキ、雑魚どもは俺らに任せておけ」

 ハクは自慢の鋭い爪で大熊を切りつけた。
 その傍ら、朱鷺の少女が下降してくる鳥たちを両翼で次々と払い除けていく。
 そしてシュウは、氷の刃で猪たちをなぎ倒すのだった。

「リュウキ様。何卒、あなたのお力で、元凶を焼却してください。皇子として……炎の戦士として」

 シュウのその一言に、リュウキの胸が高く鳴る。
 勇ましい姿とは裏腹に、シュウの瞳は切なさで埋め尽くされていた。
 
 ──行かなければならない。
 リュウキはすかさず西の方角に身体を向けた。
 世界各地に伸びる紅い幻草の根を全て焼き払う為、リュウキは己の持つ炎の力を全身に蓄えた。

 大地を踏みしめ、いざ最西端に向かおうとした──その瞬息。

「ゆかせぬぞ……」

 低くしゃがれた声がした。耳の鼓膜にへばりつくような不気味な低音が、リュウキの心臓を唸らせる。
 それは、ハクやシュウのものではない。

 恐る恐る声の方を振り向くと──信じられない光景が目に映った。

「……嘘だろ?」

 リュウキは思わず後退る。
 化け物たちの間をかき分け、のそのそとこちらに向かってくる黒い影。真っ赤な目で辺りを見回し、灰のようなものを口から吐き出している。
 歩く度、黒焦げた肉の塊のようなものが崩れ落ちた。

「ど、どうして。死んだはずじゃなかったのか……?」

 鬼畜だ。ありえない。そのような状態で動けるなど! 死んだはずのリュウトが生きている・・・・・・・・・・・・・・・・など、信じられない!
 
「なんだ、リュウトの野郎! まだ生きていやがったのか! マジの化け物じゃねえか」

 異変に気付いたハクが痰を切る。
 しかしリュウトはこちらには目もくれず、ぶつぶつと何かを呟きながら周辺を見回し続けるのだ。

 ──何を捜している?

 まさか、と思った。だが、時すでに遅し。
 リュウトは「さがしもの」を見つけると、再び特異能力を発動させた。
 真っ黒な身体がバキバキと不気味な音を立て巨大化していくのだ。腕が通常の人間の五倍以上はあるだろうか。太い両腕を伸ばすと、呆気に取られ立ち尽くす彼女の──ヤエの身体を乱暴に引き寄せてしまった。

「ヤエ!!」
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