上 下
102 / 117

決戦⑤

しおりを挟む
 「そう言うと思ったよ」

 切夜は短くそう告げるや――アンドロマリウスの相手はグラシャラボラスとシーレ王子に任せ、口裂け女と向かい合う。

 自分が復讐を遂げられなかったことに、迷いを感じているような表情を浮かべている口裂け女。

 切夜は、そんな彼女の手を優しく握った。

 「全部、本人の口から聞いたよ。星川芳美って、本当に酷い奴だよな。けど、そんな酷い奴の為にあんたがこれ以上犠牲になる必要はないんだ」

 「……犠、牲……?」

 切夜の表情にハッとした表情を浮かべ、口裂け女はじっと彼を見つめる。

 「ああ。確かにあんたは怖い怪人で……沢山の人を傷付けたのかもしれない。けど、星川芳美にあんな酷い目に遭わされたりしなきゃ、あんたも人を襲ったりしなかった筈だ」

 切夜の言葉に、口裂け女の頬を静かに涙が伝い、落ちていく。

 そんな彼女の瞳を真っ直ぐに見つめると、切夜は、真剣にこう告げた。

 「俺は、あんたを倒すんじゃなく助けたい。俺を信じてくれるか?」

 「……うん……」

 切夜の言葉に、小さくこくりと頷く口裂け女。

 切夜も彼女に頷くと――、

 「マルバス!!」

 獅子の悪魔の名を呼んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王太子さま、側室さまがご懐妊です

家紋武範
恋愛
王太子の第二夫人が子どもを宿した。 愛する彼女を妃としたい王太子。 本妻である第一夫人は政略結婚の醜女。 そして国を奪い女王として君臨するとの噂もある。 あやしき第一夫人をどうにかして廃したいのであった。

理想の王妃様

青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。 王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。 王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題! で、そんな二人がどーなったか? ざまぁ?ありです。 お気楽にお読みください。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

悪役令嬢が追放されてから21年後-紫花が咲く學院の三人の姬

Kiwi
ファンタジー
21年前、バスティア王国では悪しき幻霊魔法使いに対する処刑が行われました。 かつて幻霊魔法使いに陥れられ、悪役令嬢として名を汚された女性が王都に戻り、王子と再び結ばれました。 21年後、両親の顔を見たことのないピノは、幼い頃から優れた魔法の才能を持ち、バスティアの王妃の護衛として育ちましたが、ある事故で職を解かれます。王妃によって最高の魔法学校で翡翠学院に送られたピノは、そこで2人の友人を知ります。 1人は、潮国の王女である珊瑚で、元奴隷の父と類似した容姿のために国内の貴族から排斥され、将来に迷っています。 もう1人は、閉鎖的な国で育ち、魔法について何も知らない「花葉」という新興の衣料品店の店主の姪である夜星です。彼女は、女性の床を引く長いスカートを5センチ短くすることを主張しています。 学院の魔法戦大会が開催される間、彼女たちを取り巻く陰謀、戦い、そして彼女たち自身が知らない暗い過去が徐々に明らかになっていきます。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつまりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

前世大賢者のつよかわ幼女、最強ちびっこ冒険者になる!

メルメア
ファンタジー
『大賢者リスターニャの伝記』を読んでいた6歳の孤児幼女ミリアは、自分の前世こそがそのリスターニャだと思い出す。伝記によれば、2000年の時を経てリスターニャの家はダンジョンと化していて、数多くの冒険者が探索に挑んでいるらしい。 そんななか、ミリアの頭をよぎったのは死ぬ前に整理し忘れたパンツのことだった。家を探索されてパンツを発見されていたら……?大賢者様のパンツだー!とレアアイテム扱いされていたら……? 居ても立っても居られなくなったミリアは孤児院を脱出。 6歳の幼女ながら、前世の記憶とスキルを頼りに冒険者生活を始める。 歴戦の冒険者を苦しめるダンジョンでも、その主である最強賢者の生まれ変わりが苦労するはずはなくて……? パンツから始まったミリアの冒険は、パンツ問題が解決したあともいろんな人、種族を巻き込んで続いていく。 ダンジョンを攻略したり、野外でモンスターを狩ったり、自分の直属の助手だった賢者たちの子孫と出会ったり……。 ミリアは前世でやり残したことを楽しみつつ、最強の幼女としてほのぼの暮らしていく。 1/20 HOTランキング1位ありがとうございます!

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m

処理中です...