上 下
2 / 28

2 他視点あり

しおりを挟む
はい⋯⋯ぐっすり寝すぎてしまいました。
起きたのは昼前。
当然学園を休むことに⋯⋯

食堂で私が起きるのを待ってくれていたお母様は学園をズル休みすることなんて、なんてことないことのように「いいのよ、いいのよ、メイちゃんは今まで真面目に頑張ってきたのだから1日ぐらいサボってもいいのよ~」ってテンション高く言ってくれた。それだけ婚約解消が嬉しかったんだね。

そんなものなのかな?
そ、そうよね!だって前世を思い出すまで皆んなの手本になるようないい子だったものね!

まあ、今から学園にも行けないしサボってできた時間は有効利用しないとね。
まずは小説の内容をしっかり思い出してまとめないと、婚約解消したからといって、どこで落とし穴があるか分からないからね!

昼食をすませ、侍女たちにはゆっくり休みたいと言って部屋に1人にしてもらった。




『君だけに永遠の愛を贈る』

ちょっと自信はないけれど、こんな題名の小説だったような気がする。
だって前世では似たような小説や漫画を何十冊、何百冊、何千冊と読んだんだよ。
ヒロインの名前と、自分の名前だけで私が悪役令嬢だって気付いたことを褒めて欲しいぐらいだわ。

まあ、それはいい。
物語の内容も他の小説と似たようなものだ。

ヒロインは男爵令嬢のエルザ・ヒューア 2年生
ピンク色の髪に、夏の青空のような瞳。

悪役令嬢は公爵令嬢の私メイジェーン・イスト1年生。金髪にエメラルドグリーンの瞳。

攻略対象者はこの国の王太子リュート・ラッセリア2年生。

騎士団長の息子ザイフォン・デカリア伯爵家次男、2年生。

財務大臣の息子カイザック・モナー公爵家嫡男、2年生。


あと、学園の教師だったかな?

そしてもう一人⋯⋯我が兄レオクリフ・イスト公爵家嫡男3年生。
金髪にアメジストのような紫色の瞳。

主な登場人物はこれぐらいかな?

あと、公爵令嬢で王太子の婚約者である私にはヨイショする取り巻きもいたが⋯⋯私が前世を思い出さなければ彼女たちが私の指示に従ってヒロインを虐める役になっていたのよね⋯⋯

そんな彼女たちだけれど、私と王太子殿下の婚約が解消されたと知ったら、我先に殿下に自分をアピールするような令嬢たちなのだ。我ながら人を見る目がないわ~

はっきり言って冷たいようだけれど、ヒロインがイジメられようが知ったことではないわ。
誰だって我が身が可愛いからね。
それに、彼女は王太子に婚約者がいると知りながら距離を置こうともせず、恋人気取りで隣にいたもの、殿下を密かに狙っている令嬢たちにとっては面白くない存在なのだ。




でもヒロインって凄いよね。
入学してからお兄様以外の攻略対象者たちと親しくなっているんだもん。

確かに可愛いのよ!
華奢で小顔で垂れ目で口も小さいの。
女の私から見ても守ってあげたくなるような子なんだよ!
素直そうで、控えめで、いい子そうなんだよ!
そりゃあ攻略対象者たちもメロメロになっちゃうよ。

これからヒロインのエルザが誰とハッピーエンドを迎えるのかどうでもいいが、お兄様だけは止めてね?

だって我が家は公爵家。
エルザを見た限りでは礼儀作法もマナーもイマイチ⋯⋯
今から教養やマナー、作法を学ぶのはキツイと思うもの。
それを言うと、王族に嫁ぐのはもっと大変だよね。

そうなのだ、小説の中でいくらハッピーエンドを迎えようと、その後どうなるかは書かれてない。
だけど現実はそんなに甘くない。
男爵令嬢が王族に嫁ぐどころか妾にもなれない決まりがあることを知っているのだろうか?

まあヒロインだし?
王太子殿下が周りを説得できれば何とかなるか?
いやいや、今のままでは誰も納得しないだろうし認めないだろう。
かなりの努力が⋯⋯それこそ血の滲むような努力が必要になる。

あの子は愛する人の為に頑張れるだろうか?心が折れたりしないだろうか?ヒロインから笑顔が消えたりしないだろうか?

