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夢の後

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 「……ぅぅ……あいててて……」

 瞬間移動後、乱暴に地面に投げ出され、頭を擦る切夜。

 「緊急だからって、こんなに乱暴にすることないんじゃないか?」

 切夜は未だ頭を擦ったまま、閉じていた目を開け、シーレ王子に話しかける。

 しかし、あの憎らしいまでに自信たっぷりな声が返って来る様子がない。

 「シーレ王子……?」

 不安になって辺りを見回してみるが――そこには、シーレ王子はおろか、マルバスやアンドロマリウス、グラシャラボラス等の悪魔達の姿は一切無かった。

 勿論、あの口裂け女の姿も――。

 「一体、皆、何処へ消えたんだ……?」

 不安になり、何度も辺りを見回す切夜。

 しかし、そこにいるのは切夜と剛と愛菜と陸人だけだった。

 (悪魔達は何処に行ったんだろう?それに、ここは何処なんだ?)

 自分達の居場所のヒントを少しでも得ようと周囲を見回す切夜の直ぐ目の前に、見慣れた家が飛び込んでくる。

 「え?家?」

 きょとんとした表情で我が家を見上げる切夜と剛。

 「……ってことは、ここは隣の空き地か」

 そう呟きながら、切夜はゆっくりと立ち上がる。

 それに倣い、剛達もゆっくり立ち上がるや、周囲を見回した。

 そこは確かに、見慣れた――自宅の隣の、自分達がいつも公園代わりにしている空き地だ。

 と、不意に……切夜達の家の開け放たれた窓から、電話が鳴る音が響いてくる。
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