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決戦③

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 全てを覚悟しているのか、目を閉じる口裂け女。

 アンドロマリウスは彼女の胸――心臓に向けて手を伸ばす。

 しかし、急に横からアンドロマリウスに向けて何かが飛んできた。

 驚き、慌てて掴むアンドロマリウス。

「……魚?」

 そう――アンドロマリウスに向けて投げられたのは、釣り立てほやほやの魚だった。

 と、不意にアンドロマリウスの目の前に現れたシーレ王子がレイピアを振るう。

 慌ててかわすアンドロマリウス。

 しかし、シーレ王子のレイピアはアンドロマリウスではなく、彼が握った魚を切り裂いた。

 悪魔と契約しているからだろうか……?

 魚が今死に――その魂がアンドロマリウスの手に渡ったのが、切夜達にもよく見える。

 と、魂をまだ奪われていないのに、口裂け女の髪から蛇達が剥がれ落ち始めたではないか。

 「ど、どうなってるんだ?!」

 目を白黒させる切夜。

 そんな切夜の方を振り向き、シーレ王子は愉快そうに笑ってみせた。

 「なぁに。同じ悪魔だからな?悪魔としての契約の穴をついてやっただけさ」

 ――『悪魔は契約の成功時に魂を貰うが……その際、一度手にした魂を拒否することは出来ない!』

 「そうだったなぁ?アンドロマリウス!」

 至極楽しそうにそう告げるシーレ王子と、シーレ王子の台詞に憎々しげに表情を歪めるアンドロマリウス。

 「貴様……図ったな!!!」
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