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目撃者③
しおりを挟む「あの、魂の入れ替えを、勝手に行うとどうなるんですか……?」
かなり憤った様子の五道転輪王に、僕は恐る恐るそう尋ねてみる。
すると、彼は舌打ちをしながらこう答えた。
「最悪の場合、魂を元の肉体にも戻せず……挙げ句、どちらかが死ぬ」
「えっ?!」
想像すらしていなかった彼の台詞に、思わず声を上げて驚いてしまう僕。
そんな僕に、五道転輪王は、分かりやすく噛み砕く様にしながら、勝手な魂の入れ替えの何が危険で恐ろしいのかについて説明してくれる。
「先ず、奴らは俺達神と違って、現代日本と異世界……両方の魂を管理はしていねぇ。つまり、片方の世界の人間の様子は分からねぇんだ」
五道転輪王の説明に、ふむふむと相槌を打ちながら耳を傾ける僕。
僕が理解出来ていると受け取ったのか、五道転輪王は更に説明を進めていく。
「で、ここで大切になるのが、魂の入れ替えを行う本来の意義なんだが。魂の入れ替えは、例えば、そのままだと生きていくのが難しいとか、とてつもなく悪い境遇に置かれてる者を対象に、現代人と異世界人……どちらの魂が入れ替わってもウィンウィンになる様にかなり考えられてから、行うもんなんだ」
五道転輪王はそこまで語ると、一旦気持ちを落ち着かせるかの様に目を閉じる。
そうして、大きく深呼吸をするや、再度閉じていた瞳を開け、説明を再開する五道転輪王。
けれど、頭を冷やしたつもりかもしれないが、彼の真紅の瞳の奥には怒りの焔が未だ燻っているのを、僕は見逃さなかった。
「だが、入れ替えを勝手に行う奴らは違う。あいつらは基本的に、金や名誉の事しか頭にねぇ。報酬や地位だけを目当てに入れ替えを行ってやがるんだ。そこには、配慮や救済なんて一切存在しない。ただ、依頼人から金を受け取れば、その依頼人が望んだ通り……指定された魂を生き残らせる為だけに入れ替えを行うんだよ。本当なら赤ん坊として転生させるところを、依頼人の要望で別の世界の人間を殺してその人間に成り代わらせたりして、な」
(そんな酷い事が行われていたなんて……)
知らなかったとは言え、あまりに酷すぎる。
僕は、勝手に魂の入れ替えが行われる場面を想像し、思わず身震いした。
そんな僕を一瞥し、話を続ける五道転輪王。
「で、だ。本来は「入れ替え」な訳だからな。もう片方の魂も別の世界に転生させなきゃいけねぇ。だが、奴らはそこまで優しくない。例えば、依頼人が指定した魂の……その元の肉体に片方の魂を入れ込んで、スケープゴートにしたり。平気で路上に打ち捨てたり。――最悪、綺麗な魂だったら異世界の魔物達に餌として高値で売りつけたりしやがるんだ」
「そんな恐ろしい事が、この世界で起きていたなんて……」
かなり憤った様子の五道転輪王に、僕は恐る恐るそう尋ねてみる。
すると、彼は舌打ちをしながらこう答えた。
「最悪の場合、魂を元の肉体にも戻せず……挙げ句、どちらかが死ぬ」
「えっ?!」
想像すらしていなかった彼の台詞に、思わず声を上げて驚いてしまう僕。
そんな僕に、五道転輪王は、分かりやすく噛み砕く様にしながら、勝手な魂の入れ替えの何が危険で恐ろしいのかについて説明してくれる。
「先ず、奴らは俺達神と違って、現代日本と異世界……両方の魂を管理はしていねぇ。つまり、片方の世界の人間の様子は分からねぇんだ」
五道転輪王の説明に、ふむふむと相槌を打ちながら耳を傾ける僕。
僕が理解出来ていると受け取ったのか、五道転輪王は更に説明を進めていく。
「で、ここで大切になるのが、魂の入れ替えを行う本来の意義なんだが。魂の入れ替えは、例えば、そのままだと生きていくのが難しいとか、とてつもなく悪い境遇に置かれてる者を対象に、現代人と異世界人……どちらの魂が入れ替わってもウィンウィンになる様にかなり考えられてから、行うもんなんだ」
五道転輪王はそこまで語ると、一旦気持ちを落ち着かせるかの様に目を閉じる。
そうして、大きく深呼吸をするや、再度閉じていた瞳を開け、説明を再開する五道転輪王。
けれど、頭を冷やしたつもりかもしれないが、彼の真紅の瞳の奥には怒りの焔が未だ燻っているのを、僕は見逃さなかった。
「だが、入れ替えを勝手に行う奴らは違う。あいつらは基本的に、金や名誉の事しか頭にねぇ。報酬や地位だけを目当てに入れ替えを行ってやがるんだ。そこには、配慮や救済なんて一切存在しない。ただ、依頼人から金を受け取れば、その依頼人が望んだ通り……指定された魂を生き残らせる為だけに入れ替えを行うんだよ。本当なら赤ん坊として転生させるところを、依頼人の要望で別の世界の人間を殺してその人間に成り代わらせたりして、な」
(そんな酷い事が行われていたなんて……)
知らなかったとは言え、あまりに酷すぎる。
僕は、勝手に魂の入れ替えが行われる場面を想像し、思わず身震いした。
そんな僕を一瞥し、話を続ける五道転輪王。
「で、だ。本来は「入れ替え」な訳だからな。もう片方の魂も別の世界に転生させなきゃいけねぇ。だが、奴らはそこまで優しくない。例えば、依頼人が指定した魂の……その元の肉体に片方の魂を入れ込んで、スケープゴートにしたり。平気で路上に打ち捨てたり。――最悪、綺麗な魂だったら異世界の魔物達に餌として高値で売りつけたりしやがるんだ」
「そんな恐ろしい事が、この世界で起きていたなんて……」
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