上 下
12 / 12

12.

しおりを挟む
玄関を出てすぐ、らいおっとは私を抱きしめた。

「よかった…本当に良かった…」

わーんと、らいおっとは泣いていた。すごく泪を流して。

「私も、約束、破っちゃった…ごめんなさい」

「いや、俺が悪いんだ。アイナをよく見ていなかった…。本当にごめんな」

私も悲しくなって泪を流す。お昼の真っただ中、二人抱き合って…。



5分くらい泣いていたと思う。

「ふ…ふぅ…大人がこんなに泣いてたらいかんな。よしよしアイナ。」

私も泣きやむ。泣きすぎて疲れてしまった。
ふわぁ…と、あくびが出てしまう。

「さすがに泣きすぎて俺も眠いわ。それにしても、久々にこんなに泣いたなぁ…ハハッ」

男の人が泪を流すのは時初めて見たかもしれない。しかも、こんなに長々と。私もたくさん泣いた。でも、今までの痛いとか、怖いとかの泪ではなく、悲しい、とか胸が苦しくなるような…。自分でもよくわかんないや。でも、今は暖かい気持ちでいっぱい。なぜなららいおっとがいるから。

「目が真っ赤だぁ。映画どうする?明日にするか?」

どうしよう。見に行きたいけど疲れがすごすぎて。私は首を横に振る。また今度行けばいいと思う。映画は待ってくれるし。らいおっとは何も言わずに歩き出す。歩いているときの揺れと、背中をポンポンと叩く心地よさで、いつの間にか私は眠っていた。




どれくらい寝たのだろう…。目を覚ますと、周りは真っ暗だった。ここは、ベッドの上だ。隣にはらいおっとがぐっすり眠っている。あんなにかっこいい顔が、寝顔になった途端あほみたいな顔になる。かわいいな。ほっぺをなでなでする。このもふもふ、ほんとにたまらない。

「んっ…フフッ。くすぐったいだろ。こら」

らいおっとに頭をつかまれわしゃわしゃされる。はうう。ちょっと強引だけど、やさしさたっぷりのなでなでが好きだ。

「ふわあ~、よく寝た。今は何時だ?7時くらいか。飯でも作るかぁ。アイナも来るか?」

「行く!」

らいおっとがニカッと笑って私の手を取る。なにかお手伝いできるかな…?今日はどんなご飯かな?すごく楽しみだ。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

18禁 R18 弟達のイケナイ遊び

BL / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:37

神の宿り木~ユーリの初恋~⦅完結⦆

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:16

狼と人間、そして半獣の

BL / 連載中 24h.ポイント:35pt お気に入り:117

鬼の住む屋敷に入ったらもう逃げられない

BL / 完結 24h.ポイント:63pt お気に入り:104

橋の向こうの獣人の国で貴方と。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:542

女の子の下着を着ける女の子 (統合しました)

大衆娯楽 / 連載中 24h.ポイント:63pt お気に入り:2

人外さんと恋をする〜狼さんは怖くない〜

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:46

性癖全開注意

BL / 連載中 24h.ポイント:390pt お気に入り:135

体育教師たちやお医者さまに特別なご指導をしてもらう短編集

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:198pt お気に入り:32

処理中です...