Switch！〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜

比翼の戦い④

流石に焦ったのか――魔力で影を操り、それを鞭の様に伸ばすイグナシオ。

彼は、離れた場所にいたケルベロスと、近くで腰を抜かしていた先程五道を襲撃したローブの人物を捕獲するや、なんと彼らを……その魂を肉体ごとバリバリと捕食し始める。

そのあまりに凄惨で恐ろしい光景に、言葉をなくす僕達。

すると、そんな僕達の目の前で――ケルベロス達の肉体と魂を取り込んだイグナシオは、醜く巨大な魔獣の姿へと変貌し始めた。

体長は、5メートル以上はあるだろうか。

全身はケルベロスの様に漆黒の毛並みに覆われており、犬の頭が3つあるが――その胸部には、まるで埋め込まれているかの様に、イグナシオの人間としての肉体が存在しているのである。

そうして、人間の様に2本の足で立ち上がると、何本もある巨大な手で僕達を薙ぎ払おうとして来たのだ。

そのまま僕達を睨み付けるや、狼の様な遠吠えをあげる魔獣と化したイグナシオ。

「おのれ、五道転輪王！それに日の本の神々よ！失った魂の代わりに……お前達の魂を喰らい、私の新たなる糧としてやろう！！！」

轟音と共にそう叫ぶや、イグナシオが一気に僕達に向かって襲いかかって来る。

しかし、その瞬間――月に輝く美しい透明な糸が魔獣イグナシオの肉体を絡め取った。

「私は本来、醜いものと肉体労働は嫌いなのですが……」

宙に浮かびながら優雅にそう告げるのは月読つくよみ様だ。

「まぁ、これも日の本の民を守る為だ！仕方ねぇだろっと！」

共に姿を現した素戔嗚すさのお様も、勇猛に魔獣に飛びつくや――なんとその剛腕と怪力で、複数生えている魔獣の尾を束でブチリと引きちぎる。

「ぐぁぁぁぁぁぁ！！！！！」

痛みに叫びをあげる魔獣イグナシオ。

大きく暴れた魔獣に絡めていた糸が振られ、思わず月読様が地面に叩きつけられそうになるが、素戔嗚様が駆けつけ、ひょいとキャッチした。

どうやら、2人とも無事らしい。