79 / 115
第一部 Side 永宮 真紀
新天地へ
しおりを挟む
すると、剛志のお母さんが車を運転し、前方を見つめたまま、不意に私に話しかけてくる。
「真紀ちゃん……っと、今は違うわね。由希奈ちゃん?あなたはどう?どんな場所に住みたい?」
由希奈ちゃんーー。
そう、これがこれからの私の新しい名前なのだ。
「草苅 由希奈」。
受験に失敗して田舎にいづらくなり、家族で引っ越してきた。
それが私達家族の設定なのだ。
ちなみに、剛志の新しい名前は「草苅 竜司」。
強そうでかっこいいし、なんとなく剛志に似合っていると私は思った。
当の剛志本人は、
「なんか古めかしいし、ちょっとヤクザみたいな名前だよな」
などと難色を示していたが。
でも、私は剛志の新しい名前が気に入っていたので、わざと「竜司」と呼んでみる。
その度に仏頂面を浮かべる剛志。
私はそんな彼の頬を人差し指でつんとつついてみた。
「止めろよな、真紀……っと、由希奈」
彼は慌てて私の名前を言い直すと、ややぶすっとした表情のまま、私の頬をつつき返してくる。
互いの頬をつついたり、つつき返されたりするーーまるで、恋人の様な時間。
私は車内で剛志と無邪気に戯れ合いながら……この先の未来のことに、ほんの少しだけ胸を躍らせていた。
(きっと、新しい場所では幸せになれる……。そうして、そこで頑張って……いつか、私は「私」を取り戻すんだ)
そんな淡い希望を胸に抱きながらーー。
「真紀ちゃん……っと、今は違うわね。由希奈ちゃん?あなたはどう?どんな場所に住みたい?」
由希奈ちゃんーー。
そう、これがこれからの私の新しい名前なのだ。
「草苅 由希奈」。
受験に失敗して田舎にいづらくなり、家族で引っ越してきた。
それが私達家族の設定なのだ。
ちなみに、剛志の新しい名前は「草苅 竜司」。
強そうでかっこいいし、なんとなく剛志に似合っていると私は思った。
当の剛志本人は、
「なんか古めかしいし、ちょっとヤクザみたいな名前だよな」
などと難色を示していたが。
でも、私は剛志の新しい名前が気に入っていたので、わざと「竜司」と呼んでみる。
その度に仏頂面を浮かべる剛志。
私はそんな彼の頬を人差し指でつんとつついてみた。
「止めろよな、真紀……っと、由希奈」
彼は慌てて私の名前を言い直すと、ややぶすっとした表情のまま、私の頬をつつき返してくる。
互いの頬をつついたり、つつき返されたりするーーまるで、恋人の様な時間。
私は車内で剛志と無邪気に戯れ合いながら……この先の未来のことに、ほんの少しだけ胸を躍らせていた。
(きっと、新しい場所では幸せになれる……。そうして、そこで頑張って……いつか、私は「私」を取り戻すんだ)
そんな淡い希望を胸に抱きながらーー。
10
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
深海の星空
柴野日向
青春
「あなたが、少しでも笑っていてくれるなら、ぼくはもう、何もいらないんです」
ひねくれた孤高の少女と、真面目すぎる新聞配達の少年は、深い海の底で出会った。誰にも言えない秘密を抱え、塞がらない傷を見せ合い、ただ求めるのは、歩む深海に差し込む光。
少しずつ縮まる距離の中、明らかになるのは、少女の最も嫌う人間と、望まれなかった少年との残酷な繋がり。
やがて立ち塞がる絶望に、一縷の希望を見出す二人は、再び手を繋ぐことができるのか。
世界の片隅で、小さな幸福へと手を伸ばす、少年少女の物語。
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
ペア
koikoiSS
青春
中学生の桜庭瞬(さくらばしゅん)は所属する強豪サッカー部でエースとして活躍していた。
しかし中学最後の大会で「負けたら終わり」というプレッシャーに圧し潰され、チャンスをことごとく外してしまいチームも敗北。チームメイトからは「お前のせいで負けた」と言われ、その試合がトラウマとなり高校でサッカーを続けることを断念した。
高校入学式の日の朝、瞬は目覚まし時計の電池切れという災難で寝坊してしまい学校まで全力疾走することになる。すると同じく遅刻をしかけて走ってきた瀬尾春人(せおはると)(ハル)と遭遇し、学校まで競争する羽目に。その出来事がきっかけでハルとはすぐに仲よくなり、ハルの誘いもあって瞬はテニス部へ入部することになる。そんなハルは練習初日に、「なにがなんでも全国大会へ行きます」と監督の前で豪語する。というのもハルにはある〝約束〟があった。
友との絆、好きなことへ注ぐ情熱、甘酸っぱい恋。青春の全てが詰まった高校3年間が、今、始まる。
※他サイトでも掲載しております。
本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
結城芙由奈
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います
<子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。>
両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。
※ 本編完結済。他視点での話、継続中。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています
※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる