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選択の刻②
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「ユージーン。魔王と相打ちになり、死んでしまったあなたは、これから生まれ変わります。その時、もし……転生先や能力、容姿などに希望があるなら、何でも聞きますよ。あなた方人間が大変な時に、何も出来なかったお詫びです。せめて、どうか、あなたの次の人生に対して、私に願いを叶えさせてください」
(私の……次の人生……)
正直、そんなこと考えたこともなかった。
なんせ、私の今までの人生は全て国に捧げた様なものだったからだ。
物心のついた頃から、故国の為に戦う毎日。
帝国に仇なす者は処断をしーー最後には、袂を別った親友でさえ、この手にかけた。
だが、この一生に後悔がある訳ではない。
私は、騎士として生きた人生に満足している。
私は死んだが、先程女神は魔王と相討ちになったと言っていた。
つまり、故国を脅かす者もまた、居なくなったということだ。
であれば、死んだ私に憂い等一切無い。
私は、己の誇りの為に生き、誇りの為に死ねたのだ。
それは、何と恵まれたことだろう。
けれどーー。
今、改めて己の人生を振り返ってみると、1つだけーー思うことはある。
それは、無二の親友である青年ーーリスティファを止めることが出来なかったことだ。
幼い頃からずっと一緒だった親友。
私は、闇に飲み込まれ、絶望を振り撒く怪物になっていく親友を止めることが出来なかった。
「生まれ変わってまで……正直、こんな思いはしたくないな」
親友の命をこの手で断つのは、この人生だけで充分だ。
そんな想いを込め、私は女神に希望を告げた。
「女神よ。もし、貴女が本当に私の願いを叶えてくれるのならば、私は……次は、争いのない……親友を手にかけなくても良い世界に生まれたいと思う」
私の言葉に、静かに涙を流しながら頷く女神。
彼女は、私の手を握ったまま、震える声で語りかけてくる。
「では、何か能力に希望はありますか?国の為に、文字通り命をかけてくださったあなたの願いなら、私はどんな能力でもあなたに与えましょう」
能力ーー。
女神の言葉で、私は生前、勇者と交わした言葉を思い出す。
“あんたって本当に沢山スキルを持ってるんだな。剣術だってすげーし。俺の国ではさ?あんたみたいな奴のこと、『チート』って呼ぶんだぜ。で、そのスキルのことは『チートスキル』って呼ぶんだ”
そう、勇者はそんなことを言っていたっけな。
我が国の魔法使いにより、ニホンという異界から召喚された勇者は、私のことを常にチートチートと呼んでいた。
きっと、彼なりに私のことを褒めての台詞なのだろう。
実際、私は鑑定を始め、複数の能力を持っていた。
(だが……大切な親友の心一つ見抜けず、救えないのならば……どんなにスキルがあっても意味がないんだ……)
(私の……次の人生……)
正直、そんなこと考えたこともなかった。
なんせ、私の今までの人生は全て国に捧げた様なものだったからだ。
物心のついた頃から、故国の為に戦う毎日。
帝国に仇なす者は処断をしーー最後には、袂を別った親友でさえ、この手にかけた。
だが、この一生に後悔がある訳ではない。
私は、騎士として生きた人生に満足している。
私は死んだが、先程女神は魔王と相討ちになったと言っていた。
つまり、故国を脅かす者もまた、居なくなったということだ。
であれば、死んだ私に憂い等一切無い。
私は、己の誇りの為に生き、誇りの為に死ねたのだ。
それは、何と恵まれたことだろう。
けれどーー。
今、改めて己の人生を振り返ってみると、1つだけーー思うことはある。
それは、無二の親友である青年ーーリスティファを止めることが出来なかったことだ。
幼い頃からずっと一緒だった親友。
私は、闇に飲み込まれ、絶望を振り撒く怪物になっていく親友を止めることが出来なかった。
「生まれ変わってまで……正直、こんな思いはしたくないな」
親友の命をこの手で断つのは、この人生だけで充分だ。
そんな想いを込め、私は女神に希望を告げた。
「女神よ。もし、貴女が本当に私の願いを叶えてくれるのならば、私は……次は、争いのない……親友を手にかけなくても良い世界に生まれたいと思う」
私の言葉に、静かに涙を流しながら頷く女神。
彼女は、私の手を握ったまま、震える声で語りかけてくる。
「では、何か能力に希望はありますか?国の為に、文字通り命をかけてくださったあなたの願いなら、私はどんな能力でもあなたに与えましょう」
能力ーー。
女神の言葉で、私は生前、勇者と交わした言葉を思い出す。
“あんたって本当に沢山スキルを持ってるんだな。剣術だってすげーし。俺の国ではさ?あんたみたいな奴のこと、『チート』って呼ぶんだぜ。で、そのスキルのことは『チートスキル』って呼ぶんだ”
そう、勇者はそんなことを言っていたっけな。
我が国の魔法使いにより、ニホンという異界から召喚された勇者は、私のことを常にチートチートと呼んでいた。
きっと、彼なりに私のことを褒めての台詞なのだろう。
実際、私は鑑定を始め、複数の能力を持っていた。
(だが……大切な親友の心一つ見抜けず、救えないのならば……どんなにスキルがあっても意味がないんだ……)
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