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由理恵

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そうして俺達は一旦優の部屋に戻り――俺は、りびんぐのそふぁとやらに腰掛ける。

「さて、何から話そうかな……」

優は台所であたたかな茶を入れると、そっと俺に差し出してくれた。

「全部だ。どんなに長くても良い。ちゃんと全部聞かせてくれ」

俺は優から湯呑みを受け取ると、彼にそう声をかける。

俺の言葉に、深く頷く優。

彼はてえぶるに湯呑みを置くと、そっと俺の手を握り……そのまま静かに語り始めた。

「あの写真に写っている女性……由理恵はね、俺の婚約者だった女性なんだ。今頃は、妻になっていた筈の女性だったんだよ」

「そうなのか……」

妻になっていた、その言い回しに若干引っ掛かりを覚えるが、俺はそこでは敢えて何も言わず、優に先を促す。

俺に頷き、言葉を続ける優。

「……私はね、彼女に捨てられたんだ。彼女には、私と付き合う前から、将来を約束していた男性がいたんだよ」

(成る程。所謂、美人局つつもたせの様なものなのだろうか?)

だが、数日の付き合いだが、優がただの美人局に遭った位で死ぬ男には、どうしても見えない。

俺は黙って優の言葉の先を待った。

「その男性が、私の昔からの親友でね。何年も前から、2人で私を嵌める策を練っていたらしい。私はそんな彼らに……家も財産も……仕事や、親が先祖代々大切にしてきた家宝まで全てを根こそぎ奪われてしまったんだ」

(美人局の上に押し込み紛いか)

どうやら優は相当性質が悪い女に引っかかってしまった様だ。
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