わが家の吸血鬼さん〜イケメンヴァンパイアを拾ったら執着されました〜

天咲 琴葉

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吸血鬼さん、バトルする㉞

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  炎の球が池にぶつかった瞬間、苦しそうに顔を歪め、ポケットの中で胸を抑えて倒れ込むリント。

 「えっ!? リント、一体どうしたの!?」

  私は人差し指で彼をそっと揺さぶってみるが、苦しそうに呻くばかりで返事はない。

  と、隣にやってきたリルゼイが、もしや、とあることを口にした。

 「リントは氷の精霊だと言っていたよな? もしかしたら、あの中庭にある池の氷の精霊なのではないか?」

 「中庭の……?」

  私はリルゼイの言葉に戸惑いながら、中庭にある池と苦しむリントの顔を見比べる。

 (この子が中庭の池の精霊なんて行き成り言われても、いまいち実感が沸かないな)

  けれど、あながち無関係というものでもないのだろう。

  炎球に燃やされ、水分が半分程蒸発してしまった池の惨状と、それに比例する様にリントの表情は苦しみを募らせていくのだから。

 (なら、あの池をどうにかしないと!)

  そう理解し、私が立ち上がろうとした瞬間、神獣が私達に向け、再度炎球を放ってきた。

 「いけない……! 避けたら、リントの池がダメになっちゃう……!」

  そんなことをすれば、今度こそ完全にリントは消滅してしまうだろう。

 「それだけは、絶対にさせない……! 私は、クラスメイトもリントも、皆護るんだ!」

  私は大きく両手を広げると、池に繋がる壁の穴の前に大きく立ち塞がった。

 「止めて真由お姉さん、そんなことしたらお姉さんが死んじゃうよ……! 僕はどうなってもいいから、お願い、逃げて……!」

  ポケットの中からリントの悲鳴じみた叫び声が聞こえるが、私は大きく首を横に振る。

 「私は絶対、何も……誰も見捨てない!」

  そう叫ぶと、私は迫りくる炎球に目を閉じた。

  しかし――。

 「素晴らしい、それでこそ私が選んだ花嫁だ。安心しろ、真由。それに、リント。君たちには傷一つつけさせやしないさ。君達はこの私が護る。私の誇りと……全てを懸けて」

  間近で聞こえる、相も変らぬ余裕に満ちたリルゼイの声。

  その声に、私がはっと目を開けるとーー私達の前に立ちながら、大きな赤い盾で全ての炎球を弾くリルゼイの姿があった。

 「結婚式の前に、可愛い花嫁に傷をつけられては堪らないからな」
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