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第一部 Side 永宮 真紀
脱走②
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あれから、どれくらい歩いたことだろう。
時計がないため時間は分からないし、空も周囲も暗く、時間の感覚も最早無くなって来てしまっているが……恐らく、1時間以上は歩いているはずだ。
(もうそろそろ、着くと思うのだけど……)
彼に会えるかもしれないという希望と想いだけを胸に抱き続け、ひたすら足を動かし続ける私。
ずっと他人の目を逃れ……道なき道を選んで歩いて来たせいだろうか、私の足の裏はかなり傷つき、既に血塗れになっていた。
正直、地面に足をついているのもやっとの状態だ。
でも、私は歩かなければいけなかった。
大好きな、初恋の人に会うために――。
「剛志……」
彼の名前をおまじないの様につぶやいては、一歩ずつ――鉛の様に重くなってしまった足を動かす私。
私の足も、精神も……最早傷や疲労で限界寸前だった。
と、そんな私の視界に見慣れた景色が飛び込んでくる。
(あれは……よく、学校帰りに寄った公園だわ……!)
そう、私は漸く、生まれ育った町に辿り着く事が出来たのだ。
でも、剛志に会うまでは安心することは出来ない。
(それに、もしかしたら……私が脱走した連絡が、もう風香の元にいってるかも)
そうしたら――狡猾なあの風香のことだ。
何か嫌な罠を仕掛けているかもしれない。
であれば、やはり、剛志の家に辿り着くまでは歩き続けた方がいいし、油断するべきではないだろう。
私は……本当は今直ぐにでも泣きたい気持ちを抑えて、ひたすら歩き続けた。
時計がないため時間は分からないし、空も周囲も暗く、時間の感覚も最早無くなって来てしまっているが……恐らく、1時間以上は歩いているはずだ。
(もうそろそろ、着くと思うのだけど……)
彼に会えるかもしれないという希望と想いだけを胸に抱き続け、ひたすら足を動かし続ける私。
ずっと他人の目を逃れ……道なき道を選んで歩いて来たせいだろうか、私の足の裏はかなり傷つき、既に血塗れになっていた。
正直、地面に足をついているのもやっとの状態だ。
でも、私は歩かなければいけなかった。
大好きな、初恋の人に会うために――。
「剛志……」
彼の名前をおまじないの様につぶやいては、一歩ずつ――鉛の様に重くなってしまった足を動かす私。
私の足も、精神も……最早傷や疲労で限界寸前だった。
と、そんな私の視界に見慣れた景色が飛び込んでくる。
(あれは……よく、学校帰りに寄った公園だわ……!)
そう、私は漸く、生まれ育った町に辿り着く事が出来たのだ。
でも、剛志に会うまでは安心することは出来ない。
(それに、もしかしたら……私が脱走した連絡が、もう風香の元にいってるかも)
そうしたら――狡猾なあの風香のことだ。
何か嫌な罠を仕掛けているかもしれない。
であれば、やはり、剛志の家に辿り着くまでは歩き続けた方がいいし、油断するべきではないだろう。
私は……本当は今直ぐにでも泣きたい気持ちを抑えて、ひたすら歩き続けた。
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