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ミラは濡れた身体のまま眠ってしまったが、侍女たちが起こさないように着替えさせてくれたようだ。

ミラの寝顔を見ていると、あの光景が思い起こされた。
ミラを男二人がかりで押さえつけていた・・・
今でも頭に血が上りそうになる。

学生だからと許されることでは無い。
一歩間違えたら殺人になる事もアイツらは分からかなったのか?
集団心理というものなのか、何をしてもってやつか?

今回のことは、謹慎や停学で済まないし、済ますつもりもない。
ここで、奴らを排除しないと調子に乗ってミラに対する仕打ちに拍車がかかるだろう。

・・・結局、ミラがひとりぼっちじゃなくても、公爵子息の俺が側にいても、アイツらは同じなんだな。
だったら・・・いらないよな?



コンコンとドアの叩く音と同時に母上が入ってきた。

「ローガンとセナが帰ってきたわ。2人から何があったのか詳しく話を聞きましょう?」

悲しげな表情でミラの髪を撫でなからそう言った。

無言で頷いてミラの事を侍女に任せて父上の執務室に向かった。
部屋には父上、ローガン、セナが難しい顔をして集まっていた。

まずはセナからだ。

俺を待つ間いつものカフェに向かっている時に、前から女子生徒の集団が来たそうだ。
ミラとセナは端によって道をあけたが、その中の一人が目の前で転んでミラに足を引っ掛けられたと言い掛かりを付けてきたと・・・

示し合わせた様に『酷い』『最低』『謝れ』と非難され、この卑怯な令嬢たちに『一人で転んで謝罪を求めるなど、どちらが最低なのか』と口論となりかけた所に男子生徒がこれまた集団でやってきたと・・・

簡単に言うと、女子生徒たちの言い分を信じたその中の男の1人が謝れと無理やり頭を下げさせようとミラに触れようとしたのをセナが阻止した事で、男たちがセナを取り囲んで乱闘になったと・・・

その内の1人がカバンを振り上げた時に中から分厚い本が飛び出し避けきれず頭に当たり、一瞬クラりとよろけた所を取り押さえられ、ミラを引き摺るようにして噴水に連れて行って謝れと何度も水の中に頭を押さえ込んだと・・・

その騒ぎに他の生徒たちも集まりはじめ止める者が居ないどころか、野次が飛び交ったと・・・

そこへ俺が戻ってきたと。



次は聞き取りをしたローガンだ。

その場にいた生徒たちは野次馬も含め1人残らず空き教室に集められ教師が手分けして1人ずつ聞き取りを行ったと。

今回の切っ掛けとなった集団の女子生徒たちは、ローガンの追求にも口を割らなかったそうだが、目撃者の情報から"ミラ様にぶつかっていなかった"と証言されると、今度は泣きながら『悔しかった』『痛い目に合わせたかった』『評判を落としたかった』など、訳の分からないことを述べたそうだ。

元々、俺を独占しているミラのことはよく思っていなかったらしいが、手紙の件から男子生徒の間で同情されるミラが疎ましかったらしい。

まあ、その女達の中に何人かは俺を思っていた者がいたらしいが・・・嫉妬か。

(俺たちは婚約者同士だ。
お互いを独占して何が悪い!)

そして、男たちが暴力に訴えたのは小柄なセナにねじ伏せられて野次馬も集まり引くに引けなくなったと・・・

ミラを噴水に連れて行き、頭を押さえつけていた男二人の言い分は『悪者を退治するヒーロー気分』だったと・・・

(何がヒーローだ!)

すべての聞き取りが終わって、誰に手を出したのか学院長が教えたそうだ。



「君たちは王姪であり、元王女の娘に手を出したのですよ。この事は国王陛下にも報告します。各自処罰が決まるまで自宅で謹慎していなさい」

その言葉に真っ青になる者、震えだす者、泣き崩れる者様々だったらしい。

だからか・・・ひっきりなしに我が家に訪問者が来ていたのは。

今さら謝ったところでもう遅い。
そんな時間はとっくに過ぎたんだ。

すべて追い返しましたと、執事長が胸を張って言っていた。

「明日、朝一番で陛下と学院長と今回の関係者の処罰を相談する手筈になっている」

「甘い処罰は必要ないわよ。その子達は2も同じことをしたのだから」

分かっていると、父上が頷いたと同時にミラの悲鳴が聞こえた。

俺たちは一斉にミラの部屋へ向かって走り出した。
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