Switch！〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜

妖術師②

「まさか、こんな所に転生していやがったとはな……」

吐き捨てる様にそう言いながら、刀で杖を押し返そうとする五道。

すると、杖の持ち主は空いた片手ではらりとフードを外すや、ニヤリと嫌な笑みを浮かべた。

「それはこちらの台詞だ。五道転輪王。よもや、再びここで貴方と出会えるとは。余程、また弟君を奪われたいとみえる」

ニヤニヤと笑いながら、どこか飄々とそう告げる短い紫色の髪の壮年の男。

その言葉を聞いた瞬間、あからさまに五道の表情が変わる。

「貴様ぁっ……！」

男の言葉に激怒した五道は、怒りのままに刀に全体重を乗せ、激情の漆黒の炎を剣に纏わせた。

しかし、男は依然、笑みを浮かべたままだ。

「短気なところは変わらんな。また守れなくなるぞ？いいのか？……ああ、そうだ。お前に1つ教えておいてやろう。お前の可愛い弟の肌はとても柔く、甘く、極上の果実酒の様な味がしたぞ」

瞬間、僕の目から見ても分かる程に、五道の怒りが――気配が一気に膨れ上がる。

「貴様だけはここで討つ！！！」

そう叫ぶや、五道の刀が放つ漆黒の炎は勢いを増し、やがて男をも飲み込んでいった。