5 / 28
5 ~レオクリフ・イスト公爵家子息(兄)視点~
しおりを挟む
~レオクリフ・イスト公爵家子息(兄)視点~
「これで引き継ぎは終わりです。あとはよろしくお願いします」
3年の私は次の生徒会長であるリュート殿下にこの数週間仕事内容を引き継いできた。
この学園では王族が入学した時点で、生徒会に入るはずが⋯⋯今も一応入ってはいるか。
本来ならわざわざこの様な引き継ぎなど必要がない。見て覚えていくからな。
最初こそ毎日顔を出していた殿下だが、男爵令嬢に出会ってからはあの女に現を抜かし、殿下の願いを断って以来生徒会室に寄り付きもしなくなった。
その願いというのが⋯⋯
殿下は男爵令嬢を伴って生徒会室に顔を出したことがある。
殿下は何の実績もない男爵令嬢を生徒会に入れろと言ってきたのだ。
何か一つでも秀でたものがあればまだいい。
成績も悪ければ、マナーもなっていない。そんな令嬢を生徒会に入れれば他の生徒から不服、不満の苦情がくるのは考えれば分かることなのだが⋯⋯
男爵令嬢を生徒会に入れたいのなら自分の代で入れればいいのだ。その後は苦情がこようか、自分で責任を取ればいい。たとえそれによって殿下を支持する者が減ろうが知ったことではない。
その時、自己紹介もしていないのに『レオクリフくんお願い』と、勝手に私の名を呼び、上目遣いで私の制服の裾を掴む⋯⋯とろんとした熱のこもった目は今思い出しても気持ち悪い。
だいたいあの女はリュート殿下だけでは飽き足らず私まで 虜にできると思ったのか、その手がリュート殿下に通用したからといって、誰にでも通用すると思ったら大間違いだ。
次期公爵家当主の私を舐めすぎだ。
今までにもこの程度の女は腐るほど見てきた。
確かに見た目だけなら可愛らしい部類に入るのだろう。
だが!我が妹のメイの方が身内の欲目抜きにしても知性も気品もあり美しい。
幼い頃から泣きごとの1つも言わず、努力し続けてきた可愛い妹を蔑ろにするリュート殿下には殺意すら湧いていたんだ。
もともと我が家はリュート殿下とメイジェーンの婚約には反対していたのだ。
ただ当時のメイジェーンは絵本の中の王子様や、不思議な力を持つ妖精や精霊が実際に存在していると信じている純粋な幼女だった。
そんなメイジェーンだから、王子様と結婚したら幸せになれると思ったのだろう。あの頃のメイジェーンは素直で本当に可愛かった。
まあ、それも婚約期間が長くなるほど王太子妃教育も進み、現実が見られるようになった。
自分の幸せよりも国や民たちの幸せを一番に考えるようになったのだ。
⋯⋯そのおかげか王子様の夢から覚め、脳内お花畑を卒業してくれた。
たぶん今のメイジェーンはリュート殿下に憧れる気持ちや好意を抱いていない。
「ああ、任せてくれ」
ふっ、自信満々のようだが、そう上手くいくかな?
男爵令嬢を恋人のように隣に置くようになってから、側近予定のカイザックが何度苦言を呈しても聞き入れなかった。
そしてもう1人の側近予定のザイフォンは伯爵家の次男だ。男爵令嬢を娶るのに特に障害はない。どうせ男爵令嬢が王族の妾にすらなれないことを知ってるから何も言わないのだろう。
ザイフォンは2人が別れたあと男爵令嬢をものにするのを虎視眈々と狙っているだけだ。
リュート殿下が入学してきた当時は、当然ながら周りから注目を集め、婚約者のメイジェーンがいようがお近づきになろうとする令嬢たちが後を絶たなかった。
だが、リュート殿下が選んだのは教養も足りなくマナーもなっていない顔だけの男爵令嬢だった。
自分たちよりも身分も低く、リュート殿下だけでなく、他の子息たちにも甘えて媚びるそんな女が選ばれたことに自分たちがやっていた事を棚に上げて、嫉妬や妬みからか嫌がらせが始まった。
まあ、嫌がらせと言っても教科書を隠すだとか、聞こえるように悪口を言う程度のものだと聞いている。
それが婚約者であるメイジェーンが入学した途端、陰湿な虐めに変わった。まるでそれがメイジェーンの仕業かのように⋯⋯
『どんな時も、どんな状況でも気高く美しく己を誇れる自分であれ!』
我が家の家訓だ。
先日、メイジェーンがやっと婚約解消を願いでた。
よく耐えたと思う。
約10年だ。
10年間もの間、メイジェーンは家族に心配をかけたくなかったのだろう、辛い王太子妃教育の泣きごとも、婚約者との交流のため決められたお茶会すらすっぽかされていることも私たち家族に一度も告げ口をしなかった。
だが私たちの耳にはしっかり入ってきていた。
私たちがどれだけ悔しい思いをしていたことか⋯⋯
だからメイジェーンの気が変わらぬうちにと、母上が父上を急かし、その日のうちに婚約解消が決まった。
そして今日、私の耳にメイジェーンの前で勝手に転んだ男爵令嬢をリュート殿下は状況だけでメイジェーンを責めて怒鳴ったと報告があった。
リュート殿下はイスト公爵家の後ろ盾を無くしたことも、密かに来年入学してくる第二王子を推す貴族家が増えていることにも気付いていないのだろう。
少し先の未来、お前が自分の置かれた状況を理解した時⋯⋯泣きついてくるのは見えている。
『やられたら、やり返す!3倍返しだ!』
こんな家訓も我が家にはある。
我が家の天使の努力を認めず侮辱までしたのだ⋯⋯いつまでも王太子で居られると思うなよ?
