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第一部 Side 永宮 真紀

モラトリアムな日々②

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すると、今度は剛志が私の言葉に楽しそうに笑う。

そうして、暫し笑い合う私達。

と、ふと剛志がーー真剣な眼差しで私の名前を呼んできた。

「なぁ、真紀?」

「なに?剛志」

「いや。名前、さ。この前が最後かと思ったけど……。まだ、少し呼べそうだから。だから、呼べる内に沢山呼んでおこうと思ってさ。お前の名前」

「剛志……」

剛の言葉を聞いた私の胸に、熱いものが込み上げてくる。

それは今にもーー感動の涙となって零れ落ちそうだったけれど、私はなんとか乱暴に目元を拭うとそれを誤魔化した。

そして、私は悪戯っぽく笑ってみせる。

「じゃぁ……私も……最後なんだし、沢山呼んでみようかな?剛志」

と、私の言葉に嬉しそうに笑う剛志。

彼はその笑顔のまま、

「おう。沢山呼んでくれ」

と、笑った。

その後、何をするでもなくーー縁側に座って、ただ互いの名前を呼び合っては笑い合う私達。

(ずっと……ずっと、この時間が続けば良いのに……)

私は笑顔で剛志の名前を呼びながらも、心の中ではずっとそんなことを考えていた。

それ位、とても優しくーー愛おしい時間だったのだ。

(これから、何があっても……私は、剛志と過ごしたこの時間のことを、絶対に忘れないで生きていこう……)

ーー心の支えにして、生きていこう。
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