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いつも食堂で私たちが座るテーブルにハリスンが後ろに可愛らしい令嬢を連れて声をかけてきた。
彼女はハリスンの上着を掴んで怯えたように私を見ている。
なるほど彼女がオルト嬢なのね。

みんなが注目しているのが分かる。
リアは面白そうな顔で、エドは無表情で、ゼガードは・・・鋭い目で威圧感を出しているわ。

「こんにちはラグーナ侯爵令嬢」

「・・・こんにちは」

「僕はソルトレグス帝国からの留学生でハリスン・バロアーと申します」

「・・・ユティフローラ・ラグーナと申します」

「よろしくね!ユティフローラちゃん!僕のことはハリスンって呼んでね」

整った顔で何故か蕩けるような笑顔で自己紹介してくるハリスン・・・蕩けるところはいらないから!

「よろしくお願いします。・・・

あら?令嬢の眉がピクリと動いたわ。

「こちらの令嬢はビアンカ・オルトです。僕が留学してからお世話になっている令嬢です」

「・・・ユティフローラ・ラグーナと申します」

「・・・・・・ビアンカ・・・オルトです」

を強調して言う。
だって、彼女は私にラグーナ侯爵家を追い出されたと噂を流した人だから・・・これだけで噂に疑問を持つ人もいるだろう。

うわー!睨んでいるわ!
なんか思っていたイメージと違う。
もっとキツイ感じかと思っていたけれど、オルト嬢は華奢で小さくて可愛い顔をしている。
守ってあげたくなりそうな見た目の令嬢だった。

前に1度だけ会ったことがあったけれど、はっきりいって顔は忘れていた。
いつも暗闇の中でロウソクの灯りしかなかったとはいえ、鬼のような顔で私を殴る蹴るをしていたあの人とは違う。って分かってはいるんだけれど・・・

「ユティフローラちゃんを初めて見た時からずっと気になっていたんだ。まずは友達になって欲しいな」

ハリスンの言葉に周りで会話を聞いていた令嬢達から悲鳴があがる。

注目されているのにオルト嬢ってば、そんなに睨むと可愛い顔が台無しよ。

「ええ、ソルトレグス帝国は亡くなった母のですから、色々と教えていただけると嬉しいですわ」

これで私がゼガードの従兄妹でお母様がソルトレグス帝国出身だと周りの方にも理解してもらえたわよね。

「じゃあ今度お茶でもしない?もちろんユティフローラちゃんのお友達も一緒にね」

「まあ!ハリスンに誘って頂けるなんて!ねえ?リア」

「わたくしはエミリア・マキュリーと申しますわ。エドとゼガードもご一緒しても?」

2人が頷くの見て「じゃあ近いうちに誘うね」そう言ってハリスンが背を向けて歩き出すと、急いでオルト嬢も追いかけて行った。
私を睨むのを忘れずに・・・




次の日から私たちと同じテーブルでハリスンが一緒に食べるようになったけれど、オルト嬢までがつい来ることはなかった。
いや、最初は着いてきていた。

『僕はユティフローラちゃん達と食べるからオルト嬢も友達と一緒に食べたらいいよ』

ハリスンに当たり前のように着いてきていたオルト嬢を笑顔で突き放した。
そして・・・私はまたオルト嬢に睨まれた。

それに、最近はオルト嬢から離れていく令嬢がいるとか・・・

元々、女子生徒はオルト嬢の"追い出された"とか"偽物"だと言う言葉を信じていた方達で、オルト嬢に同情していたそうだ。
だけど、ここにきてゼガードやハリスンの言葉、それに『』と言った私の言葉に疑問を持った令嬢たちが離れていったとか・・・これはハリスン情報。

今は子息だけが残っているようで、ランチも男子生徒達に囲まれて食べているようだ。

『オルト嬢の見た目に騙されて馬鹿な子息たちだよね。ユティフローラちゃんの方が可愛いのにさ』

ハリスンの言葉にリア、エド、ゼガードも頷いているけれど、お母様に瓜二つの私だから自分でも負けてる気はしない。
だからといって、魅力はオルト嬢の方が上なんだろうな。
だって私に声をかけてきたのはハリスンだけだもの・・・


そんな日が続いたある日の食堂でハリスンが「今度の休みにユティフローラちゃんとお茶したいな」と周りに聞こえるように言った。

「では我が家にご招待しますわ」

もちろんリアとエドも誘う。



「あ、あの・・・わたくしも・・・」

「なぜ?一度挨拶しただけの貴女はわたくし達のお友達ではありませんわよ?」

「顔見知り程度の人と休日まで一緒に過ごすことを私たちはしない」

リアとエドが横から声をかけてきたオルト嬢に断りの言葉を言ったのだけど・・・



あざとい・・・
座っているハリスンの上着をちょこっと摘んで涙目で訴えている。

「ごめんね。このお茶会で僕はユティフローラちゃんのを紹介してもらうつもりだし、招待された僕に君まで連れて行く権利はないよ」

ってところで、上級生の令嬢方からの悲鳴があちこちから聞こえた。
それにオルト嬢の目つきも変わって、今度は私に媚びるような目を向けてきた。

「よく知らない方を我が家に招待するのはから許可をもらってからでないと、お呼びできませんの。申し訳ございません」

「・・・わ、わかりました。でも、でも・・・わたくしは・・・」

それだけ言って、彼女はそれはそれは悲しそうにまるで虐められた被害者のような顔で走って去って行った。

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