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暴力的で残酷な描写があります。
苦手な方は読み飛ばしてください。
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~ミラ視点~
そこからは辛いだけの日々を学院でも過ごすことになった・・・。
期待していたオズ兄様に一切顧みられない私は、学院で名ばかりの婚約者だと嘲笑われ、蔑まれ、虐げてもいい人間と認識されたようだ。
それは教師にも言えた。
オズ兄様の隣にはいつもエルザがいた。
そのエルザの後ろでいつもニヤニヤと私を見ている名前も知らない女子生徒。
教室にいる時も、移動教室の時も、昼食の時間も、目立たないように人目を避け息を潜めていた。
邸にも、学院にも居場所がない。
どこに行っても私は嫌われ者。
何度も逃げ出そうとした。
逃げてティタニア公爵家に、伯父様と伯母様に助けを求めようとした。
でも、義母に命じられた御者の監視が厳しく王子妃教育で王宮に通うのにもついてきた。
『自分のためにも余計な事を言うなよ』と・・・
脅されても国王の伯父様に一言『助けて』と言えばよかったのだ。
でも、この時には私もおかしくなっていたのだろう。
オズ兄様の婚約者を私からエルザにと変更を王家に申し出ても変えられない事に義母は怒り、暴力に鞭を使われるようになっていた。
腕も、足も、胸やお腹にも鞭の跡が消える日はなかった。
酷いのは背中・・・見えなくても分かった。
常に背中は熱を持っていたし、何より執拗に打たれていたから・・・怖かった、本当に義母が怖かった。
でも私にも意地があった。
絶対に泣かないと。
何度鞭を打たれても平気な顔をしてやった。
それでも気を失ったことは何度もあった。
誰も助けてはくれない。
だから、もう何もかもを諦めた。
そして2年に上がってから噂が流れるようになった。
話し相手のいない私には教えてくれる人はいないが、聞こえるように噂をするから嫌でも耳に入ってくる。
『エルザ様を家で虐げている』
『エルザ様のものを取り上げる』
『エルザ様とオズワルド殿下の仲に嫉妬して暴力を振るっている』
『エルザ様を噴水に突き飛ばした』
『エルザ様を階段から突き落とした』
すべて嘘だ。
全部、エルザと義母が私にしたことだ。
それに、学院の生徒たちにやられたことだ。
でも言い訳はしない。
・・・どうせ無駄だから。
誰も私の声を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
何をされても、何を言われても、何も言い返さない。
されるがまま。言われるがまま。抵抗もしない。
そして私は貝になった・・・。
唯一私に優しくしてくれたのはカイル兄様だった。
王子妃教育のため、週に一度か二度通う王宮で声をかけてくれた。
『無理をしていないかい?』
『分からないところはないかい?』
『私とお茶をしてリラックスしようか?』
昔から7歳年上のカイル兄様は私を本当の妹のように大切にして甘やかしてくれていた。
頼りがいのある兄として・・・だから信じたの。
・・・信じてしまったの。心が弱っていたのね。
御者は侍従のように王宮では振舞っていたが、さすがに第一王子の執務室には入れない。
だから私は自分の置かれている状況をカイル兄様に話したの。
恥ずかしかったけれど背中の傷も見せたわ。
すごく怒ってくれて、何とかすると言ってくれた。
でも、何日経っても何も変わらなかった。
『もう少し証拠を集めよう』
『必ず助けてあげるから』
信じていた。
本当に信じていたの。
あの時までは・・・
ある日、いつものようにカイル兄様の執務室に呼ばれた。
その頃にはカイル兄様の側が私の一番落ち着ける場所になっていた。
だからだろう。
カイル兄様にお仕事が終わるのを待っているうちに眠ってしまったのだ。
夢うつつの中でカイル兄様の声が聞こえた。
髪を撫でられているようだ。
『君には私しかいないと早く気付いて。私のこと以外考えられなくなればいいよ』
最初は何を言っているのか分からなかった。
『君をこのまま孤独にすれば私に依存するしかなくなるよね。・・・ね?ミラ?』
え?・・・このまま孤独って?
カイル兄様は私を助けてくれる気がないってこと?
それに依存って?
『はぁ~ミラ愛しているよ』
鳥肌が立った。
だってカイル兄様は私の頬を舐めたのだ。
震えそうになる身体を寝返りをうつ振りをして耐えた。
その間も私の手首や指を舐め続けられ、初めてカイル兄様を気持ち悪いと感じた。
『誰の目にもつかないミラだけの部屋を用意しているよ。気に入ってくれるといいな。そこで君は私だけの物になるんだ。・・・ミラは誰にも渡さないよ。たとえ弟だろうがデュークだろうがね』
カイル兄様は私に何をするつもりなの?
