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「何だと?」

「何ですって!」

そりゃあそんな反応になるよな。
帰ってきてすぐに両親に今日聞いた話しを報告した。
ローガンとセナは言葉を発しなかったが、信じられない物を見たような驚愕した表情だ。

「だから陛下が戻ってくる前に少しでも情報を集めることは出来ないか聞いているんだ」

「・・・なるほど。それなら辻褄が合う・・・か・・・」

父上の考えはこうだ。
王妃は卒業パーティー会場の警備の配置や、カイルの作戦、使っていた影の動きを知っていた可能性が高いと。
そして王妃にも王妃専属の影が付いているそうだ。
・・・カイルの作戦も知り、警備の位置まで知っていたのならばカイルを監視していた影までが遺体となって発見されたのにも説明がつく。と・・・


確かにそうだ。
だが、なんの為に王妃がミラを攫ったんだ?
オズワルドはデザートまで付いた食事を運んでいたと言っていた。
ちゃんとした食事を与えられているという事は、雑には扱われていないと思う・・・そうであって欲しいと願う。

「王妃が誰かをているのは間違いないとして、それが本当にミラかどうかは陛下が帰ってくるまで確認のしようがないってことよね?」

そこが問題なんだよ!
一刻も早く確認だけはしたい。
この一ヶ月以上、手掛かりひとつ見つかってないんだ。
生死だけでも知りたい!

「そうだ。あそこは陛下以外の男は部屋に入れない」

「じゃあ、王妃と影はどうやって連絡を取り合っていたんだよ!」

「・・・王家は随分昔に作られた魔道具が多数保管されているんだ。・・・便利な物から危険な物までな」

「ええ、わたくしの実家にも色々あったわね」

忘れがちだが母上も隣国の元王女だったな。

昔はともかくが発展してから魔術や魔法といったものは廃れてきたと聞いている。
だが、人々から魔力が無くなった訳ではない。
暑い季節、寒い季節など手をかざすだけで快適に過ごせる便利な道具、離れた場所とも会話ができる道具、小さな物から大きな物まであげればキリがない程開発された。
マリアのように人に影響を与える能力の持ち主には無意識で使ってしまわないように、施設で制御を教えられるのだが・・・無駄に終わることもある。
結局は本人次第ってことだ。

はぁ・・・このまま何も手立てがないまま陛下が戻るのを待つしかないのか?

陛下の帰りを待つ間も俺は何時ものように王宮に通った。
今度は王妃の行動を調べるためだ。
まぁ、王宮勤めの侍女が王妃の情報をペラペラと話す訳もなく、話さないクセに俺に色目を使う女はマシな方で、撓垂れ掛かり誘ってくる女までいた。
・・・イライラさせる。




そして待ちに待った陛下が帰国した。


「兄上、お疲れのところ申し訳ございません」

「よい。余程の話しがあるのだろう?・・・それでまだミラは見つからないのか?」

「そのミラの居場所について御相談がございます」

この部屋には俺と父上、陛下にカイル、オズワルドの5人がいる。
陛下への説明は父上がするという事は最初から決めていた。
俺だと気持ちが先走るばかりで上手く話せないだろう事と、陛下とは伯父と甥の関係とはいえ今の俺では不敬罪で捕らわれかねないと・・・
確かに冷静に話せる自信はないが当然だろ?
早く!早く!早く!ミラを探しに行かせてくれ!

父上の話しを聞くにつれて陛下の顔が王妃を疑う俺たちへの怒りからなのか赤く怒りの形相になっていく。

「な、なんだと?王妃がか?間違いないのか?」

「ですから、それを確認をする為に王妃宮への立ち入りを許可して下さい!」

「お願いします」

父上と俺は頭をこれでもかってぐらい下げた。

「・・・・・・許可しよう。だが、私も一緒に行く」




執務中の王妃に連絡をすることなく、陛下を先頭に父上と俺の3人で王妃宮に向かうことになった。

今すぐにでも走り出したい衝動を必死に抑えた。

頼む、頼む、頼む、そこに居てくれミラ!
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