上 下
13 / 62

13

しおりを挟む
~マリア・フィガロ伯爵令嬢視点~



きた、キタ、来た、来た、来たーーーーー!

なにあの子、ウチのクラスに編入してきたエルザじゃない!
一目見たときから怪しいと思っていたのよね!
小柄で華奢だし、か弱そうで守ってあげたくなる雰囲気だし、艶やかな黒髪に黒い大きな目。
エルザを見たクラスの男たちも色めきだっていたもの。



私が密かに狙っているデュークの婚約者ミラ。
彼女を悪役令嬢に仕立てて孤立無援にしようと計画していたその義妹って!出来すぎだわ!笑うわーー

もう、まさに王道!
天真爛漫で、素直で、笑顔が似合う令嬢のヒロイン=エルザ。
下位貴族だけど、その魅力で攻略対象者たちをメロメロにするんでしょう?

やっぱり!やっぱりここは乙女ゲームか小説か何かの世界なのよ!

入学してからヒロインらしき人を探してもいなかったはずだわ。
遅れて登場するなんて、まさにヒロインじゃない!

今日の騒ぎでオズワルド殿下に庇われて、ここから王子様と少しづつ親しくなって行くのね。
王子様の側には宰相の息子や、騎士団長の息子もいるはずよね!

うふふふふ・・・私はコレを待っていたのよ!

あとは私がを使ってエルザと王子様を結ばれるように後押しすれば・・・

後押しすれば・・・あれ?何かおかしくない?

王道だと、王子様との間に障害になるのは婚約者(悪役令嬢)の存在のはずなんだけど・・・オズワルド殿下には婚約者がいない・・・障害があるとすれば身分の差ぐらい。

デューク様の婚約者の立場にいるミラには、ヒロインを見つけ次第、冤罪だろうが何かしらミラの仕業に見せかけて嵌めるつもりだったけれど・・・

最初の予定ではヒロインの後押しをして、そのお零れの二番手の男を頂くつもりだったけれど・・・

私の好みのど真ん中のデューク様を見つけた時から、どんな卑怯な手を使ってでも彼を手に入れようと思った。なのにミラの存在がそれを邪魔をした。
だから、ミラを悪役令嬢に仕立てて嵌めるつもりだった。

でも、いつ見てもミラの側にはデューク様がいて、デューク様がいない時にはあのチビがミラの側にいて離れないから嵌めるのにも隙がない。

でもミラを悪役令嬢にするには・・・婚約者のデューク様にエルザを接近させないと嫉妬や虐めなんてする理由はないよね。

それに、デューク様とミラを引き離し、彼を私のモノにするのにミラは邪魔だけど、エルザって必要?
もし、デューク様がエルザに本気になってしまったら本末転倒だわ。

男に好かれるヒロインの仕草や立ち回りを伝授してあげるから、エルザは私の指示通り動けばいいの。
貴女はオズワルド殿下で満足しなさい。




彼自身にが使うことが出来たら、確実に落とせる自信ならあるのに・・・

今日までの一年間、ずっとデューク様を観察していた。
どの角度から見ても完璧な男。

頭脳明晰で、公爵家嫡男という地位、鍛えられ引き締まった男らしい身体、自分の行動にも言動にも自信を持っている男。
そして、とびきりのイケメン!
ゲームで言うなら"隠れキャラ"ってやつよね。
間違いないわ!

あんな魅力的な男は、前世を入れても出会ったことがない。

彼を知れば知るほど私のモノにしたくなった。

あの子のように彼と話したい。
あの子のように彼と手を繋ぎたい。
あの子のように彼に見つめられたい。

私にも笑いかけて欲しい。

それには邪魔なミラは排除しないと!





前世の私は普通よりは少しだけ可愛くなかったけれど、今世の私なら・・・彼を手に入れられると思う。

だって今世の私は緩く波うつピンクの髪に青い大きな目のとっても可愛い女の子だもの。
本当は私がヒロインだと思うのよ?

学院に入学してからも、何人かの男が声を掛けてきたのがその証拠。
前世じゃあ、そんなこと有り得なかった。

だけど、目立ってしまうと私が虐めの標的になって痛い思いや辛い思いをしたくないじゃない?
だから頭の足りないヒロインを作り上げるの。
批判や蔑みはヒロインに任せるわ。

でも、こんなに可愛い私なのに彼の目が私を映すことはなかった。
彼はミラしか見ていない。

だったらあの子ミラを排除するしかないじゃない?

