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~フィリス王妃視点~

結局、彼らが良かれとした事はわたくしを学院内で目立たせ敵を増やしただけ。

案の定、彼らが卒業してから一時的に止まっていた嫌がらせがまた始まってしまった。

わたくしが卒業するまでの2年間もこれに耐えなければなりませんの?




王太子殿下からは月に一度程度手紙と一緒にプレゼントが届く・・・意味が分かりませんわ。
それに、2人の子息からもお誘いの手紙が・・・もうほおっておいて欲しい。
体調不良を理由に断ればお見舞いに来ようとされますし、勉学に集中したいと言えば教えると言われ・・・結局、格上の相手からのお誘いですから無視することも出来ず何度か一緒にお出掛けはしましたが、わたくしとしてはせっかくの休日にこの状況を作った彼らに会いたくはありませんでした。





それでも一年は耐えましたわ。
でも、もう限界です。
自主退学も視野に入れて三年に上がり、新入生が入学してきました。

相変わらず嫌がらせは続いていました。
この日は去年卒業した令嬢の妹さんとその取り巻きに呼び出されました。
とうとう、下級生からもわたくしは蔑まれるのか・・・と情けなくて、悔しくて涙が浮かんできましたが、絶対に泣いたりしませんわ。
それがわたくしの出来る唯一の抵抗ですもの。

周りを令嬢達に囲まれて暴言の数々、わたくしの存在自体を否定する言葉・・・どうせ誰も助けてはくれない。いつもの事ですわ。と、溜め息を殺して時間が過ぎるのをひたすら待つ。

その時です。

『貴女たち何をしていますの?』

妖精かしら?
とても言葉では表せられない可憐で可愛らしい令嬢と、キツい顔立ちだけれどとても美しい令嬢、その2人。

『ねえ?これって虐めってやつかしら?』

『え?そんな事をする方がこの学院にいますの?』

?顔を見れば分かるじゃない。この人達とっても意地悪そうなお顔をしているでしょう?』

『まあ!怖い!わたくしもこの方々に虐められるのでしょうか?そんな方達とは今後御付き合いするのを控えなければなりませんわね』

『そうね。わたくしが虐められたと知ったら実家のが黙っていませんでしょうし』

『わたくしもですわ』

脅しとも取れる言葉にそれまで何か言い返そうとしていた令嬢達はの言葉で2人が誰だか分かったのか真っ青になってブルブル震えだしましたわ。
ちょっとだけいい気味だと思ったわたくしは悪くないと思いますの。

そこでやっと彼女たちが何者か分かりましたの。
隣国のリリアン王女と、王太子殿下の妹のライラ王女。

『さあ、行きましょう。フィリス様』

そのライラ王女がわたくしの名を呼んで手を差し伸べてきましたの。

『これからはわたくし達が貴女を守ってあげますからね。フィリス様のこの状況はどうせ気の利かない兄のせいなのでしょう?辛かったでしょう?もう、1人で我慢しなくても大丈夫ですわ』

その時のライラ様が伸ばしてくれた白く華奢な手が、わたくしを唯一この状況から救い出してくれると、根拠もなく信じられて思わず掴んでしまいましたの。

それは間違いではなく、その日から嫌がらせや呼び出しはピタリと止まりましたの。

2人の王女は高位貴族だろうが下位貴族だろうが関係なく誰に対しても平等で皆から慕われていて、『守ってあげる』と言ってくれていたそんな2人・・・特にライラ王女は兄である王太子殿下の、わたくしにとっては迷惑な行動を詫びてくれ、本当の姉のように慕ってくれましたの。
甘えてくれるライラ王女が本当に可愛くて、彼女の笑顔に癒され、閉ざしていた心が解放されていきましたの。
それから親しくなるほど、今までの嘲笑い、蔑むような眼差しから、羨望の眼差しを向けられるようになりましたの。

わたくしが卒業するまでの、たった一年のお付き合いでしたけれど、その頃にはとても大切な大切なになっていたの。

だから・・・ライラとずっと一緒にいたくて卒業パーティーに突然現れた王太子殿下のプロポーズを受け入れたの。

まさか、わたくしが卒業してからの2年間であの男とライラが結婚の約束をするほど親しくなっていたなんて・・・

もちろん何度も止めたわ。
でも聞き入れてくれることはなく、ライラはあの男と結婚してしまった・・・わたくしからライラを奪い去って行こうとするあの男を恨んだわ。

だってその結果が・・・


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