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私が戻ってきたのが分かったのか、会場に入ってすぐにジル兄様と目が合った。お互い軽く頷き合う。
まだジル兄様とレグルス兄様の傍にはオルト嬢が・・・
ディオリス殿下は・・・アルスト殿下と何か話しているようだけれど、きっと先程の男たちの事を報告されているのね。だって顔色がどんどん悪くなっていくもの。
ジル兄様の周りにさっきまで居なかったソルトレグス帝国の騎士が3人後ろについている。
会場を見渡すと他にもソルトレグス帝国の騎士が少し離れて付いている2人の男性・・・彼らがオルト嬢の身内であるヨルドラ伯爵と子息ね。
ニヤニヤとオルト嬢とジル兄様の方を見ているけれど、この後にも同じ顔が出来るかしら?
ジル兄様が動いた。
引き止めようとしたのか、オルト嬢が手を伸ばすけれどジル兄様はさり気なくその手を躱し国王と王妃様のいる壇上に上がった。
始まる・・・
ジル兄様の行動に今まで騒がしかった会場の人達の視線が集まる・・・
「楽しんでいるところ申し訳ない。」
あっ、呼ばれる。
「ひと目見た時から私の伴侶にと決めていた令嬢をご紹介させて頂きます」
キャーと令嬢たちの甲高い黄色い悲鳴が上がる。
ここで公表するんだ。
そんな気がしたんだよね。
オルト嬢を見れば周りからの羨望が集まっていることに優越感を隠せていない。
まるで選ばれるのは自分だと確信しているのかの様に頬を染めて壇上のジル兄様を潤んだ瞳で見つめている・・・
それと、ヨルドラ伯爵とその子息も何気に自慢げだが・・・
思う通りに行くわけがないでしょう?
「・・・ユティ。ここにおいで」
ジル兄様が私だけに向ける、優しい声、眼差し、微笑み、そのすべてが私を特別だと、大切だと、愛しいと・・・
きっと今の私もジル兄様と同じ表情だと思う。
本当はジル兄様の胸に飛び込みたい。
ザワザワと私に視線が向けられる。
さて、オルト嬢は?そしてヨランダ伯爵と子息は?
オルト嬢の目が驚愕に見開いている。
そうでしょうね。
彼女の作戦では私は今頃あの男たちに陵辱されてボロボロになっていたでしょうからね。
しかも、自分が呼ばれると思っていたのね。
何故そう思ったのか・・・
余程自身に自信があるのね。
一度でもジル兄様の態度や眼差しに彼女への愛が垣間見えたとでも?
・・・有り得ないわね。
壇上に上がってジル兄様の隣に並んで微笑み合う。
『後でしっかり説明してね』と目で訴えると、『了解』と返してくれる。
私はね、見た目のイメージと違って大人しい性格ではないの。
性格も褒められたものではないと思う。
だって壇上からオルト嬢を見下ろし、彼女にだけ分かるように勝ち誇った顔をワザとして見せたんだもの。
だって当然でしょう?
同じ女として、彼女は最低のことを男たちを使って私とリアにしようとしたのよ?
私が付き添っていなければリアが無事だったかも分からない。
そんな事許せる訳ないでしょう?
それはジル兄様もお父様やレグルス兄様も同じよ。
リアのご両親だって貴女のした事を知ったらどうするか・・・
あらあら、そんな恐ろしいお顔で私を睨んでいるけれど、皆様の視線は貴女にも向けられているのよ?
つい先程までジル兄様とレグルス兄様を独占し、優越感に浸っていたものね。
婚約者でもない男爵令嬢を第二王子にエスコートされていただけでも驚きなのに、帝国の皇太子にまで親しそうに話し掛けるなんて・・・多少の嫉妬や顰蹙を買っていても仕方がないわ。
だからか呼ばれなかったオルト嬢は周りからクスクス嗤われ、蔑まれているみたい。
「私、ソルトレグス帝国、ジルグレート・ソルトレグスは、我が帝国皇位継承権第三位であるユティフローラ・ラグーナ侯爵令嬢との婚約をここで発表する。」
暫しの静寂のあと、割れんばかりの盛大な拍手が起こる。
この発表に驚愕の表情を浮かべているのはオルト嬢だけでは無い。
ゼガードの言葉で庶子だとの噂は下火になったものの、まだ私を見下す令嬢は何人もいた。
これで理解してくれたらいいの。
そんな恐ろしいものを見るような顔をしなくても大丈夫よ。
不敬罪だなんだと今さら罰を与えたりしないから安心してね。
『彼女とソルトレグス帝国との関係は?』
『ラグーナ侯爵令嬢は皇女なのか?』
『だとしたら皇位継承権をラグーナ侯爵子息もあるのか?』
『一時あった庶子だとの噂は何だったのだ?』
ザワつく会場内を手で止めて、ジル兄様の次の言葉でさっきとは違う静寂が起こった。
「その私の愛する婚約者であるユティを男たちを唆し傷物にしようとした者がいる」
ソルトレグス帝国の騎士に拘束された男たちが皆の前に引き摺られてきた。
小さな悲鳴と共に倒れる夫人や令嬢、真っ青な顔で放心する紳士に子息。
この男たちの家族だろう。
私とジル兄様の目が、お父様とレグルス兄様の目も、リアやエド、ゼガードとハリスンの目もオルト嬢に向けられた。
まだジル兄様とレグルス兄様の傍にはオルト嬢が・・・
ディオリス殿下は・・・アルスト殿下と何か話しているようだけれど、きっと先程の男たちの事を報告されているのね。だって顔色がどんどん悪くなっていくもの。
ジル兄様の周りにさっきまで居なかったソルトレグス帝国の騎士が3人後ろについている。
会場を見渡すと他にもソルトレグス帝国の騎士が少し離れて付いている2人の男性・・・彼らがオルト嬢の身内であるヨルドラ伯爵と子息ね。
ニヤニヤとオルト嬢とジル兄様の方を見ているけれど、この後にも同じ顔が出来るかしら?