その方法をずっと考えていた所に、エルザが現れた。
彼女を上手く使えば・・・。
まずはエルザに近付いて信用されることね。

簡単よ。
私には力があるのだから・・・。

『能力を悪用する事は犯罪になります。貴女の能力は生涯使う必要のない力です。くれぐれもお気を付け下さい』

施設の所長だか、なんだかがそんな事を言っていたけれど、自分の欲しいものを手に入れるために使える力を使って何が悪いのよ。
馬鹿じゃないの?
使うに決まっているじゃん!





私はエルザの『お義姉様』とミラを呼ぶ声しか聞いていなかったのだ・・・。

エルザが後妻の連れ子で、ミラとはまったくの他人だって後々知るまで・・・

オズワルド殿下がエルザを囮に私を追い込むなんて・・・
私がオズワルド殿下に使ったがなんの効き目もなかったなんて・・
デューク様が、殺したいほど私を恨んでいたなんて・・・

・・・だから失敗した。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[完]巻き戻りの第二王太子妃は親友の幸せだけを祈りたい!

小葉石
恋愛
クワーロジット王国滅亡の日、冷酷なクワーロジット王太子は第二王太子妃を捨てた。 その日、捨てられたラシーリア第二王太子妃は絶対絶命の危機に面していた。反王政の貴族の罠に嵌り全ての罪を着せられ、迫り来る騎士達の剣が振り下ろされた時、ラシーリア第二王太子妃は親友であったシェルツ第一王太子妃に庇われ共に絶命する。 絶命したラシーリアが目覚めれば王宮に上がる朝だった… 二度目の巻き戻りの生を実感するも、親友も王太子も自分が知る彼らではなく、二度と巻き込まれなくて良いように、王太子には自分からは関わらず、庇ってくれた親友の幸せだけを願って……… けれど、あれ?おかしな方向に向かっている…? シェルツ   第一王太子妃 ラシーリア  第二王太子妃 エルレント  クワーロジット王国王太子

破滅フラグから逃げたくて引きこもり聖女になったのに「たぶんこれも破滅ルートですよね?」

氷雨そら
恋愛
「どうしてよりによって、18歳で破滅する悪役令嬢に生まれてしまったのかしら」  こうなったら引きこもってフラグ回避に全力を尽くす!  そう決意したリアナは、聖女候補という肩書きを使って世界樹の塔に引きこもっていた。そしていつしか、聖女と呼ばれるように……。  うまくいっていると思っていたのに、呪いに倒れた聖騎士様を見過ごすことができなくて肩代わりしたのは「18歳までしか生きられない呪い」  これまさか、悪役令嬢の隠し破滅フラグ?!  18歳の破滅ルートに足を踏み入れてしまった悪役令嬢が聖騎士と攻略対象のはずの兄に溺愛されるところから物語は動き出す。 小説家になろうにも掲載しています。

【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~

塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます! 2.23完結しました! ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。 相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。 ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。 幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。 好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。 そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。 それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……? 妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話 切なめ恋愛ファンタジー

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

【完結】これからはあなたに何も望みません

春風由実
恋愛
理由も分からず母親から厭われてきたリーチェ。 でももうそれはリーチェにとって過去のことだった。 結婚して三年が過ぎ。 このまま母親のことを忘れ生きていくのだと思っていた矢先に、生家から手紙が届く。 リーチェは過去と向き合い、お別れをすることにした。 ※完結まで作成済み。11/22完結。 ※完結後におまけが数話あります。 ※沢山のご感想ありがとうございます。完結しましたのでゆっくりですがお返事しますね。

記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。

ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。 毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。

夫に用無しと捨てられたので薬師になって幸せになります。

光子
恋愛
この世界には、魔力病という、まだ治療法の見つかっていない未知の病が存在する。私の両親も、義理の母親も、その病によって亡くなった。 最後まで私の幸せを祈って死んで行った家族のために、私は絶対、幸せになってみせる。 たとえ、離婚した元夫であるクレオパス子爵が、市民に落ち、幸せに暮らしている私を連れ戻そうとしていても、私は、あんな地獄になんか戻らない。 地獄に連れ戻されそうになった私を救ってくれた、同じ薬師であるフォルク様と一緒に、私はいつか必ず、魔力病を治す薬を作ってみせる。 天国から見守っているお義母様達に、いつか立派な薬師になった姿を見てもらうの。そうしたら、きっと、私のことを褒めてくれるよね。自慢の娘だって、思ってくれるよね―――― 不定期更新。 この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。

そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。

しげむろ ゆうき
恋愛
 男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない  そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった 全五話 ※ホラー無し

処理中です...