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何かがいつもと違う日②

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 「おや?おはよう、切夜。そのおでこ、どうしたんだい?」

 切夜がダイニングの席に着くなり、そう声をかけてくる眼鏡の男性。

 彼は、切夜の父親のおがみ 守彦もりひこだ。

 ちなみに、職業は童話作家で主に部屋に籠って仕事をしている。

 「……別に、何でもないよ。ちょっとぶつけただけだし」

 妹や父親に心配されるのが苦手な切夜は、ふいと父親から視線を逸らした。

 と、そんな彼の額に――不意に、ぺたりと大きな絆創膏が貼られる。

 貼ったのは、今目の前にいる人物――彼の母親のおがみ ・好美よしみ・クリスティーナだ。

 彼女は、愛菜と同じ……ふわふわした金の髪を揺らして切夜に近付くと、絆創膏の上から優しく切夜の額の怪我に触れる。

 そうして、とても優しい声音で、

 「痛いの痛いの……パパに飛んで行っちゃえ」

 と、言い放った。

 瞬間、わざとらしく「うっ!」と呻き――何故か胸を押さえて苦しむフリをし始める父親。

 と、そんな父親の姿に、切夜の隣に座っていた少年が堪らずに吹き出した。

 「父さんったら、おっかしいの!だって、切夜の怪我はおでこだよ?何で胸を押さえてるのさ!」

 楽しそうに笑いながらそういうのは、おがみ ごう

 切夜の双子の兄弟だ。

 切夜は日英ハーフの母親譲りの金髪碧眼で、剛は父親にそっくりの黒髪黒目だが、これでも2人とも歴《れっき》とした一卵性双生児なのである。

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