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第一部 Side 永宮 真紀

邂逅②

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剛志達が父親の酷い暴力に悩まされていた話は前から聞いていた。

そうして、いつか逃げ出したいと話していたことも――。

けれど、まさか「今」――このタイミングでそうするとは。

(このまま剛志達が夜逃げしてしまったら……それこそ、本当にもう2度と会えなくなる……!)

私は意を決して、隠れていた物陰から姿を現した。

そして、彼に駆け寄るや、愛しいその名前を呼ぶ。

「剛志っ……!」

私の声に気付き、はっと此方を振り返る剛志。

「真紀っ……?」

そう――実は私と風香は顔こそ取り替えられてしまったが、声は……声帯は元のままだった。

というのも、今回私達の顔が取り替えられてしまったのは、あくまで風香が「自分が真紀である」と主張したからだ。

尚且つ、私達の顔面が高所から落下した衝撃(正確には殆ど風香が切り裂いたからであるが)で、顔面がぐちゃぐちゃになってしまっていた為、その措置として整形手術が行われた為で、私達を入れ替える為に手術が行われた訳ではない。

故に、不要であり無事であった声帯の手術までは行われなかったのだ。

だからこそ――自分に残された、唯一私が真紀だと示せるこの声で、必死に剛志に呼びかける私。

しかし、私が夢にまで見た……心から愛しい初恋の人は、私の姿を見るなり、親の仇にでも出逢ったかの様にその目を吊り上げたのだ。
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