悪魔図鑑～でこぼこ3兄妹とソロモンの指輪～

疑惑の女優②

 「無駄になるかならないかなんて、やってみなきゃ分からないだろ！」

 切夜の――周りの者達の不安すら跳ね返すような明るい言葉に、シーレ王子は一瞬息を呑む。

 と、そんなシーレ王子に対して、切夜が手を差し出してきた。

 「俺は、例えどんなに無駄になったとしても……自分が出来ることをやりたいんだ。やれることをやらないで、後悔はしたくない。だから――俺達を此処へ連れて行ってくれ、シーレ王子！」

 眩しい位に真っ直ぐな切夜の言葉に、一瞬口元を綻ばせ――穏やかな微笑みを浮かべるシーレ王子。

 「……負けたな」

 シーレ王子は小さくそう呟くと、切夜の手を取った。

 「良いだろう、連れて行ってやる！！そこで、アンドロマリウスとの決着を着けてやろうじゃないか！しっかり掴まってろよ！！」

 「ああ！！」

 シーレ王子の言葉に頷くや、彼にしっかり掴まる切夜達。

 一瞬、彼らの体を目映い光が包み込む。

 その余りの眩しさに、切夜達は反射的に目を閉じた。

 けれど、目を閉じるほんの数秒前――。

 切夜は、己の体を包み込んだ光に既視感のようなものを感じ取っていた。

 (ああ……この光は、あの時と同じだ……。初めて指輪をつけた時に包まれた、あの光と……)