72 / 115
第一部 Side 永宮 真紀
私が私でいられる最後の日
しおりを挟む
泣いて泣いて泣き続けてーー。
でも、やがて私は顔を上げると乱暴に涙を拭う。
(自分の為に……悔しくて泣くのは、今日で最後にしよう)
今からは、もう、自分の人生を取り戻せるまで、私は絶対に泣きはしない。
そう心に決めると、私は、ドラム缶の中で燃え続ける少女の遺体に手を合わせた。
「あなたの今までの人生、決して無駄にはしません。あなたには不本意なことかもしれないけれど……それでも、私に人生をくれてありがとう。私は、あなたをいじめた奴らが羨むくらい、幸せな人生を送ってみせるわ」
瞬間、まるで私に返事をするかの様に、一瞬激しく炎が燃え上がる。
だが、不思議と怖い気はしなかった。
都合が良い解釈かもしれないが、
(きっと、彼女が納得して……背中を押してくれたのだ……)
炎を見つめながら、そんなことを考える私。
すると、そんな私の肩にぽんと優しく手が置かれる。
見ると、剛志が悲しげなーーそれでいて、どこか強さも秘めた、複雑な眼差しで私のことを見つめていた。
「剛志……」
私は、彼を見上げ、確かめる様にその名を呼ぶ。
と、剛志は私の言葉にそっと頷いた。
そうして、静かにこう語りかける。
「俺達が「剛志」と「真紀」でいられるのは、今日が最後だな」
でも、やがて私は顔を上げると乱暴に涙を拭う。
(自分の為に……悔しくて泣くのは、今日で最後にしよう)
今からは、もう、自分の人生を取り戻せるまで、私は絶対に泣きはしない。
そう心に決めると、私は、ドラム缶の中で燃え続ける少女の遺体に手を合わせた。
「あなたの今までの人生、決して無駄にはしません。あなたには不本意なことかもしれないけれど……それでも、私に人生をくれてありがとう。私は、あなたをいじめた奴らが羨むくらい、幸せな人生を送ってみせるわ」
瞬間、まるで私に返事をするかの様に、一瞬激しく炎が燃え上がる。
だが、不思議と怖い気はしなかった。
都合が良い解釈かもしれないが、
(きっと、彼女が納得して……背中を押してくれたのだ……)
炎を見つめながら、そんなことを考える私。
すると、そんな私の肩にぽんと優しく手が置かれる。
見ると、剛志が悲しげなーーそれでいて、どこか強さも秘めた、複雑な眼差しで私のことを見つめていた。
「剛志……」
私は、彼を見上げ、確かめる様にその名を呼ぶ。
と、剛志は私の言葉にそっと頷いた。
そうして、静かにこう語りかける。
「俺達が「剛志」と「真紀」でいられるのは、今日が最後だな」
21
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説
旦那様はチョロい方でした
白野佑奈
恋愛
転生先はすでに何年も前にハーレムエンドしたゲームの中。
そしてモブの私に紹介されたのは、ヒロインに惚れまくりの攻略者の一人。
ええ…嫌なんですけど。
嫌々一緒になった二人だけど、意外と旦那様は話せばわかる方…というか、いつの間にか溺愛って色々チョロすぎません?
※完結しましたので、他サイトにも掲載しております
もう誰も愛さない
ルー
恋愛
アメリアは恋人のカルスを妹のリリアに寝取られた。リリアは子供ができたと言いアメリアにカルスと別れるように迫る。アメリアは酷くショックを受け、母エリナがすべてを認めてしまったために精神的に壊れてしまう。アメリアを邪魔に思ったリリアはアメリアを無理やり精神病院に入院させた。入院してから2年後、カルスとその恋人リリアがアメリアのもとを訪れた。結婚するから結婚式の出席と、お祝い金をよこせというものだった。家族から離れるためアメリアは精神病院を退院すると同時に姿を消す。姉が消えたというのにリリアは邪魔者が消えたと嬉しそうにカルスとの結婚式を開く。母親や近所の人など多くの人に祝福された夫婦となった2人だったがその2人の間に産まれていた子供がカルスの子ではないことが発覚する。一方隣国アスラに逃げたアメリアは昔からの夢だったクッキー屋を開き、店は大繫盛していた。
9月17日分まで予約済みです。
極上の悪役令嬢~婚約破棄された私は覚醒した魔力を使い貴族社会の覇権争いを制する~
秋津冴
恋愛
貴族社会で裏切られ、婚約破棄されたリディアは絶望の淵から這い上がり、隠された魔法の力を覚醒させ、復讐を誓う。
冷静沈着な王子アレクシスとリディアは、貴族社会の権力争いに巻き込まれてしまう。
元婚約者レオンと浮気相手のカトリーナは、リディアを陥れ、王国の重要なポジションを独占しようと画策していた。彼らは偽りの証拠や噂を利用してリディアの名誉を失墜させ、アレクシスを孤立させようとしていたのだ。
しかし、リディアは覚醒した魔法の力とアレクシスの知恵を駆使して、「悪役令嬢」として振る舞うことにした。二人は、彼らの陰謀を暴いて逆転することに成功し、レオンとカトリーナは社交界から追放される。
リディアは名誉を完全に回復し、アレクシスと新たな未来を歩む決意を固める。
他の投稿サイトでも掲載しています。
婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした
アルト
ファンタジー
今から七年前。
婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。
そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。
そして現在。
『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。
彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。
【完結】旦那様! 私と愛し合いましょう!
