私を返せ！〜親友に裏切られ、人生を奪われた私のどん底からの復讐物語〜

第一部 Side 永宮 真紀

苦渋の決断

正直、今でも新しい人生に未練がない訳ではない。

由希奈として、幸せになる人生を選んで行けたらーーそれはどれ程楽なことなのだろうと思う。

いや、本来は……過去なんて全て忘れて由希奈として幸せになることが私にとっては最良の道の筈だ。

それでも、私が自分を取り戻したいのはーー兄妹としてではなく、恋人としてちゃんと剛志のそばにいられる様になりたいから。

それに、やはり、恋しいのだ。

諦めきれないのである。

自分の本当の家族というものをーー。

両親や祖父母、全て風香に奪い取られてしまったが……それでも、私はもう一度、あの家族に愛されたいのだ。

抱き締められ、ちゃんと「自分の名前」で呼ばれたいのである。

勿論、剛志のお母さんは良くしてくれている。

お兄さんだって実の妹の様に可愛がってくれているし、今の生活に不満なんて何もない。

寧ろ、こんな私には勿体無いくらいに満ち足りた……幸せな生活だと言えよう。

それでも、私は……。

今の幸せを捨て、苦労をすると分かっていても、自分の本当の人生を取り戻したいのである。

（お母さん、ごめんなさい……。それでもやっぱり、私は……自分の実の両親を忘れることができないんです……）