私を返せ！〜親友に裏切られ、人生を奪われた私のどん底からの復讐物語〜

第一部 Side 永宮 真紀

出逢い

その後。

車は暫しばらく走った後、剛志のお母さんの知人の女性が経営している医院に到着する。

そこで治療を受けることになった私。

お医者様曰く、「傷は深くはないが、頭の怪我は後にどんなこと影響が出るかわからない」ということで、私と剛志達一行は、この日、このお医者様の家に泊まらせていただくことになった。

かなり人里離れた場所にある、小さな医院。

「ここにはね、あなた達みたいな……何か事情があって苦しんでいる人達がよく来るのよ」

優しく微笑みながら、私達にそう語りかけて来る女医。

彼女は……私が、明らかに剛志一家の家族ではないことに気づいていた様だが、敢えて事情を聞いてくることはなかった。

「傷が痛むなら、今夜だけと言わず、好きなだけ泊まって行っていいのよ」

あくまで穏やかな口調で、女医は私にそう告げる。

でも、私は首を横に振った。

「ありがとうございます。気持ちは嬉しいです。
でも……私がここで長く足を止めてしまったら、その分、剛志達が逃げ切るのが遅くなってしまうので」

「そう……。でも、無茶なことはしちゃダメよ？」

静かに、私の瞳を見つめながらそう告げる女医。

彼女は、そっと……優しく、私の頭を撫でた。

「貴女はまだ子供でしょう？こんな子供がここまでして逃げて来なければいけないなんて……。世の中、間違ってるわよ。本当に」

女医は白衣のポケットからタバコを取り出すと、火をつけつつ、吐き捨てる様にそう告げる。

外では、まるで不安な私の気持ちを表しているかの様に、雨が降り始めていた。