I.Y
恋愛
「私、前世の記憶を思い出したの?」
ベルガー帝国名門エルヴァンクロー公爵家夫人サナ・ド・エルヴァンクローは、前世の記憶を思い出す。
そして自分が恋愛小説〝レオンに恋して〟の悪役であったこと、既に悪役としての役目を終えたあとの人生を歩んでいることを知る。
サナは、悪役として〝レオンに恋して〟の主人公たちの純愛を見届けたあと、ベルガー帝国の南部の地、リーユニアを統治する名門エルヴァンクロー公爵家に嫁いでいたのだ。
エルヴァンクロー公爵である夫アルベルクとの結婚生活が上手くいっていないことに悩みを抱いていたサナは、せめて結婚してしまう前に前世の記憶を思い出したかったと落胆していた。
しかし、とある些細なことがきっかけで、ふたりの距離は徐々に縮まっていく。
(好き。どうしようもなく、好き……)
これは、アルベルクへの本気の恋を自覚した元悪役のサナと、不器用ながらに優しさを発揮し、無自覚にサナを誑し込むアルベルクの結婚生活の物語である。
✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。✿.•¨•.¸¸
―必読―
◆当作品はフィクションです。現実の人物、団体などとは関係ありません。
◆当作品は恋愛小説です。
◆R18に該当する直接的な表現はありませんが、今後直接的な表現を使用する場合は、R15からR18に変更させていただきます。
◆ 作者並びに作品(登場人物等)に対する〝度の過ぎた〟ご指摘、〝明らかな誹謗中傷〟は受け付けません。
⇒現在、感想欄を閉鎖中です。
◆ 作品の転載、明らかな盗作等に関しては、一切禁止しております。
◆ ムーンライトノベルズ様・カクヨム様にも掲載中です。
以上、自衛をよろしくお願いいたします。
そんなに私の事がお嫌いなら喜んで婚約破棄して差し上げましょう!私は平民になりますのでお気になさらず
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢のサーラは、婚約者で王太子のエイダンから冷遇されていた。さらに王太子はなぜか令嬢たちから人気が高かった事から、エイダンに嫌われているサーラは令嬢たちからも距離を置かれている。
そんなサーラの唯一の友人は、男爵令息のオーフェンだ。彼と話している時だけが、サーラが唯一幸せを感じられる時間だった。
そんなある日、エイダンが
「サーラと婚約破棄をしたいが、その話をするとサーラがヒステリックに泣き叫ぶから困っている」
と、嘘の話を令嬢にしているのを聞き、サーラはさらにショックを受ける。
そもそも私はエイダン様なんか好きではない!お父様に無理やり婚約させられたのだ。それなのに、そんな事を言うなんて!
よし、決めた!そこまで言うなら、何が何でも婚約破棄してもらおうじゃない!そしてこんな理不尽な貴族社会なんて、こっちから願い下げよ!私は平民になって、自由に生きるわ!
ついに立ち上がったサーラは、無事王太子と婚約破棄し、平民になる事はできるのか?
誰でもよいのであれば、私でなくてもよろしいですよね?
miyumeri
恋愛
「まぁ、婚約者なんてそれなりの家格と財産があればだれでもよかったんだよ。」
2か月前に婚約した彼は、そう友人たちと談笑していた。
そうですか、誰でもいいんですね。だったら、私でなくてもよいですよね?
最初、この馬鹿子息を主人公に書いていたのですが
なんだか、先にこのお嬢様のお話を書いたほうが
彼の心象を表現しやすいような気がして、急遽こちらを先に
投稿いたしました。来週お馬鹿君のストーリーを投稿させていただきます。
お読みいただければ幸いです。
ヒロインがヒロインをしてくれません~我儘王子との結婚なんてごめんです~
ルー
恋愛
ラテラル王国の筆頭公爵家の長女に産まれたラリシエルは5歳の時に前世の記憶を思い出した。ここがとある乙女ゲームの世界であり、自分がヒロインの恋路を邪魔する悪役令嬢であるということもすべてを知ってしまった。我儘王子との婚約が心底不満だったラリシエルは乙女ゲームのストーリーを使って婚約破棄もしくは婚約解消に持ち込むことをもくろむ。そして異世界からヒロインである聖女がやってきた。ようやくストーリーが始まると思ったのに、ヒロインは王子を攻略し始めるどころかそもそものストーリーとまったく違った行動をした。
8月9日までは毎日10時に更新されます。それ以降は執筆の速さによります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる