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第一部 Side 永宮 真紀

絶望の日々④

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(私……このまま風香と風香のお父さんに全てを奪われて……誰にも知られないまま、一人で死んでいくのかしら……)

本当の家族にも、剛志にも、二度とけれど会えずに――。

だが、剛志の笑顔を思い出した瞬間、私の心に、ほんの少しだけ意志の光が宿る。

(そうだ、剛志……。……信じて貰えなくて良い……私が真紀だって分かって貰えなくても良い。悪者の風香として嫌われてもいいから、最後に剛志にだけは想いを伝えたい)

剛志の笑顔や一緒に過ごした時間を思い浮かべ、強くそう願う私。

私は……今や、剛志にとっては大切な幼馴染を殺害しようとした稀代の悪人、大犯罪者なのは頭では分かっている。

例え会いに行ったとしても、剛志が会ってくれる保証なんてそもそもない。

でも――。

(剛志に、会いたい。例え伝わらなかったとしても、この気持ちをちゃんと伝えたい)

――彼への気持ちを伝えないまま、この心を殺されるのは絶対に嫌だ。

この思いは……私の大切な初恋だけは、失いたくない。

(そうだ……顔も人生も、家族すら奪われて……初恋まで奪われてたまるものか)

私は、自分の心を守るかの様に、胸の前でぎゅっと両手を組んだ。

でも、と思う。

「剛志に想いを伝えるなんて……どうやったら良いのだろう」

現状、凶悪犯である私の病室前には、いつも二人組の警察官が見張りについている状態なのだ。

また、彼らを誤魔化して外に出ようとしたとして――そもそも、此処は警察病院なのである。

表の入り口はおろか、裏口にだって警察官や警備員が常駐していた。

彼らの目を盗んで外に出ることなんて到底不可能なのである。

加えて、「精神に異常あり」と判断されている私は……入浴やトイレなど、病室を出る時は常に看護師の監視付きでもあったのだ。

流石に入浴もトイレも、バスタブや個室の中にまでは入ってこないものの……その入り口ギリギリまで看護師が付き添い、入浴や用を足し終えるまで、彼らがずっとドアの外で待っているという状態なのである。

だからこそ、そんな監視もつけず、勝手に一人で病室から出て行こうものなら、直ぐに見張りの警官からナースステーションに連絡が飛び、複数人の看護師や警官達が慌てて飛んでくるだろう。

そう――私は、常に監視され、人の目に晒されていたのだ。
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