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何かがいつもと違う日
しおりを挟む「うわぁぁぁー?!」
悲鳴を上げたまま、切夜は暗闇の中をひたすら落下していく。
と――、
ゴンッ!!
という鈍い音が響き渡ると同時、額に激しい衝撃を感じて切夜は目を覚ました。
「……んぁ?」
直ぐ目の前にあるのは、見慣れたカーペットの床だ。
(……何で、床がこんなに目の前に?)
焼けるように熱い額を擦りながら、切夜がゆっくりと身を起こしてみると――そこは、自分の部屋だった。
そうして、いつもはそこで自身が身を横たえている筈のベッドが、今は彼の真横にある。
(ああ……俺、もしかして、ベッドから落ちたのか?)
それで、派手に床で額を打ったのだろう。
(自分では、寝相が良い方だと思ってたんだけどな……)
まさか、この年になってベッドから落ちて額を強打してしまうとは。
(絶対に、あの変な夢のせいだ。……こんなこと、妹には言えないな)
恥ずかしいし、愛菜にはバレないようにしよう。
そう心に決めて、切夜が再度ベッドに潜り込もうとした時――。
カチャリと部屋の扉が開いて、妹の愛菜が顔を出す。
「にーちゃ、あさー。ごはん、できてるのー」
英国人と日本人のハーフである母親譲りの長い金髪を柔らかく揺らしながら、とてとてと部屋に入ってくる愛菜。
彼女は、ベッドに腰かけたままの切夜の隣にちょこんと座ると、そっと額に触れてきた。
「にーちゃ、おでこ……いたいいたい?」
幼くたどたどしい口調で、そう尋ねてくる妹。
そんな彼女に、切夜はゆっくり頭を振ってみせた。
「大丈夫。もう痛くないよ」
「よかったぁ」
切夜の言葉に、新緑の色の瞳を細め、柔らかく微笑む愛菜。
「心配してくれてありがとうな、愛菜」
切夜は優しくぽんぽんと愛菜の頭を撫でる。
そうして、その小さな手を握ると、一緒に食卓のある1階のダイニングへと降りていった。
換気の為、窓を大きく開けたままで――。
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