土方さんちの美味しいご飯〜鬼の副長はワンコ系イケメンの溺愛で甘くほだされる〜

由理恵③

その指輪とやらは、優にとっては本当に大切なものだったのだろう。

温厚な優の瞳の中に、怒りと悔しさが焔の様に燃え盛っているのがはっきりと見てとれた。

（だから、優はあの写真を倒してたんだな）

あの写真が不自然に倒れていた理由に納得する俺。

きっと、優は盗人である自分の元恋人の顔を二度と見たくはなかったのだ。

俺は、怒りと悔しさに打ち震える優の両手に、そっと己の両手を重ねる。

と、少しずつ優の震えがおさまってきた。

「……ありがとう、土方さん」

力ない笑顔を俺に向け、そう告げる優。

俺は、そんな優にそっと首を横に振ってみせた。

そうして、優の手を握ったまま、彼に問いかけてみる。

「その、家宝ってのも、両親との思い出の品だったのか？」

すると、優が俺の言葉にゆっくりと頷いた。

「ああ。先祖代々私の母のの家に伝わる……遠い祖先が愛用していた品でね。虎徹こてつという刀なんだ」

「……っ？！」

（虎徹、だと……？！）

その名前を聞いた瞬間、俺の全身をまるで稲妻に打たれたかの様な衝撃が走った。

優の手を握る俺の手に、今度は震えが走る。

だが、俺は大きく深呼吸をして何とか自分自身を落ち着かせた。

（落ち着け、俺。まだ『あの人』のものだと決まったわけじゃ無い。同じものだと決まったわけじゃないじゃないか）

深呼吸をしながら、何度も自分にそう言い聞かせる俺。

と、そんな俺に優がすまほを差し出してくる。

そうして、そこに写った刀を指差しながら、こう言った。

「ほら、これ。これがうちに先祖代々伝わる家宝の刀でね。長曽祢虎徹ながそねこてつっていうんだよ」

その言葉を聞いた瞬間、俺は思わず叫び出しそうになった。