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第一部 Side 永宮 真紀

貴女になりたい

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(そんな私になりたいなんて変なの)

本心からそう思うながら、私は風香に、

「私こそ。私は風香になりたいけどなぁ」

と、返す。

すると、珍しく、

「真紀ちゃんはわかってない!」

そう、風香が大きな声で返して来た。

「……真紀ちゃんは分かってないよ。凄く幸せなのが。お母さんもお父さんもあんなに優しくて。お友達も沢山いて。なのに、真紀ちゃんは、何もわかってない」

絞り出す様にそう告げる風香の表情に、何かただならぬものを感じ、私は小さく「ごめん」と返す。

と、風香も途端にはっとした様な表情に変わるや、

「私こそ、急にごめんね」

そう、微笑んだ。

その後、なんとなくお互いに話し掛け難くなり――劇を見終わるや、無言のまま帰宅した私達。

私は風香を家に送り届けたのだが、その時も彼女は、扉が閉まる寸前、

「……ねぇ?やっぱり私は真紀ちゃんになりたいな」

と、淡く――しかし、瞳だけは真剣に、微笑んでいた。

それでもやはり、風香がなぜ私になりたいのか――当時の私には全く理解できず、私は寝る寸前までベッドの中で、

(風香の家は……お父さんはやばいけど、お金持ちだし、色々買ってもらってるし。最近は虐待もないみたいだし。凄く恵まれてると思うんだけどなぁ。なんで、私なんかになりたいんだろう)

そう、考えていた気がする。
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