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俺たちがミラの部屋に入ると、真っ青な顔で震えながら目に涙を浮かべたミラが・・・

「・・・リューク」と、心細そうに俺を見上げながらそう呼んだ。

様子がおかしい。
最近は俺のことをデュークと呼んでいたのにどうしたんだ?

「ミラ、何があったの?」

「お、伯母様」

!!!

まさか!?
ミラの記憶が・・・?

「違うわ。わたくしはミラのお義母様よ」

母上はミラの手を握り安心させるように微笑んでそう言った。

「そ、そうだよね?私は・・・私はティタニア公爵家の養子に・・・」

「そうだぞ。そして私がミラのお義父様だ」

「!!!デュークは私の婚約者・・・だよね?」

ああ、これは間違いない。
ミラは思い出してしまった・・・悲惨な前回を。

「そうだよ。ミラと俺は婚約している。ミラは俺のになるんだよ」

「うん、うん・・・よかった。・・・デューク大好きだよ」

こんな時だけどミラが可愛すぎる!

「お、俺も!俺もミラが大好きだ!」

「あら?わたくしは?」

「おいおい私もだろ?」

ミラは泣き笑いの顔で「2人とも大好き!」って抱きついていた。

父上も母上も、きっとローガンやセナもミラが前回の記憶を思い出したことに気付いている。

前回の当事者であるミラに詳しく聞ければ・・・いや、無理だな。
俺たちが調べた内容だけで、怒りで頭がどうにかなってしまいそうだったのに、それを10年も辛い思いをしてきたミラに聞くのは酷だな。

このまま前回を思い出すことなく幸せにしてやりたかったのに・・・
アイツらが・・・アイツらのせいだ。
絶対にタダじゃ済まさねぇ。



ミラが落ち着いたところでソファに移動した。
お茶を震える手で一口飲んでからミラが話しはじめた。

やはり・・・思い出していた。
ほとんど俺たちが前回調べた内容と一致した。
ただ、他人から聞かされて知った内容よりも、その時のミラの心境や痛みを本人から直接聞かされるのは辛いものがあった。

ローガンとセナも歯を食いしばって黙って聞いていた。

俺たちが復讐したことは内緒にして、ミラの墓の前でライラ叔母上の最後の言葉を伝えた。

『じゃあ、次こそはミラを守ってあげて。お願いよ。』

「お母様・・・」

ポロポロと涙を流すミラを母上はずっと抱きしめていた。

だから、俺たちは目覚めたと同時にミラをボイル侯爵家から助け出したんだと・・・二度目は必ずミラを守ると誓って。

ミラの父親は縁を切らせた。
そして奴は子爵となり、我が家とは爵位に大きな差があり会うことはほぼ無いだろうこと。

義母は鉱山送り。
元と同じ娼婦仕事をしていること。

エルザは孤児院に送られたが、何の因果かカトラーレ子爵家に養女として迎えられ同じ学院の生徒として目の前に現れた。

ボイル侯爵家に雇われていた使用人たち全てと、家庭教師も鉱山送り。出てくることは二度とない。

「明日、あの生徒たちの処罰について陛下に会ってくる。何かミラから伝えたいことはないかい?」

「ミラ?どうしたの?震えているわ」

震えている?

「どうした?何でも言っていいんだよ」

「あ、あの信じてもらえるか分からないけれど・・・」

ミラの話したのはカイルの事だった。

まだ両親には今日オズワルドから聞いた話しをしていなかった。

驚愕する二人に俺は小さく頷き、本当だと目で伝えた。
そりゃあ、信じられないよな。
品行方正で頭脳明晰、さらに眉目秀麗。
浮いた話しも一度もない。
国民からの人気もある。
完璧な王子様だ。

23歳のカイルを狙っている令嬢は数知れず。
娘を嫁がせたい貴族も腐るほどいるだろう。
カイルには婚約者がいないからな。

それにしても、ミラの頬や指を舐めるだなんて、ただの従兄妹にすることではない。

今回もカイルがミラを狙っているとしたら・・・?
マリアよりも厄介だ。
カイルは俺たち以上に権力を持っているからな。

気付けばもう夜中だった。
まだ少しだけ不安そうなミラは母上と寝ることになった。

「お義母様ありがとう。ふふっ、久しぶりで少し嬉しい」

ハニカミながらやっと笑顔を見せたミラに俺たちも癒され安心した。



そのまま恒例の風呂に2人で入り、その後はミラの部屋で寝るそうで俺たちはミラの部屋をあとにした。

そしてまた父上の執務室に戻り対策を練ることにした。


その日、俺たちの話し合いは明け方まで続いた・・・
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