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吸血鬼さん、バトルする⑮
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いや、そもそも、リルゼイからすれば、こんな局面について来た人間の私の存在自体が珍しいものなのかもしれないが。
と、先程までやや視線を下に落とし、思案していたリルゼイが顔を上げる。そして、私に目を向けると小さく頷いてみせた。
恐らく、千恵を連れて行っても良いという彼なりの判断が出たということだろう。
私も彼に頷き返すと、ふらつきながらも歯を食いしばって立つ千恵に肩を貸す。
「分かったよ。一緒に行こう、千恵!」
「ありがとう、真由!」
私の言葉にぱぁっと表情を明るくさせる千恵。
そんな彼女に微笑むと、私は肩を貸したまま歩き始めた。
「ううん。だって、千恵の力が必要だしね。今の私にはこの広いホールの何処に皆がいるのかすらわからないんだから。だから、皆のところまで案内してね? あ、でも無理は禁物だよ! 危ないと思ったら直ぐに隠れてね」
「わかった。任せてよ、真由。それに真由の彼氏さん」
彼氏ですと!?
親友の思ってもみない台詞に驚き、私は思わず千恵を二度見する。
「なっ、何言ってんの!? ち、違うから! 全然違う――」
そうして、私はあらぬ疑惑を否定するため、口を開こうとした。
だが――。
「ああ、わかった。君に任せよう、千恵」
私が否定をする前に、彼氏という言葉を素直に受け止め、若干嬉しそうにしながら答えるリルゼイに私は激しく狼狽える。
「何で否定しないのー!? っていうかサラリと流すさないで! 大体あなたなんてただの同居人、いや居候……ううん。そう、ペットみたいなもんなんだから!!」
私は千恵に肩を貸しつつ、リルゼイにそう告げる。
すると、直ぐ真横から、千恵の笑いを堪えているかの様な声が聞こえて来た。
「大の男をペットって……ふーん、真由ってそういう趣味があったんだ?」
「!?」
私は漸く己の失言に気付く。だが、時既に遅し。
千恵は楽しそうに笑っているし、リルゼイはと言うと――。
「ペットか。むぅ、それは初めて言われたな。だがそうか、真由はそういうのが好みなのか。ならば、婚約者としては受け入れない訳には……」
なんぞとのたまいながら、一人でうんうん唸っている。
(神様どうか今すぐ私をコロシテー!!)
精神的な意味でアウェーな空間の中、私は一人心の中で滂沱の涙を流しながら絶叫したのだった。
と、先程までやや視線を下に落とし、思案していたリルゼイが顔を上げる。そして、私に目を向けると小さく頷いてみせた。
恐らく、千恵を連れて行っても良いという彼なりの判断が出たということだろう。
私も彼に頷き返すと、ふらつきながらも歯を食いしばって立つ千恵に肩を貸す。
「分かったよ。一緒に行こう、千恵!」
「ありがとう、真由!」
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そんな彼女に微笑むと、私は肩を貸したまま歩き始めた。
「ううん。だって、千恵の力が必要だしね。今の私にはこの広いホールの何処に皆がいるのかすらわからないんだから。だから、皆のところまで案内してね? あ、でも無理は禁物だよ! 危ないと思ったら直ぐに隠れてね」
「わかった。任せてよ、真由。それに真由の彼氏さん」
彼氏ですと!?
親友の思ってもみない台詞に驚き、私は思わず千恵を二度見する。
「なっ、何言ってんの!? ち、違うから! 全然違う――」
そうして、私はあらぬ疑惑を否定するため、口を開こうとした。
だが――。
「ああ、わかった。君に任せよう、千恵」
私が否定をする前に、彼氏という言葉を素直に受け止め、若干嬉しそうにしながら答えるリルゼイに私は激しく狼狽える。
「何で否定しないのー!? っていうかサラリと流すさないで! 大体あなたなんてただの同居人、いや居候……ううん。そう、ペットみたいなもんなんだから!!」
私は千恵に肩を貸しつつ、リルゼイにそう告げる。
すると、直ぐ真横から、千恵の笑いを堪えているかの様な声が聞こえて来た。
「大の男をペットって……ふーん、真由ってそういう趣味があったんだ?」
「!?」
私は漸く己の失言に気付く。だが、時既に遅し。
千恵は楽しそうに笑っているし、リルゼイはと言うと――。
「ペットか。むぅ、それは初めて言われたな。だがそうか、真由はそういうのが好みなのか。ならば、婚約者としては受け入れない訳には……」
なんぞとのたまいながら、一人でうんうん唸っている。
(神様どうか今すぐ私をコロシテー!!)
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