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シーレ王子

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 ――瞬間、2人の頭上から至極愉快そうな声が降ってきた。

 「ほぉ?この俺を強制的に引きずり出すとは……。中々力の使い方を覚えてきたじゃないか、小僧」

 皮肉げでシニカルなこの物言いは――間違いない!!

 同時に頭上を見上げた切夜と剛は、天井付近にふわふわと浮かんでいる美しい蒼い瞳の青年と目が合った。

 「「シーレ王子!!!」」

 (やっぱり、近くで見てたんだ!!)

 自分達の推理が間違っていなかったことに嬉しくなる切夜と剛。

 しかし、そう喜んでもいられない。

 「父さんみたいな被害者をこれ以上出さない為にも、あの口裂け女を止めないと――!」

 強い決意を秘めた瞳でシーレ王子に向き直る切夜。

 剛も、真っ直ぐな眼差しをシーレ王子に向ける。

 と、そんな2人の眼差しを受け――シーレ王子は、その涼しげな目元を愉快そうに歪める。

 「分からんなぁ?父さんみたいな被害者というが……所詮は他人だろう?何故、そこまで力を尽くす?」

 真紅の唇を三日月型に歪め、くっくっと笑うシーレ王子に、切夜は眉をひそめた。

 「他人だって……誰かが傷付いたら嫌だろう?」

 切夜の答えを聞き、尚更愉快そうに笑うシーレ王子。

 「偽善だな」

 シーレ王子が、切夜の思いをバカにするかのように吐き捨てる。

 と、その瞬間――拝家の電話が、再び鳴り響いた。
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