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第十四章
122,苦戦するハク
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リュウトと交戦中、ハクは遠方の方で巨大な炎が出現するのを見た。
その炎はリュウキが放ったものであろう。龍のような形となり、シュキ城の方へ飛んで行ってしまった。
「ふふふ、面白い」
その様子を眺めていたリュウトは、低い声で笑う。
「……何がおかしいんだよ?」
「お前も化け物だろう。分かっているはずだ。リュウキの身に何が起きたのかを」
リュウトは腹を抱えているが、目だけは冷たい。皇帝という印象など全くない。国賊としか思えない顔である。
ハクはリュウトの話を否定出来ずにいた。
今、リュウキは非常に危険な状態である。このまま放っておけば、彼は間違いなく──
「ったく、厄介なことになりやがった」
ハクは内心とてつもない焦りを抱いている。一刻も早くリュウキの元へ駆けつけなければならないのに。
しかし目の前にいる皇帝は、簡単にハクを通すわけはない。
「さあ、白虎よ。このまま朕と戯れ合うとするか」
「お前に付き合ってる暇はねぇんだよ……」
ハクの嘆きも虚しく、皇帝は今一度拳を握り締めた。
普通の人間には決してない、両腕の巨大な筋肉。リュウトの腕は太くて固くて、一度でも攻撃を受ければハクでさえも即死だろう。
「そちの足の一本でも、もぎ取ってくれようぞ!」
絶叫しながら、皇帝は太い両腕をハクに向けて振りかざしてきた。
咄嗟に攻撃を躱すが──皇帝の拳が打ち付けられた地面は瞬く間にひび割れしてしまう。まるで地震が起きたかのように、激しく振動するのだ。
「くっ、何て力だよ本当に!」
皇帝の怪力は、大地さえも破壊してしまうほどの威力がある。あの腕で人を捻りつぶすことなど容易いだろう。人々がこの男に逆らえない最大の要因である。 ひとたまりもない。
今までにない強敵に、ハクは苦戦していた。 肩で呼吸をし、目前の「敵」を睨み付ける。
「そろそろ投降したらいかがかな?」
皇帝はまるで嘲笑うかのようにハクを見下す。
決して首肯しない。ハクは低く唸った。
(しかし妙だな。なぜこいつは、息切れしないんだ?)
息を整えながら、ハクはふと疑問に思う。
かれこれ半日は闘争しているというのに。互いに一歩も譲らず、全力で相手を殺しにかかっている。
それなのに皇帝は全くと言っていいほど息が上がっていないのだ。
このままでは体力が底を尽きてこちらの方がやられてしまう。
「朕を殺めることなど出来ぬぞ。今なら許してやろう。朕と共に人間を滅ぼすと約束すればな」
「ばか言うな。俺は人と共生すると決めたんだ! 野蛮なお前とは手を組まねぇよ」
「何を。お前は立派な化け物であるというのに、なぜそこまでして人間を守ろうとする? 目を覚ませ、化け物よ!」
皇帝は再び突進してくる!
こんなところでやられてしまっては、大切なものを守れなくなってしまう。 体力が限界に近づいていたとしても、気力だけでハクは攻撃を避け続ける。
「往生際の悪い白虎めっ」
「うるせぇ奴だな。お前なんかが北の皇帝だなんて笑っちまう。どうせてめぇの人類滅亡計画の為に権力を利用してるだけだろ?」
「……ふん。それがどうした」
「本当に虚しいよな。わざわざ化け物になって全てを捨てちまうなんてな」
「黙れ!」
ハクの本心であり、挑発した文言でもあった。
これを聞いた皇帝の両腕の筋肉はさらに肥大化していく。
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