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私がドロドロの姿で帰宅予定時間よりも早く帰ってきた事で邸中か大騒ぎになった。

まあ、誰よりも驚き怒りを顕にしたのはお兄様で、ルーカスが止めなければ学園に乗り込む勢いだった。

それでも怒りの収まらないお兄様がブリジック侯爵家に抗議文を送ろうとしたのを止めるのもひと苦労した。

元々優しくて私には甘いお兄様だったけれど、私が助け出されてから輪をかけて過保護になってしまった。
死んだと思っていた妹が、痩せ細って傷だらけで見つかったんだから仕方がないと思うし、その気持ちが有り難くも思う。

『二度とユティを傷つけさせない。僕が守ってあげるからね』

今では口癖のようになっている。
あの日ジル兄様に助け出され、やせ細って傷だらけの今にも死にそうな私の姿が忘れらないそうだ。

そんなお兄様には心配をかけたくなかったのにな。

学園に入ってからリアとエドと仲良くなって、楽しい学園生活を過ごしていたところに黒板の落書きだとか、私が庶子だとかいい加減な噂が流れ、その原因があの人の娘だったこともあり、お兄様が私よりも心を痛めている事には気付いていたの。

そこに、ドロドロに汚れて帰宅した私を見たものだから・・・虐められていると思ったのでしょうね。

でも、それも落ち着くと思うんだよね。
お兄様はジル兄様が何人学園に潜り込ませているのか知っているのかしら?
それとも、ジル兄様はお兄様にも伝えてないのかしら?
・・・それはないわね。
2人は昔から仲が良かったもの。
きっと聞いても教えてくれないわよね?

はぁ、ブリジック嬢か~面倒臭いなぁ。
今までもエドに関わった令嬢を執拗に虐めていたと聞いていたけれど、こんな事を続けていれば彼女の評判も悪くなるだろうし、エドにどんどん嫌われてしまうだろうに・・・

明日からもこんな事が続くのかなぁ?

疲れたな・・・。
侍女達に頭から被った汚れを入浴して落としてもらい、簡素なワンピースに着替えさせてもらったら睡魔が襲ってきた。




ノックの音と「ユティフローラお嬢様、ご友人の方がお見えになっております」と呼ぶベスの声で目が覚めた。

ああ鞄を持ってきてくれたのね。

「は~い」

寝起きで私の気の抜けた返事に心配そうな顔で入室してきたベスは今度はクスッと笑ってから、整えますねと、髪をといて服装の乱れを直してくれた。

「ベス、心配しなくても大丈夫よ。明日からは何も起こらないわ」

そう、何か起こればもうジル兄様は黙っていないと思う。
これぐらいの事でジル兄様の手を煩わせたくなかったのにな~

支度を整えてリアとエドの待つ応接室に急いだ。

別に急がなくても良かったみたい・・・
だって、兄様がリアとエドの相手をしていてくれたもの。

「お待たせ致しました」

「ユティ、今ねレグルス様に今日の出来事を詳しく説明していたところよ」

「ありがとう。リア」

「もう大丈夫か?」

「ええ、エドもありがとう」

「そうだ君たちにも紹介しておこう。入っておいでゼガード」

「失礼します」

やっぱり・・・彼がそうだったのね。
食堂から出る時に目が合った人だ。

「ジルグレート皇太子殿下からユティフローラ様をお守りするよう遣わされたゼガード・ミロワと申します。ゼガードとお呼び下さい」

体格の良い彼は鋭い目付きのいかにもな護衛の雰囲気を出している。

「では、ゼガードも私のことはユティと呼んでね。これから傍で守ってくれるならその方が不自然ではないでしょう?」

「い、いえ、それは・・・」

あら?焦らなくてもいいのよ。

「学園内だけでもいいからお願い!」

「ゼガード、そうしてあげて」

「は、はい。それでは学園内限定でユティと呼ばしていただきます」

お兄様にまで言われたら頷くしかないよね。

「じゃあ、わたくしの事もリアでお願いね」

「俺はエドだ。よろしくなゼガード」

「はい、リア、エド宜しくお願い致します」

「違うよゼガード。敬語もなしだよ」

「うっ、わ、分かった」

「それでゼガードは何処に住んでいるの?」

リア!ナイスな質問だわ。

「ああ、それは我が家だよ。ゼガードには登下校も護衛してもらうからね」

ゼガードの代わりにお兄様が答えてくれた。

「一応、ユティとゼガードは従兄妹の設定だよ」

「他にも誰かいるの?」

「そ、それは何れ分かるかと思います・・・思う」

やっぱり他にもいるんだ。
誰だろう?
どうせなら知っている人がいいな~
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