45 / 94
取り戻す為に
しおりを挟む
けれど、優の問題をこれ以上先延ばしにすることは出来ない。
何故なら、先延ばしにすることは優の大切な親の形見や家宝を売り飛ばされてしまうことに繋がるからだ。
そうして、それは……いくら今が居心地が良いからと言って、俺の望むところではなかった。
なので、食後にそふぁーで茶を飲みながら作戦会議をする俺達。
と、言っても作戦は至って簡単だ。
明日の深夜――即ち、寝込みに奇襲をかける、この一択である。
幸い、俺は腕に覚えがある。
命の取り合いだって何度も演じてきた。
優は用心棒とやらは複数いるだろうと言ってきたが――池田屋事件の時戦った、あの鬼気迫る様子の浪士達に比べれば恐るるに足らないだろう。
まぁ、それでも慢心はせず……俺たちの行く手を阻むつもりなら、全力で叩き潰すまでだが。
と、隣に座る優が心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。
「土方さん?本当に大丈夫かい?」
「当たり前だろう?俺を誰だと思ってやがる」
俺は自信満々にそう告げると、優に胸を張ってみせた。
が、それでも優は首をゆっくりと横に振ってくる。
「わかってる。土方さんが強いのはわかっているよ。でもね?それでも私は……あなたを喪うのが怖いんだ」
そう言いながら、優はそっと俺の両手を――包み込む様に握ってきた。
「私は、両親が事故にあった時……『永遠』なんてものはないのだと嫌というほど思い知らされた。いつも隣にある筈のものだって、突然消えてなくなることがあるのだ、と。そう、『当たり前』なんて……『絶対』なんてないんだよ」
俺にそう語りかける優の声は僅かに震えている。
そうして、優は俺の瞳を真っ直ぐに見つめると、言った。
「だからこそ。私は……貴方まで喪いたくないんだ、土方さん。約束したよね?私が死にたくなくなるまで側にいてくれる、と。もし、貴方までうしなう様なことがあれば……私は間違いなく、もう生きていられないよ。きっと、呼吸の仕方すら、忘れてしまうんじゃないかな」
そう語りかける優の瞳はとても真剣で――俺は、思わず息を呑み、ただじっと彼の瞳を見つめ続けた。
何故なら、先延ばしにすることは優の大切な親の形見や家宝を売り飛ばされてしまうことに繋がるからだ。
そうして、それは……いくら今が居心地が良いからと言って、俺の望むところではなかった。
なので、食後にそふぁーで茶を飲みながら作戦会議をする俺達。
と、言っても作戦は至って簡単だ。
明日の深夜――即ち、寝込みに奇襲をかける、この一択である。
幸い、俺は腕に覚えがある。
命の取り合いだって何度も演じてきた。
優は用心棒とやらは複数いるだろうと言ってきたが――池田屋事件の時戦った、あの鬼気迫る様子の浪士達に比べれば恐るるに足らないだろう。
まぁ、それでも慢心はせず……俺たちの行く手を阻むつもりなら、全力で叩き潰すまでだが。
と、隣に座る優が心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。
「土方さん?本当に大丈夫かい?」
「当たり前だろう?俺を誰だと思ってやがる」
俺は自信満々にそう告げると、優に胸を張ってみせた。
が、それでも優は首をゆっくりと横に振ってくる。
「わかってる。土方さんが強いのはわかっているよ。でもね?それでも私は……あなたを喪うのが怖いんだ」
そう言いながら、優はそっと俺の両手を――包み込む様に握ってきた。
「私は、両親が事故にあった時……『永遠』なんてものはないのだと嫌というほど思い知らされた。いつも隣にある筈のものだって、突然消えてなくなることがあるのだ、と。そう、『当たり前』なんて……『絶対』なんてないんだよ」
俺にそう語りかける優の声は僅かに震えている。
そうして、優は俺の瞳を真っ直ぐに見つめると、言った。
「だからこそ。私は……貴方まで喪いたくないんだ、土方さん。約束したよね?私が死にたくなくなるまで側にいてくれる、と。もし、貴方までうしなう様なことがあれば……私は間違いなく、もう生きていられないよ。きっと、呼吸の仕方すら、忘れてしまうんじゃないかな」
そう語りかける優の瞳はとても真剣で――俺は、思わず息を呑み、ただじっと彼の瞳を見つめ続けた。
10
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる