上 下
44 / 62

44

しおりを挟む
~ミラ視点~

気が付いたら可愛らしい天井に天使の絵が描かれている天幕があるベッドに寝かされていた。

部屋を見渡しても誰もいないし物音一つしない。
不思議に思いながら起き上がるとジャラっと、普段聞き慣れない金属の音がした。
首に違和感を感じ触れてみると・・・首輪のような物が付いていた。さらにそこからあまり重さの感じない細い鎖が部屋の端伸びている。
細いといえ頑丈で何度も引っ張てみても外れそうにない。

手足は自由だ。
嫌な予感に扉まで行こうとしたら鎖が届かない。
それならと、カーテンを開けると壁?
・・・では入口は扉だけ?

怖い・・・ここは何処なの?
誰が私をこんな所に連れてきたの?
ここで何をされるの?
頭に最悪の言葉が浮かぶ"誘拐・監禁・暴行・・・凌辱"
その恐怖に悲鳴をあげそうになる。

ダ、ダメ!こんな時こそ冷静にならないと。
バクバクする心臓を落ち着けるため何度も深呼吸をする。
大丈夫よミラ。
きっとデューク達が助けに来てくれる。
大丈夫、大丈夫、落ち着いて。落ち着くのよミラ。
暴力なら・・・痛みなら慣れているでしょう?
何があっても凌辱以外なら耐えられるわ。
繰り返し自分に言い聞かせる。

少し落ち着いたところでもう一度部屋をゆっくり見渡す。
大きな本棚に、ドレッサー、ソファセットに私が寝かされていたベッド。
その全てが白で統一されていて、カーテンや絨毯は薄いピンク色。
どちらかと言えば若い女性が好む部屋だと思う。
ただ学生なら部屋にあるはずの勉強机や椅子はない。
本棚にも教科書や辞書は一冊もなく、題名だけ見れば恋愛小説ばかりがギッシリ。
トイレや浴室もついている。

一体誰の部屋なんだろう?

やはり出入口は一箇所だけ、鎖はそこまでは届かないけれど、トイレや浴室には届くし何なら部屋の中なら自由に動けるみたい。

・・・・・・。
もう一度、思い出してみよう。





・・・私はオズ兄様たちの卒業パーティーに参加していたはず。
そこでデュークと踊ったわ。
楽しかったな。
突然窓ガラスの割れる音が聞こえ、ホールが暗闇になったところまでは覚えている。
それからどのくらい時間が経ったのだろう?
部屋には時計がないからここに連れてこられたのが、今日なのか昨日なのかそれとも何日も経っているのか・・・分からない。



デュークは黙っていたらは冷たい見えるくらい整った顔で、心を許せる人以外の人にはあまり愛想が良くない。
そんなデュークが幼い頃から私の事を一番に大切にしてくれる。
私も物心ついた時にはデュークのことが大好きだった。 

幸せだったの。
この幸せがずっと続くと思っていた。
あと一年でデュークのお嫁さんになるはずだったのに・・・

卒業パーティー・・・前回はこの日に私は死んだ。
運命は変えられないの?
私は今日死ぬ運命なの?





前回は本当に辛かった。
お母様が亡くなってからデューク達に会えなくなり、誰からも・・・そう、お父様すら私を気にかけてくれなかった。
後妻には暴力を振るわれ、その連れ子のエルザには馬鹿にされ、学院では教師も生徒たちにも蔑まれていた。
・・・最後は男たちに凌辱されると分かった時に自ら死を選んだ。

でも、今回はデューク達が助け出してくれた。
義母やあの時の使用人たちとは二度と会うことはなくなったし、私を顧みらなかったお父様とは縁を切れた。
エルザも孤児院に入れられていたからか、前回よりも大人しい。
前回ひとりぼっちだった学院ではデュークやセナがずっとずっと側にいくれている。
それにお義父様とお義母様、公爵家のみんなが私を大切にしてくれる。

目を瞑ればみんなの笑顔が浮かんでくる。
・・・帰ろう。必ず生きてここから帰ろう。
誰が私をここに閉じ込めたのか『カチャ』

え?待って!なんで?なんで?何であなたが?
問いかけようとしたのに声がでない!
口は動くのに声が出ないなんて何をされたの?


ノックもなく部屋に入ってきた人物は満面の笑みで『会いたかった』と言って私を抱きしめた・・・。





私はこの日からの都合のいい人形になった・・・
ああ心が死んでいくようだ・・・

デューク早く助けに来て。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴方へ愛を伝え続けてきましたが、もう限界です。

あおい
恋愛
貴方に愛を伝えてもほぼ無意味だと私は気づきました。婚約相手は学園に入ってから、ずっと沢山の女性と遊んでばかり。それに加えて、私に沢山の暴言を仰った。政略婚約は母を見て大変だと知っていたので、愛のある結婚をしようと努力したつもりでしたが、貴方には届きませんでしたね。もう、諦めますわ。 貴方の為に着飾る事も、髪を伸ばす事も、止めます。私も自由にしたいので貴方も好きにおやりになって。 …あの、今更謝るなんてどういうつもりなんです?

きっとやり直せる。双子の妹に幸せを奪われた私は別の場所で幸せになる。

しげむろ ゆうき
恋愛
 ある日、問題児である双子の妹が妊娠をしたと知らされる。  しかも、相手は私の婚約者らしい……。  すると、妹を溺愛する家族は容姿が似ている妹と私を交換しようと言いだしたのだ。  そして問題児の妹になった私は家族の縁を切られ追い出されてしまったのだった。  タイトルが全く思いつかず一時間悩みました(笑) ※8話ホラー要素あり。飛ばしても大丈夫です。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

愛しているからこそ、彼の望み通り婚約解消をしようと思います【完結済み】

皇 翼
恋愛
「俺は、お前の様な馬鹿な女と結婚などするつもりなどない。だからお前と婚約するのは、表面上だけだ。俺が22になり、王位を継承するその時にお前とは婚約を解消させてもらう。分かったな?」 お見合いの場。二人きりになった瞬間開口一番に言われた言葉がこれだった。 初対面の人間にこんな発言をする人間だ。好きになるわけない……そう思っていたのに、恋とはままならない。共に過ごして、彼の色んな表情を見ている内にいつの間にか私は彼を好きになってしまっていた――。 好き……いや、愛しているからこそ、彼を縛りたくない。だからこのまま潔く消えることで、婚約解消したいと思います。 ****** ・感想欄は完結してから開きます。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

初恋の幼馴染に再会しましたが、嫌われてしまったようなので、恋心を魔法で封印しようと思います【完結】

皇 翼
恋愛
「昔からそうだ。……お前を見ているとイライラする。俺はそんなお前が……嫌いだ」 幼馴染で私の初恋の彼――ゼルク=ディートヘルムから放たれたその言葉。元々彼から好かれているなんていう希望は捨てていたはずなのに、自分は彼の隣に居続けることが出来ないと分かっていた筈なのに、その言葉にこれ以上ない程の衝撃を受けている自分がいることに驚いた。 「な、によ……それ」 声が自然と震えるのが分かる。目頭も火が出そうなくらいに熱くて、今にも泣き出してしまいそうだ。でも絶対に泣きたくなんてない。それは私の意地もあるし、なによりもここで泣いたら、自分が今まで貫いてきたものが崩れてしまいそうで……。だから言ってしまった。 「私だって貴方なんて、――――嫌いよ。大っ嫌い」 ****** 以前この作品を書いていましたが、更新しない内に展開が自分で納得できなくなったため、大幅に内容を変えています。 タイトルの回収までは時間がかかります。

アマレッタの第二の人生

ごろごろみかん。
恋愛
『僕らは、恋をするんだ。お互いに』 彼がそう言ったから。 アマレッタは彼に恋をした。厳しい王太子妃教育にも耐え、誰もが認める妃になろうと励んだ。 だけどある日、婚約者に呼び出されて言われた言葉は、彼女の想像を裏切るものだった。 「きみは第二妃となって、エミリアを支えてやって欲しい」 その瞬間、アマレッタは思い出した。 この世界が、恋愛小説の世界であること。 そこで彼女は、悪役として処刑されてしまうこと──。 アマレッタの恋心を、彼は利用しようと言うのだ。誰からの理解も得られず、深い裏切りを受けた彼女は、国を出ることにした。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...