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第十六章
144,瑠璃色戦士の参戦
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あれほど暴れていたのが嘘のように微動だにしなくなった。だが、炎の中で閉じ籠もるリュウキは、未だ震えている。俯いて表情はよく見えないが、今も苦しんでいることが伝わってきた。
「リュウキ様……」
ヤエの声に反応したのだろうか、炎の龍はゆっくりと口を開いた。
その刹那──
「あっ……!」
不意に、炎の龍はヤエ目がけて火を噴き出した。咄嗟に氷の盾で身を守るが、威力が凄まじい。勢いで押し潰されてしまいそうになる。
「ヤエ!」
ハクが飛び出してきた。飛散する炎を次々と躱しながら、彼は龍の顔面目がけて拳を向ける。
「ヤエを傷つける奴はリュウキであっても許さねえ!」
雄叫びを上げ、ハクは牙を剥き出した。
ところが。
「くっ……!」
とてつもない轟音。炎の龍はハク目がけて炎を向けた。
即座にその攻撃を避けたが、着地が上手くいかずハクは横に倒れていった。
「ハク!」
「ハクさん!」
上空から朱鷺の少女が下降してくる。
その間に龍は尚も炎を放出した。先程よりも更に大きく、熱く、怒りを乗せたような荒々しい炎。
ヤエは地を踏みしめ、氷の盾でハクを守ろうとした。だが距離が遠い。とても追いつかない。
朱鷺の少女も降り立つのに時間がかかった。
だめだ。襲いかかってくる炎は、あまりにも激しすぎる。
「ハク!!」
その場にいた誰もが終わりだと思った。
ハクが、焼かれてしまう……!
最悪の事態を覚悟した、その折である。
馬の嘶きがすぐ近くで響き渡った。それと同時に──瑠璃色の影が、颯爽として現れる。
「ヤエ、借りるぞ」
男性の凜々しい声と共に、ヤエが持っていた氷の盾が手元から離れていく。
何が起きたのが理解できぬ内に、目の前を黒い馬が通過した。とんでない速さだ。
彼は──ハクの前に立ちはだかる。両手で盾を翳し、強力な火炎放射でも引けを取らずに身を守った。
「……兄様!」
兄だ。シュウが、来てくれたのだ。
「遅いぜ、この野郎!」
そう言いながらも、ハクは勇ましいシュウを見て破顔する。
炎の龍は、火を噴き出すのを止めた。力を出しすぎたか、動きも鈍くなっている。僅かな隙を見て、シュウとハクは一気に駆け出した。
「走れ、ヤエ!」
シュウの一言にヤエはハッとして再び逃げ道に足を向けた。南の方角へと、とにかく必死になって駆けていく。
「皆! 南門の外に川と洞穴があるよ。そこには火の玉は届かないみたい。そこに避難して!」
南側を見やり、上空から朱鷺の少女がそう促した。
ヤエたちは無我夢中で安全地帯へ走り抜けた──
「リュウキ様……」
ヤエの声に反応したのだろうか、炎の龍はゆっくりと口を開いた。
その刹那──
「あっ……!」
不意に、炎の龍はヤエ目がけて火を噴き出した。咄嗟に氷の盾で身を守るが、威力が凄まじい。勢いで押し潰されてしまいそうになる。
「ヤエ!」
ハクが飛び出してきた。飛散する炎を次々と躱しながら、彼は龍の顔面目がけて拳を向ける。
「ヤエを傷つける奴はリュウキであっても許さねえ!」
雄叫びを上げ、ハクは牙を剥き出した。
ところが。
「くっ……!」
とてつもない轟音。炎の龍はハク目がけて炎を向けた。
即座にその攻撃を避けたが、着地が上手くいかずハクは横に倒れていった。
「ハク!」
「ハクさん!」
上空から朱鷺の少女が下降してくる。
その間に龍は尚も炎を放出した。先程よりも更に大きく、熱く、怒りを乗せたような荒々しい炎。
ヤエは地を踏みしめ、氷の盾でハクを守ろうとした。だが距離が遠い。とても追いつかない。
朱鷺の少女も降り立つのに時間がかかった。
だめだ。襲いかかってくる炎は、あまりにも激しすぎる。
「ハク!!」
その場にいた誰もが終わりだと思った。
ハクが、焼かれてしまう……!
最悪の事態を覚悟した、その折である。
馬の嘶きがすぐ近くで響き渡った。それと同時に──瑠璃色の影が、颯爽として現れる。
「ヤエ、借りるぞ」
男性の凜々しい声と共に、ヤエが持っていた氷の盾が手元から離れていく。
何が起きたのが理解できぬ内に、目の前を黒い馬が通過した。とんでない速さだ。
彼は──ハクの前に立ちはだかる。両手で盾を翳し、強力な火炎放射でも引けを取らずに身を守った。
「……兄様!」
兄だ。シュウが、来てくれたのだ。
「遅いぜ、この野郎!」
そう言いながらも、ハクは勇ましいシュウを見て破顔する。
炎の龍は、火を噴き出すのを止めた。力を出しすぎたか、動きも鈍くなっている。僅かな隙を見て、シュウとハクは一気に駆け出した。
「走れ、ヤエ!」
シュウの一言にヤエはハッとして再び逃げ道に足を向けた。南の方角へと、とにかく必死になって駆けていく。
「皆! 南門の外に川と洞穴があるよ。そこには火の玉は届かないみたい。そこに避難して!」
南側を見やり、上空から朱鷺の少女がそう促した。
ヤエたちは無我夢中で安全地帯へ走り抜けた──
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