わが家の吸血鬼さん〜イケメンヴァンパイアを拾ったら執着されました〜

吸血鬼さん、バトルする㉔

 　先生の言葉にリルゼイが小さく呟いた。私も同意を込めて、彼に小さく頷き返す。リントも私のポケットの中で何度も大きく頷いている様だ。

 　と、そこまでの会話を聞いていた千恵が不意に口を開く。

 「先生？　じゃぁ、先生をそんなにしたのは女の人の中から出てきたおじさんで、白い狼は先生を助けてくれたんですか？」

 　千恵の問いに、私も先生の方を振り返り、答えを待つ。丁度私も答えが気になっていたことだ。

 　一体、どちらがホールを――そして、先生をこんな風にしたのか。

 　すると、先生は一瞬目を虚空に滑らせ、記憶を辿る様にしながら口を開いた。

 「いいえ、違うわ。逆よ。白い狼は……きっと、あの老人より、とても恐ろしい存在だと思うの。だって、あの老人を倒す為なら、手段も犠牲も厭わないという雰囲気だったのよ。狼は……老人を倒す為に、対角線上にいた私ごと切り裂いたのだもの」

 「先生、ごと……？」

 　その発言に、私は先程のリルゼイの台詞を思い出すと同時に、自分が感じた嫌な予感が現実になってしまったのを感じていた。

 『 精霊と幻獣にとっての正義と秩序が、人間にとっての正義と秩序とは限らない、ということだ 』