「これで引き継ぎは終わりです。あとはよろしくお願いします」
3年の私は次の生徒会長であるリュート殿下にこの数週間仕事内容を引き継いできた。
この学園では王族が入学した時点で、生徒会に入るはずが⋯⋯今も一応入ってはいるか。
本来ならわざわざこの様な引き継ぎなど必要がない。見て覚えていくからな。
最初こそ毎日顔を出していた殿下だが、男爵令嬢に出会ってからはあの女に現を抜かし、殿下の願いを断って以来生徒会室に寄り付きもしなくなった。
その願いというのが⋯⋯
殿下は男爵令嬢を伴って生徒会室に顔を出したことがある。
殿下は何の実績もない男爵令嬢を生徒会に入れろと言ってきたのだ。
何か一つでも秀でたものがあればまだいい。
成績も悪ければ、マナーもなっていない。そんな令嬢を生徒会に入れれば他の生徒から不服、不満の苦情がくるのは考えれば分かることなのだが⋯⋯
男爵令嬢を生徒会に入れたいのなら自分の代で入れればいいのだ。その後は苦情がこようか、自分で責任を取ればいい。たとえそれによって殿下を支持する者が減ろうが知ったことではない。
その時、自己紹介もしていないのに『レオクリフくんお願い』と、勝手に私の名を呼び、上目遣いで私の制服の裾を掴む⋯⋯とろんとした熱のこもった目は今思い出しても気持ち悪い。
だいたいあの女はリュート殿下だけでは飽き足らず私まで 虜にできると思ったのか、その手がリュート殿下に通用したからといって、誰にでも通用すると思ったら大間違いだ。
次期公爵家当主の私を舐めすぎだ。
今までにもこの程度の女は腐るほど見てきた。
確かに見た目だけなら可愛らしい部類に入るのだろう。
だが!我が妹のメイの方が身内の欲目抜きにしても知性も気品もあり美しい。
幼い頃から泣きごとの1つも言わず、努力し続けてきた可愛い妹を蔑ろにするリュート殿下には殺意すら湧いていたんだ。
もともと我が家はリュート殿下とメイジェーンの婚約には反対していたのだ。
ただ当時のメイジェーンは絵本の中の王子様や、不思議な力を持つ妖精や精霊が実際に存在していると信じている純粋な幼女だった。
そんなメイジェーンだから、王子様と結婚したら幸せになれると思ったのだろう。あの頃のメイジェーンは素直で本当に可愛かった。
まあ、それも婚約期間が長くなるほど王太子妃教育も進み、現実が見られるようになった。
自分の幸せよりも国や民たちの幸せを一番に考えるようになったのだ。
⋯⋯そのおかげか王子様の夢から覚め、脳内お花畑を卒業してくれた。
たぶん今のメイジェーンはリュート殿下に憧れる気持ちや好意を抱いていない。
「ああ、任せてくれ」
ふっ、自信満々のようだが、そう上手くいくかな?