ジル兄様が動いた。
引き止めようとしたのか、オルト嬢が手を伸ばすけれどジル兄様はさり気なくその手を躱し国王と王妃様のいる壇上に上がった。
始まる・・・
ジル兄様の行動に今まで騒がしかった会場の人達の視線が集まる・・・
「楽しんでいるところ申し訳ない。」
あっ、呼ばれる。
「ひと目見た時から私の伴侶にと決めていた令嬢をご紹介させて頂きます」
キャーと令嬢たちの甲高い黄色い悲鳴が上がる。
ここで公表するんだ。
そんな気がしたんだよね。
オルト嬢を見れば周りからの羨望が集まっていることに優越感を隠せていない。
まるで選ばれるのは自分だと確信しているのかの様に頬を染めて壇上のジル兄様を潤んだ瞳で見つめている・・・
それと、ヨルドラ伯爵とその子息も何気に自慢げだが・・・
思う通りに行くわけがないでしょう?
「・・・ユティ。ここにおいで」
ジル兄様が私だけに向ける、優しい声、眼差し、微笑み、そのすべてが私を特別だと、大切だと、愛しいと・・・
きっと今の私もジル兄様と同じ表情だと思う。
本当はジル兄様の胸に飛び込みたい。
ザワザワと私に視線が向けられる。
さて、オルト嬢は?そしてヨランダ伯爵と子息は?
オルト嬢の目が驚愕に見開いている。
そうでしょうね。
彼女の作戦では私は今頃あの男たちに陵辱されてボロボロになっていたでしょうからね。
しかも、自分が呼ばれると思っていたのね。
何故そう思ったのか・・・
余程自身に自信があるのね。
一度でもジル兄様の態度や眼差しに彼女への愛が垣間見えたとでも?
・・・有り得ないわね。
壇上に上がってジル兄様の隣に並んで微笑み合う。
『後でしっかり説明してね』と目で訴えると、『了解』と返してくれる。
私はね、見た目のイメージと違って大人しい性格ではないの。
性格も褒められたものではないと思う。
だって壇上からオルト嬢を見下ろし、彼女にだけ分かるように勝ち誇った顔をワザとして見せたんだもの。
だって当然でしょう?
同じ女として、彼女は最低のことを男たちを使って私とリアにしようとしたのよ?
私が付き添っていなければリアが無事だったかも分からない。
そんな事許せる訳ないでしょう?
それはジル兄様もお父様やレグルス兄様も同じよ。
リアのご両親だって貴女のした事を知ったらどうするか・・・
あらあら、そんな恐ろしいお顔で私を睨んでいるけれど、皆様の視線は貴女にも向けられているのよ?
つい先程までジル兄様とレグルス兄様を独占し、優越感に浸っていたものね。
婚約者でもない男爵令嬢を第二王子にエスコートされていただけでも驚きなのに、帝国の皇太子にまで親しそうに話し掛けるなんて・・・多少の嫉妬や顰蹙を買っていても仕方がないわ。
だからか呼ばれなかったオルト嬢は周りからクスクス嗤われ、蔑まれているみたい。
「私、ソルトレグス帝国、ジルグレート・ソルトレグスは、我が帝国皇位継承権第三位であるユティフローラ・ラグーナ侯爵令嬢との婚約をここで発表する。」
暫しの静寂のあと、割れんばかりの盛大な拍手が起こる。
この発表に驚愕の表情を浮かべているのはオルト嬢だけでは無い。
ゼガードの言葉で庶子だとの噂は下火になったものの、まだ私を見下す令嬢は何人もいた。
これで理解してくれたらいいの。
そんな恐ろしいものを見るような顔をしなくても大丈夫よ。
不敬罪だなんだと今さら罰を与えたりしないから安心してね。
『彼女とソルトレグス帝国との関係は?』
『ラグーナ侯爵令嬢は皇女なのか?』
『だとしたら皇位継承権をラグーナ侯爵子息もあるのか?』
『一時あった庶子だとの噂は何だったのだ?』
ザワつく会場内を手で止めて、ジル兄様の次の言葉でさっきとは違う静寂が起こった。
「その私の愛する婚約者であるユティを男たちを唆し傷物にしようとした者がいる」
ソルトレグス帝国の騎士に拘束された男たちが皆の前に引き摺られてきた。
小さな悲鳴と共に倒れる夫人や令嬢、真っ青な顔で放心する紳士に子息。
この男たちの家族だろう。
私とジル兄様の目が、お父様とレグルス兄様の目も、リアやエド、ゼガードとハリスンの目もオルト嬢に向けられた。
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