土方さんちの美味しいご飯〜鬼の副長はワンコ系イケメンの溺愛で甘くほだされる〜

優という人間は

実は先日、不本意ながらも一緒に風呂に入った時、優の肉体を見て気づいたことがあった。

一見細身に見える優の肉体は、服の上からではわからないが、かなり均整が取れ……しっかりと筋肉がついているのだ。

特に、腕の筋肉と足の筋肉は発達していた様に思える。

（あの筋肉のつき方には見覚えがある。何か武芸……体を動かしてる人間のもんだ……）

俺は改めてそう考えると、目の前の優に思い切って問いかけてみた。

「お前……もしかして、腕に覚えがあるんじゃねぇか？」

と、優が一瞬驚いた様な表情を見せる。

「凄いな……。よくわかったね？実は、私はご先祖様……近藤さんに憧れて、幼い頃から剣術を学んでいるんだよ。でも、剣術のことは話してなかったと思うけど……。何故わかったんだい？」

「まぁ、剣士の勘ってやつだな」

俺はそう答えると、優の瞳を見つめる。

そして、こう尋ねてみた。

「しかしお前……腕に覚えがあるなら、何故、そいつらを打ち倒して刀や指輪を奪い返さなかったんだ？」

すると、優が一瞬戸惑う様な表情を見せる。

そして、言った。

「……愚かだと……甘いと笑わないでくれるかい？……ここまでの目に遭わされても尚、私は……どうしても、昔愛した女性を傷つけることが出来なかったんだ」

優のその台詞に、

（本当に、近藤さんの子孫らしい言葉だな）

思わず、心底そう納得してしまう俺。

情に厚く誰からも慕われたあの人も、きっと……同じことを言っただろう。

俺は、ほんの少しだけ昔の……大事な人の照れた様な笑顔を思い出していた。