77 / 115
第一部 Side 永宮 真紀
モラトリアムな日々②
しおりを挟む
すると、今度は剛志が私の言葉に楽しそうに笑う。
そうして、暫し笑い合う私達。
と、ふと剛志がーー真剣な眼差しで私の名前を呼んできた。
「なぁ、真紀?」
「なに?剛志」
「いや。名前、さ。この前が最後かと思ったけど……。まだ、少し呼べそうだから。だから、呼べる内に沢山呼んでおこうと思ってさ。お前の名前」
「剛志……」
剛の言葉を聞いた私の胸に、熱いものが込み上げてくる。
それは今にもーー感動の涙となって零れ落ちそうだったけれど、私はなんとか乱暴に目元を拭うとそれを誤魔化した。
そして、私は悪戯っぽく笑ってみせる。
「じゃぁ……私も……最後なんだし、沢山呼んでみようかな?剛志」
と、私の言葉に嬉しそうに笑う剛志。
彼はその笑顔のまま、
「おう。沢山呼んでくれ」
と、笑った。
その後、何をするでもなくーー縁側に座って、ただ互いの名前を呼び合っては笑い合う私達。
(ずっと……ずっと、この時間が続けば良いのに……)
私は笑顔で剛志の名前を呼びながらも、心の中ではずっとそんなことを考えていた。
それ位、とても優しくーー愛おしい時間だったのだ。
(これから、何があっても……私は、剛志と過ごしたこの時間のことを、絶対に忘れないで生きていこう……)
ーー心の支えにして、生きていこう。
そうして、暫し笑い合う私達。
と、ふと剛志がーー真剣な眼差しで私の名前を呼んできた。
「なぁ、真紀?」
「なに?剛志」
「いや。名前、さ。この前が最後かと思ったけど……。まだ、少し呼べそうだから。だから、呼べる内に沢山呼んでおこうと思ってさ。お前の名前」
「剛志……」
剛の言葉を聞いた私の胸に、熱いものが込み上げてくる。
それは今にもーー感動の涙となって零れ落ちそうだったけれど、私はなんとか乱暴に目元を拭うとそれを誤魔化した。
そして、私は悪戯っぽく笑ってみせる。
「じゃぁ……私も……最後なんだし、沢山呼んでみようかな?剛志」
と、私の言葉に嬉しそうに笑う剛志。
彼はその笑顔のまま、
「おう。沢山呼んでくれ」
と、笑った。
その後、何をするでもなくーー縁側に座って、ただ互いの名前を呼び合っては笑い合う私達。
(ずっと……ずっと、この時間が続けば良いのに……)
私は笑顔で剛志の名前を呼びながらも、心の中ではずっとそんなことを考えていた。
それ位、とても優しくーー愛おしい時間だったのだ。
(これから、何があっても……私は、剛志と過ごしたこの時間のことを、絶対に忘れないで生きていこう……)
ーー心の支えにして、生きていこう。
20
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
深海の星空
柴野日向
青春
「あなたが、少しでも笑っていてくれるなら、ぼくはもう、何もいらないんです」
ひねくれた孤高の少女と、真面目すぎる新聞配達の少年は、深い海の底で出会った。誰にも言えない秘密を抱え、塞がらない傷を見せ合い、ただ求めるのは、歩む深海に差し込む光。
少しずつ縮まる距離の中、明らかになるのは、少女の最も嫌う人間と、望まれなかった少年との残酷な繋がり。
やがて立ち塞がる絶望に、一縷の希望を見出す二人は、再び手を繋ぐことができるのか。
世界の片隅で、小さな幸福へと手を伸ばす、少年少女の物語。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる