杉沢晴人は勇者になれない～悪役神に与えられたスキル、実は最強でした～

マリーのお城⑤

すると、

「もう目を開けてもいいわよ」

マリーからすぐに声をかけられる。

彼女の声に従い、目を開けてみる俺とマリア。

なんと、そこにはーー、

「嘘だろう……」

「まぁ、凄いです……！」

歴史の教科書に描かれた中世ヨーロッパの服装そのままの人々が、いつの間にか姿を現していたのだ。

それも、沢山。

服装とマリーの先ほどの言葉から察するに、彼らはマリーの使用人達なのだろう。

マリーと同じくこの城の運営権を持つからかーー或いは、マリーの仲間だからか、俺達にも恭しく頭を下げる使用人達。

俺とマリアもつられて頭を下げた。

と、次の瞬間ーー頭を下げた目の前のメイドが、そのまま真っ直ぐと俺達の方に向かって滑る様に進んでくるや、そのまま、俺達の体を通り抜けたではないか。

（ど、どうなってるんだ……？）

慌てて、自分を通り抜けたメイドの方を振り返る俺。

と、彼女だけではないーーなんと他の使用人達も壁や扉をすり抜けて移動しているのだ。

（まさか、この使用人達は全員……？）

すると、俺の心を読んだかの様に……どこか得意げに、マリーがこう告げてくる。

「そう。この城の使用人達は全員、私の処刑に殉じた者達――ゴーストなのよ」

（や、やっぱり……！）

俺は引き攣りそうになるのを必死で我慢した。