⋯⋯なんてね。私が彼女の心配をする必要はないか。
彼女には支えてくれる人が沢山いるのだから⋯⋯



他人のことよりも自分のことよね。
婚約解消したからと言って安心するのはまだ早い気がする。
本来なら悪役令嬢である私が断罪から本当に逃れるのか、まだまだ気は抜けない。


明日、学園に行ったら婚約解消の件で注目を集めるだろう。
いわれなきことを言われるかもしれない。
それでも⋯⋯それでも公爵令嬢という私の地位は変わらない。
我が家の名に恥じぬよう胸を張ろう。






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




~???視点~



「婚約解消⋯⋯ですか?」

「ああ、今までよく耐えていると思っていたが⋯⋯。あれでは私が親でも喜んで解消させるさ」

あれだけ苦言を呈したのに⋯⋯無駄だったか。

では俺は俺で好きにさせてもらう。
アイツに遠慮はしない。

無理強いをする気は無い。
女を口説いたことはないが、必ず彼女には俺を好きになってもらう。
その為の努力は惜しまない。


もう、彼女の泣き顔は見たくない⋯⋯


『君が泣かなくてもいいように僕がずっと守ってあげるよ』


いま思えばよくそんなキザなセリフを吐けたものだと、恥ずかしさにのたうち回りそうになるが、きっと彼女は覚えていないんだろうな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

何を間違った?【完結済】

maruko
恋愛
私は長年の婚約者に婚約破棄を言い渡す。 彼女とは1年前から連絡が途絶えてしまっていた。 今真実を聞いて⋯⋯。 愚かな私の後悔の話 ※作者の妄想の産物です 他サイトでも投稿しております

愛されなければお飾りなの?

まるまる⭐️
恋愛
 リベリアはお飾り王太子妃だ。  夫には学生時代から恋人がいた。それでも王家には私の実家の力が必要だったのだ。それなのに…。リベリアと婚姻を結ぶと直ぐ、般例を破ってまで彼女を側妃として迎え入れた。余程彼女を愛しているらしい。結婚前は2人を別れさせると約束した陛下は、私が嫁ぐとあっさりそれを認めた。親バカにも程がある。これではまるで詐欺だ。 そして、その彼が愛する側妃、ルルナレッタは伯爵令嬢。側妃どころか正妃にさえ立てる立場の彼女は今、夫の子を宿している。だから私は王宮の中では、愛する2人を引き裂いた邪魔者扱いだ。  ね? 絵に描いた様なお飾り王太子妃でしょう?   今のところは…だけどね。  結構テンプレ、設定ゆるゆるです。ん?と思う所は大きな心で受け止めて頂けると嬉しいです。

なにひとつ、まちがっていない。

いぬい たすく
恋愛
若くして王となるレジナルドは従妹でもある公爵令嬢エレノーラとの婚約を解消した。 それにかわる恋人との結婚に胸を躍らせる彼には見えなかった。 ――なにもかもを間違えた。 そう後悔する自分の将来の姿が。 Q この世界の、この国の技術レベルってどのくらい?政治体制はどんな感じなの? A 作者もそこまで考えていません。  どうぞ頭のネジを二三本緩めてからお読みください。

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい

矢口愛留
恋愛
【全11話】 学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。 しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。 クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。 スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。 ※一話あたり短めです。 ※ベリーズカフェにも投稿しております。

夫はオシドリ夫婦と評される※ただし相手は妻の私ではない

キムラましゅろう
恋愛
クロウ子爵家の一人娘リゼットには単身赴任中の入婿である夫がいる。 訳あって短期間だけ知人の娘に変身して魔法省にてバイトをする事になったリゼット。 奇しくもバイト先は夫の職場。 訳ありの訳ありであくまでも他人になりすまして仕事をするリゼットは単身赴任中の夫がオシドリ夫婦と評判なのだという事を知る。 ただしそれは妻であるリゼットではない同僚女性との間で評されているものであった……。 さてリゼット、どうする? 作者は元サヤハピエン溺愛主義でございます。 いつも無理やりこじつけからの〜捻じ曲げて元サヤに持って参りますので、アンチ元サヤの方はそっ閉じをお勧めいたします。 いつもながらの完全ご都合主義、ノーリアリティノークオリティのお話です。 誤字脱字も大変多いです(断言)何卒ご了承のほどお願い申し上げます。 そしてモヤり、イライラ等による血圧の上昇も懸念されます。 コレらの注意事項をよくお読みになられて、用法用量を守って正しくお読みくださいませ。 小説家になろうさんでも投稿しています。

もう、愛はいりませんから

さくたろう
恋愛
 ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。  王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。

【完結】え、別れましょう?

須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」 「は?え?別れましょう?」 何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。  ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?  だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。   ※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。 ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。

処理中です...