【完結】偽物令嬢と呼ばれても私が本物ですからね!

kana

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私の水死体を用意したのも、執事長の家族を誘拐、監禁に手を貸したのも殿だったこと・・・

オルト嬢の母親は王弟殿下にまで媚薬を使っていたのだ。
王弟殿下の名がでた時、誰のものかは分からないが息を呑む音が・・・

日頃から優秀なのに控えめで大人しく、使用人にも優しい王弟だったらしい。

甥の王太子殿下やディオリス殿下を可愛がり、その幼馴染みであるリアやエドも可愛がってもらっていたそうだ。

その王弟殿下に近付き、媚薬を使って王弟を思いのままに操り、犯罪に加担させた・・・

媚薬は一度や二度の使用では、抜けるのは早いらしいが、服用量が多くなるほど・・・使用期間が長くなるほど抜けるのに時間がかかるとのこと。

媚薬で操られていたとはいえ、ソルトレグス帝国の皇位継承権まで持っている令嬢の監禁に関わったことは例え王弟とはいえ許されるはずもなく・・・

毒杯を賜ることに・・・

もちろん加担した協力者たちも既に処分されていると・・・

「お、叔父上が犯罪に加担した?操られていた?事故で亡くなったはずではなかった?毒杯?」

小さな声だったけれど、静まり返ったこの部屋ではしっかりと耳に届いた。

うわーーーー!っと叫んだと思ったらヨランダ伯爵に殴りかかったのはディオリス殿下だった。

すぐにハリスンとゼガードが取り押さえたけれど、ディオリス殿下の怒りは収まらず暴言を吐き続けた。

『人殺し!』『異常者!』『穢らわしい!』誰も言葉には出さないけれど、思っていることは同じだろう。
まだまだ言い足りなさそうだったけれど、国王がそれを止めた。

「お前も一歩間違えればオルト嬢に操られて犯罪に手を染めていたかもしれないんだぞ?」

それを聞いて足元から崩れ落ちたディオリス殿下はオルト嬢を見て・・・『血は争えないな・・・お前も死ね』と小さく呟いた。




それからも、オルト嬢の母親の話しは続いた。

ここからはオルト男爵の証言だ。

オルト嬢の母親はオルト男爵に嫁いでからも従順で主人を立てるような大人しい性格だったらしい。
夫婦仲も良く、産まれてくる子を夫婦で楽しみにしていたらしい。

それが出産後、突然妻の様子に異変が起こった。

夫であるオルト男爵を知らない男性だと言い出したと思ったら、産んだばかりの娘が黒髪にブルーの瞳を持っていたことから、『ロイド様との間に生まれた娘』だと言い出した。

ああ・・・その時に洗脳、いえ媚薬の効果が切れたのか・・・切れかけたが正しいのか?
そう考えると怖い。
性格まで変えてしまうだなんて・・・

結局、何を言っても聞かず外出が増えるようになった頃に、もしかしたら王弟殿下と接触があったのではないかと。

それでもオルト男爵は娘に『おじさん』と呼ばれようが、バカにされようがラグーナ侯爵家から追い出された娘を引き取った。
・・・結局それも無駄だったけれど。

因みにオルト男爵は妻が処刑された事は知らなかった。

すべての元凶はヨランダ伯爵のように思えるが、元々オルト嬢の母親のお父様への執着が酷かったのを見かねての行動だったともいえる。

まあ、違法な媚薬を作り出したヨランダ伯爵がやっぱり犯罪を増やした元凶か・・・

結局最後まで猿轡をされていたオルト嬢が言葉を発することは無かったけれど、母親と叔父との関係や、自身も実の兄との肉体関係を持っていたこと、母が王弟まで利用して犯罪を犯したこと等を聞いてからは魂が抜けたように放心している。



今日のところはこれで解散になった。
王宮に滞在する理由が無くなったジル兄様は私たちと一緒に我が家に帰ることになった。

リアとエドは可愛がってくれた王弟殿下のことにショックを受けていただろうに、紳士淑女の仮面をかぶり王族の皆様に挨拶をしてその場を後にした。

そうそう部屋から退室する時に、ジル兄様が『の納得のいく刑罰が決まったら報告を頼む』と言い残していたわね。



王宮の長い通路を歩く間もジル兄様は安定のお姫様抱っこ。
うん、何も言うまい。

もう外は明るんでいる。
それだけ長い話し合いだったのだろう。

「ジル兄様、本当のことを教えてくれてありがとう」そっとジル兄様にだけ聞こえるように呟いた。
ジル兄様が気遣うような眼差して私を見つめるけれど、これは本心だ。




今回、この国の貴族に私と兄様がソルトレグス帝国の皇位継承権を持つ者だと知れ渡った。

私たちに悪意を持って近づいた者の末路はこれから公表されるだろう。
それに様々な思惑を持って私たちに近付いてくる者もいるだろう。
とくに兄様は侯爵家の後継ぎだし、婚約者もいないもの。

今も私を膝に乗せているジル兄様の腕の中が暖かくて、馬車の揺れも気持ち良くて、睡魔に抗えない。

これからの事は起きたら相談しよう。
今日は疲れたわ。

『おやすみユティ』

優しいジル兄様の声に安心して目を閉じた・・・。
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