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「久しぶりだねラグーナ嬢」

ディオリス殿下から話し掛けられるなんて本当に久しぶりだ。

「ご機嫌ようディオリス殿下」

最近はオルト嬢を傍に置いていると聞いていたけれど今は殿下一人みたい。
なんだか言いずらそうにしているけれど、なにか話があって声を掛けてきたのでは?
殿下が何を話し出すのか分からず首を傾げて言葉を待つ。

「・・・そ、その君が僕に恋慕していると人伝に聞いてね・・・」

はい?ありえないわ!
私にはジル兄様がいるのに!

「いえ、私はディオリス殿下にその様な気持ちは一切ございません!」

しっかりと訂正させてもらう。

「え?そうなの?」

なんで驚いてるんだろ?

「はい!」

「ディオリス殿下?その情報はどなたから?」

リアもオルト嬢とディオリス殿下の関係を知っているから目が怖いわ。

「もしかしてオルト嬢から聞いたのですか?最近のディオリス殿下とオルト嬢の距離が怪しいって噂になっていますよ?」

ハリスンもっと言って!

「う、噂に?」

「はい、2人で空き教室に籠って何をしているんだってね。それにその部屋から妙な声も聞こえるとか・・・」

皆んな静かに私たちの会話を聞いている。
だってここは食堂だものこんな話が聞こえたら皆んなも気になるよね。

「ち、違う!私と彼女はそんな関係じゃない!」

ディオリス殿下は顔色を変えて慌てて去って行った。

その後の食堂内では『殿下も男だったんだな』『わたくしも2人が空き教室に入って行くのを見ましたわ』『色っぽいもんなオルト嬢』『ただの殿下の火遊びでしょう』と、誰も大きな声では話していないけれど・・・こうやって噂って広がっていくんだなって思った。

その日を境に私にディオリス殿下と同じことを言ってくる男子生徒が何人もいた。

そのうち学園内で"色んな男に色目を使って勘違いさせる私が悪い"、"清楚に見えて陰で遊んでいるのでは?" "などの噂が流れ出した。

また噂か~
皆んな退屈なのか根拠のない噂ばかり。
そろそろ怒ってもいいだろうか?

だってね!
噂でも酷いものは学園内でところ構わず抱き合っていたっていう物もあったんだよ! 

抱き合うなんて・・・お父様とお兄様とジル兄様だけよ!

ジル兄様だけに幼い頃から全力で思いを伝えてきたけれど、私は誓ってジル兄様以外の異性に思わせぶりな態度をとったことは無い!


私が1人になることがないと知っているクラスメイトや同学年の生徒たちは上級生の噂に惑わされる人はあまりいないみたい。
同情の目を向けられているもの・・・

今まで私は怒ることは少ない人間だと自負していた。
でもさすがにこれは怒ってもいいと思う。
もしこれがオルト嬢の仕業なら・・・お父様もお兄様ももう許さないと思う。

それに、これもジル兄様の耳に入っているんだろうな。


ハリスンが言うには、その男子生徒たちは全員オルト嬢と一度は噂になったことのある子息たちなのだとか・・・

「それって、オルト嬢が彼らを言葉巧みに誘導してその気にさせてるんじゃないの?」

「それももうすぐ分かるよ」

ハリスンが意地悪そうな顔になっている。

でも一体何がしたいのか・・・
私の評判を落としたいだけなのか、その裏にまだ何か企んでいるのか・・・




ジル兄様の隣に立つためには裏のことも知る覚悟も必要だ。
きっとジル兄様は私に知られたくないこともあると思う。
だけどね、私だって守られてばかりではいられない。
このままだと私がジル兄様の弱点になってしまうもの・・・
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