私はずっと彼に性の対象として見られていたと思うと嫌悪感で吐き気がした。
その日からカイル兄様の前で気を抜くのをやめた。
よく考えれば分かったことだ。
カイル兄様に状況を話して改善されない事がすでにおかしかったのだ。
もう本当に誰もいなくなった・・・。
だからね、オズ兄様に国外追放って言われて安心したの。
これでボイル侯爵家からも、この学院からも、カイル兄様からも逃げられると思ったから嬉しかったの。
馬車に乗せられて知らない国に運ばれているというのに少しワクワクしたのがいけなかったのかな?
それとも、私は知らないうちに誰かに殺したいほど憎まれていたのかな?
『悪いな。ここまで運んでやったんだ。ご褒美を貰わないとな』
騎士だと思っていた男たちが襲いかかってきた。
穢されるぐらいなら自死を選ぶだけのプライドは、まだ私の中に残っていた。
自分の心臓に剣を刺すのはまったく怖くなかった。
コレで楽になれる・・・そう、これでやっと・・・
それでも一つだけ後悔があった。
最後にリュークに会いたかったな。
伯父様が背が高いからきっとリュークも高くなっているのでしょうね。
伯母様に似ているから、凄い美男子になってモテモテなのでしょうね。
きっと素敵になっているわ。
会いたい。
最後にリュークに会いたい。
『ミラ!』
ああ神様が私の願いを叶えてくれたのかな?
薄れゆく意識の中ボヤけているけれど、私の知っている声より低くなった私の大好きなリュークが何度も私の名前を呼んで抱きしめてくれた。
『リュー・・・会い・・たかった』
もう思い残すことはないわ。
そして私は意識を手放したの・・・
そうよ。
私は確かに一度死んだのよ。
今の私は・・・私の知っている状況と全然違う。
でも絶対にコレは夢なんかじゃない。
前回の記憶に確信を持った時。
その時勢いよくドアが開いた。
「ミラ!」
慌てて入ってきたのはデューク、お義父様、お義母様。
ローガンさん、それにセナさん。
今の私の大切で大好きな家族だった。
苦手な方は読み飛ばしてください。
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~ミラ視点~
そこからは辛いだけの日々を学院でも過ごすことになった・・・。
期待していたオズ兄様に一切顧みられない私は、学院で名ばかりの婚約者だと嘲笑われ、蔑まれ、虐げてもいい人間と認識されたようだ。
それは教師にも言えた。
オズ兄様の隣にはいつもエルザがいた。
そのエルザの後ろでいつもニヤニヤと私を見ている名前も知らない女子生徒。
教室にいる時も、移動教室の時も、昼食の時間も、目立たないように人目を避け息を潜めていた。
邸にも、学院にも居場所がない。
どこに行っても私は嫌われ者。
何度も逃げ出そうとした。
逃げてティタニア公爵家に、伯父様と伯母様に助けを求めようとした。
でも、義母に命じられた御者の監視が厳しく王子妃教育で王宮に通うのにもついてきた。
『自分のためにも余計な事を言うなよ』と・・・
脅されても国王の伯父様に一言『助けて』と言えばよかったのだ。
でも、この時には私もおかしくなっていたのだろう。
オズ兄様の婚約者を私からエルザにと変更を王家に申し出ても変えられない事に義母は怒り、暴力に鞭を使われるようになっていた。
腕も、足も、胸やお腹にも鞭の跡が消える日はなかった。
酷いのは背中・・・見えなくても分かった。
常に背中は熱を持っていたし、何より執拗に打たれていたから・・・怖かった、本当に義母が怖かった。
でも私にも意地があった。
絶対に泣かないと。
何度鞭を打たれても平気な顔をしてやった。
それでも気を失ったことは何度もあった。
誰も助けてはくれない。
だから、もう何もかもを諦めた。
そして2年に上がってから噂が流れるようになった。
話し相手のいない私には教えてくれる人はいないが、聞こえるように噂をするから嫌でも耳に入ってくる。
『エルザ様を家で虐げている』
『エルザ様のものを取り上げる』
『エルザ様とオズワルド殿下の仲に嫉妬して暴力を振るっている』
『エルザ様を噴水に突き飛ばした』
『エルザ様を階段から突き落とした』
すべて嘘だ。
全部、エルザと義母が私にしたことだ。
それに、学院の生徒たちにやられたことだ。
でも言い訳はしない。
・・・どうせ無駄だから。
誰も私の声を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