男爵令嬢を恋人のように隣に置くようになってから、側近予定のカイザックが何度苦言を呈しても聞き入れなかった。
そしてもう1人の側近予定のザイフォンは伯爵家の次男だ。男爵令嬢を娶るのに特に障害はない。どうせ男爵令嬢が王族の妾にすらなれないことを知ってるから何も言わないのだろう。
ザイフォンは2人が別れたあと男爵令嬢をものにするのを虎視眈々と狙っているだけだ。
リュート殿下が入学してきた当時は、当然ながら周りから注目を集め、婚約者のメイジェーンがいようがお近づきになろうとする令嬢たちが後を絶たなかった。
だが、リュート殿下が選んだのは教養も足りなくマナーもなっていない顔だけの男爵令嬢だった。
自分たちよりも身分も低く、リュート殿下だけでなく、他の子息たちにも甘えて媚びるそんな女が選ばれたことに自分たちがやっていた事を棚に上げて、嫉妬や妬みからか嫌がらせが始まった。
まあ、嫌がらせと言っても教科書を隠すだとか、聞こえるように悪口を言う程度のものだと聞いている。
それが婚約者であるメイジェーンが入学した途端、陰湿な虐めに変わった。まるでそれがメイジェーンの仕業かのように⋯⋯
『どんな時も、どんな状況でも気高く美しく己を誇れる自分であれ!』
我が家の家訓だ。
先日、メイジェーンがやっと婚約解消を願いでた。
よく耐えたと思う。
約10年だ。
10年間もの間、メイジェーンは家族に心配をかけたくなかったのだろう、辛い王太子妃教育の泣きごとも、婚約者との交流のため決められたお茶会すらすっぽかされていることも私たち家族に一度も告げ口をしなかった。
だが私たちの耳にはしっかり入ってきていた。
私たちがどれだけ悔しい思いをしていたことか⋯⋯
だからメイジェーンの気が変わらぬうちにと、母上が父上を急かし、その日のうちに婚約解消が決まった。
そして今日、私の耳にメイジェーンの前で勝手に転んだ男爵令嬢をリュート殿下は状況だけでメイジェーンを責めて怒鳴ったと報告があった。
リュート殿下はイスト公爵家の後ろ盾を無くしたことも、密かに来年入学してくる第二王子を推す貴族家が増えていることにも気付いていないのだろう。
少し先の未来、お前が自分の置かれた状況を理解した時⋯⋯泣きついてくるのは見えている。
『やられたら、やり返す!3倍返しだ!』
こんな家訓も我が家にはある。
我が家の天使の努力を認めず侮辱までしたのだ⋯⋯いつまでも王太子で居られると思うなよ?
5,076
お気に入りに追加
8,416
あなたにおすすめの小説
何を間違った?【完結済】
maruko
恋愛
私は長年の婚約者に婚約破棄を言い渡す。
彼女とは1年前から連絡が途絶えてしまっていた。
今真実を聞いて⋯⋯。
愚かな私の後悔の話
※作者の妄想の産物です
他サイトでも投稿しております
なにひとつ、まちがっていない。
いぬい たすく
恋愛
若くして王となるレジナルドは従妹でもある公爵令嬢エレノーラとの婚約を解消した。
それにかわる恋人との結婚に胸を躍らせる彼には見えなかった。
――なにもかもを間違えた。
そう後悔する自分の将来の姿が。
Q この世界の、この国の技術レベルってどのくらい?政治体制はどんな感じなの?
A 作者もそこまで考えていません。
どうぞ頭のネジを二三本緩めてからお読みください。
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
夫はオシドリ夫婦と評される※ただし相手は妻の私ではない
キムラましゅろう
恋愛
クロウ子爵家の一人娘リゼットには単身赴任中の入婿である夫がいる。
訳あって短期間だけ知人の娘に変身して魔法省にてバイトをする事になったリゼット。
奇しくもバイト先は夫の職場。
訳ありの訳ありであくまでも他人になりすまして仕事をするリゼットは単身赴任中の夫がオシドリ夫婦と評判なのだという事を知る。
ただしそれは妻であるリゼットではない同僚女性との間で評されているものであった……。
さてリゼット、どうする?
作者は元サヤハピエン溺愛主義でございます。
いつも無理やりこじつけからの〜捻じ曲げて元サヤに持って参りますので、アンチ元サヤの方はそっ閉じをお勧めいたします。
いつもながらの完全ご都合主義、ノーリアリティノークオリティのお話です。
誤字脱字も大変多いです(断言)何卒ご了承のほどお願い申し上げます。
そしてモヤり、イライラ等による血圧の上昇も懸念されます。
コレらの注意事項をよくお読みになられて、用法用量を守って正しくお読みくださいませ。
小説家になろうさんでも投稿しています。
もう、愛はいりませんから
さくたろう
恋愛
ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。
王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。
【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。
【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~
イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」
どごおおおぉっ!!
5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略)
ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。
…だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。
それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。
泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ…
旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは?
更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!?
ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか?
困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語!
※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください…
※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください…
※小説家になろう様でも掲載しております
※イラストは湶リク様に描いていただきました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる