Switch！〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜

援軍②

しかし、そのケルベロスが僕に辿り着く直前――不意にその動きを止めた。

見ると、月明かりにキラキラと光る美しい透明な糸がケルベロスの全身を絡め取っている。

「はぁ。やっと辿り着きましたよ、全く。このお馬鹿な脳筋のせいで、随分遠回りをしてしまいました」

そう言いながら、自らの両手から神力の宿った透明な糸を伸ばし、ケルベロスを絡め取っているのは月読つくよみ様だ。

けれど、痛覚が存在しないのか――或いは、最早そんなことすらどうでも良くなっているのか、僕に牙を突き立てようと、目茶苦茶に暴れるケルベロス。

すると、そこに素戔嗚すさのお様が駆け付けるや、琴糸が絡まったままのケルベロスをひょいと持ち上げた。

「こいつは俺達が引き受ける！だからお前は、俺たちの国の……日の本の大切な民を救ってくれ、悠理！」

そう叫ぶや、僕らから離れた場所に向かってケルベロスを投げ飛ばす素戔嗚様。

月読様も素戔嗚様の言葉に頷くと、彼と共にケロベロスの方に向かっていく。

（皆が僕の為にチャンスを作ってくれたんだ！絶対に、あの魂を助けないと！）

しかし、その瞬間、イグナシオが大きく杖を一振りするや、恐ろしい勢いの突風が僕達に襲いかかった。