何をされても、何を言われても、何も言い返さない。
されるがまま。言われるがまま。抵抗もしない。
そして私は貝になった・・・。
唯一私に優しくしてくれたのはカイル兄様だった。
王子妃教育のため、週に一度か二度通う王宮で声をかけてくれた。
『無理をしていないかい?』
『分からないところはないかい?』
『私とお茶をしてリラックスしようか?』
昔から7歳年上のカイル兄様は私を本当の妹のように大切にして甘やかしてくれていた。
頼りがいのある兄として・・・だから信じたの。
・・・信じてしまったの。心が弱っていたのね。
御者は侍従のように王宮では振舞っていたが、さすがに第一王子の執務室には入れない。
だから私は自分の置かれている状況をカイル兄様に話したの。
恥ずかしかったけれど背中の傷も見せたわ。
すごく怒ってくれて、何とかすると言ってくれた。
でも、何日経っても何も変わらなかった。
『もう少し証拠を集めよう』
『必ず助けてあげるから』
信じていた。
本当に信じていたの。
あの時までは・・・
ある日、いつものようにカイル兄様の執務室に呼ばれた。
その頃にはカイル兄様の側が私の一番落ち着ける場所になっていた。
だからだろう。
カイル兄様にお仕事が終わるのを待っているうちに眠ってしまったのだ。
夢うつつの中でカイル兄様の声が聞こえた。
髪を撫でられているようだ。
『君には私しかいないと早く気付いて。私のこと以外考えられなくなればいいよ』
最初は何を言っているのか分からなかった。
『君をこのまま孤独にすれば私に依存するしかなくなるよね。・・・ね?ミラ?』
え?・・・このまま孤独って?
カイル兄様は私を助けてくれる気がないってこと?
それに依存って?
『はぁ~ミラ愛しているよ』
鳥肌が立った。
だってカイル兄様は私の頬を舐めたのだ。
震えそうになる身体を寝返りをうつ振りをして耐えた。
その間も私の手首や指を舐め続けられ、初めてカイル兄様を気持ち悪いと感じた。
『誰の目にもつかないミラだけの部屋を用意しているよ。気に入ってくれるといいな。そこで君は私だけの物になるんだ。・・・ミラは誰にも渡さないよ。たとえ弟だろうがデュークだろうがね』
カイル兄様は私に何をするつもりなの?
私はずっと彼に性の対象として見られていたと思うと嫌悪感で吐き気がした。
その日からカイル兄様の前で気を抜くのをやめた。
よく考えれば分かったことだ。
カイル兄様に状況を話して改善されない事がすでにおかしかったのだ。
もう本当に誰もいなくなった・・・。
だからね、オズ兄様に国外追放って言われて安心したの。
これでボイル侯爵家からも、この学院からも、カイル兄様からも逃げられると思ったから嬉しかったの。
馬車に乗せられて知らない国に運ばれているというのに少しワクワクしたのがいけなかったのかな?
それとも、私は知らないうちに誰かに殺したいほど憎まれていたのかな?
『悪いな。ここまで運んでやったんだ。ご褒美を貰わないとな』
騎士だと思っていた男たちが襲いかかってきた。
穢されるぐらいなら自死を選ぶだけのプライドは、まだ私の中に残っていた。
自分の心臓に剣を刺すのはまったく怖くなかった。
コレで楽になれる・・・そう、これでやっと・・・
それでも一つだけ後悔があった。
最後にリュークに会いたかったな。
伯父様が背が高いからきっとリュークも高くなっているのでしょうね。
伯母様に似ているから、凄い美男子になってモテモテなのでしょうね。
きっと素敵になっているわ。
会いたい。
最後にリュークに会いたい。
『ミラ!』
ああ神様が私の願いを叶えてくれたのかな?
薄れゆく意識の中ボヤけているけれど、私の知っている声より低くなった私の大好きなリュークが何度も私の名前を呼んで抱きしめてくれた。
『リュー・・・会い・・たかった』
もう思い残すことはないわ。
そして私は意識を手放したの・・・
そうよ。
私は確かに一度死んだのよ。
今の私は・・・私の知っている状況と全然違う。
でも絶対にコレは夢なんかじゃない。
前回の記憶に確信を持った時。
その時勢いよくドアが開いた。
「ミラ!」
慌てて入ってきたのはデューク、お義父様、お義母様。
ローガンさん、それにセナさん。
今の私の大切で大好きな家族だった。
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